第144話

 ガチャの前に倒れられているとじゃなので、ゴーレムで足をつかみ引きずって移動させる。


「せっかくだから、不能になるかもしれない薬作ってみようかしら」

「何が不能になるんだ?」

「成功すれば、女を襲えなくなるわ」

「そんな薬あんのかよ」

「ダンジョンレシピじゃないから、どの程度の効果かわからないけれど、実験するにはいい相手よね」


 王子とお茶会して手に入れた錬金術師の手記を解読した結果、判明したレシピなので材料があっても成功するかどうかわからない。


「薬が完成するまで、あっちが麻痺したままなら飲ませてみればいいか」


 メイのガチャが終わるのわ待つ間に六回ほど試作したが、効果としては襲わなくなるではなく、お相手がいなければ襲いそうな薬になったので見なかった事にした。

 

 ガチャが終われば、ダンジョンの散策に行く。目的は湖で、コータが

水中ゴーレムを護衛に湖に飛び込んでくれる。


 水中ゴーレムは魚ぽいのと、イカやタコに似たクラーケンみたいなのと、人魚タイプがある。

 先ほどのガチャでもう一種類増えだが、そちらはまた作っていない。持ち運びは魔石を大きくした様なコアの状態で、水の中に入れると水で人型の形になるゴーレムだ。

 地上での活用には向かないが、水中ではよく動いている。


 階層を変えて、何度も実験を行う。

 そのがんばりに感謝して、コータにはビーチパラソルとビーチチェアの贈呈を決めた。

 そして、一◯層以下の湖の中にモンスターはいないが、宝箱はある。銀メダルか金貨メダルが得られると判明した。エイコは水中ゴーレムの量産を決める。


 一一層以降の湖には蛇ぽいのと魚ぽいモンスターがいるが、コータからすると弱いそうだ。階層を進むほどモンスターの動きが早くなるが、一九層でも脅威というほどではないらしい。

 エイコとしては水中ゴーレムで倒せてメダルが回収できれば、それでいい。


 競合する相手のいない湖の中の方がメダルを入手しやすかった。モンスターほど宝箱はポップしないので、一一層以降を中心に活動する。


「助かったわ。ありがとう。うなぎ完成したら配達よろしく」

「カレン用のは中は見ないで渡してね。たぶんそのうち見せてくれるはずだから」


 コータが趣味性癖教えてくれたらそれに合わせて作るとメイがにやにや笑えば、顔を真っ赤にしてコータは帰っていった。


「カレンと仲良くやってそうね」

「媚薬もお土産にした方がよかったかな?」

「それよりは防音のテントとか個室じゃない? 二階は男性禁止を守っているなら、コータの部屋じゃ落ち着かないだろうし」

「離れがいるかな?」


 カレンは結婚する気まんまんだったけど、結婚後どこで暮らす予定なのだろうか。

 将来的に新居にもできるように、

飛空船かキャンピングカーでも作っておこう。内装は本人たちに確認して決めたいので、入れ物だけ作っておくことにした。


 移動できる様にしておけば、デート先で使ってくれるかもしれない。リネン類はメイに頼もう。


 メダル集めに目処がつき、数日内にはレシピは完成させられそうだ。多少レシピの出が悪くなっても十日はかからない。そんなざっくりした予定で移動の準備も行うことにした。


「嬢ちゃん、あんたら足作れるか?」

「アシ?」


 夕食の準備をしていら、白髪混じりの深いシワが刻まれた男に話しかけられた。

 アシにピンときていなかったら、パンツの裾を片側だけで上げてくれる。


「それっぽい形のなら作れると思うけど、使い物になるかな?」


 自動人形が作れるのだから、義肢はたぶん作れるはず。ただ、形になるのと使えるのは別だろう。


「銀メダル一枚で試しに作ってくれ。使い物になるなら追加でもってくる」

「左足は生身?」

「ああ」

「じゃ、そっちを計測させてもらって作ればいいか」


 丸太のイスに座って、裸足になってもらう。清潔と浄化の魔術を使ってからメジャーで測る。

 どこを測っていいかわからないから、計測しながら図面を描く。無駄に何ヶ所か測ったが、計り足りなくて形にならないよりはいいか。


 次は反対側の足を測る。義賊というか、足に無理やりくっつけた杖みたいなのをのけてもらい、清潔と浄化の魔術をかけて測った。

 傷口が思ったよりグロい。


「複雑な形状してますね」

「喰われたのを焼いて止血して、落ち着いてからポーションかけながら炭化した部分をはいだからな」

「はぁ?」

「まあ、生きてるだけマシさ」


 見捨てられてもおかしくないところをパーティメンバーは人里まで連れ帰ってくれたと、男は笑う。そんなパーティメンバーも、生きている者はもういない。

 生き残っているのは、上を目指すことができなくなった男だけだそうだ。


「四肢欠損に効くポーション買おうとか思わないんですか?」

「そんな金があったら、酒飲んで暮らすさ、酒飲んでいれば人生も終わるだろうしな」

「へー」

「もう、若くはないんでね。ときどきダンジョンに来て酒代が稼げれば十分さ」


 欠損している側の足も形を作り、接合部分をどうすればいいか考える。


「明日には試作品できてると思うから、また声かけて」


 とりあえず思いつくのを試して見るしかないか。あと、ダンジョンを出てラダバナ組にも意見を聞いてみよう。

 エイコの思い浮かぶ義足はパラリンピックの中継で見たことのあるものと自動人形の足の部分からの転用くらいだ。義肢レシピもあるにはあるが、持っているレシピと必要としている人の状態が一致しないので改造しないことには使えない。


 気楽に請け負ってしまったが、なかなか面倒な作業になりそうだった。でも、使うといたたまれない気分になりそうな薬とか作るよりはいいし、作れる様になればその内役に立つこともあるだろう。




 朝の散歩がてらダンジョン内の湖めぐりして、ダンジョン入り口にある広場に戻りメダルと防具を交換する。白髪片足の冒険者も見つけたので、試作品を三つ見せた。

 今つけているを見本にした一本の棒みたいなのと、自動人形の足の部分改造と、義足レシピから改造したもの。


「早いな。三つもつくったのか」


 男は接続部にスライムジェルを入れてから装着する。


「スライムジェルなら緩衝材になるのか。わたし、あんめり持っていないから試さないのよね」

「嬢ちゃん、ここのダンジョンで泥の次に出やすいのがスライムジェルだぞ」

「わたし、レシピ以外なら葉っぱが一番多いよ」


 葉っぱといっても大きな蓮の葉みたいなので、撥水性が高く軽量で完成した一人乗りのカヌーみたい船の素材にもなる。メイの方も同じ葉っぱも出るが、布と糸の方が多い。


「欲しいのか?」

「とっても」


 素材として気になるし、クッション作りたい。硬さを調整したらベッドとか枕もいいな。


「嬢ちゃん、ずっと見ていたがパン作れるだろ?」

「うん」


 材料入れれば普通のパンは作れる。惣菜パンを狙うと事故を起こすというか、それじゃない的なのができるけど、食パンやバケットなら失敗はない。

 使用感を知るために歩くついでに、今ガチャしている連中と交渉してきてくれるそうでバケットをつくりながら待つことにした。


「スライムジェル一◯個持ってきたらパン一つやってくれ」


 とりあえず一ダース用意していたが、すぐになくなるほど持ってこられたので追加で用意する。

 ビンだったり、皮袋だったり、撥水布だったりとスライムジェルが入っている容器は様々だ。鑑定しながら受け取ったが、入れ物とスライムジェルの品質には統一性がない。

 とりあえず品質別に収納していく。


 夜活動していた人たちでガチャが混み合うのがおさまってから、エイコとメイはガチャしに向かう。予想通りというべきか、メイの方が先にレシピを集め終わった。



 

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