第12話
すっきりとした目覚めが訪れる。目を開けると地面があって、状況がわからない。身体を起こし、メイやリラの姿をとらえてダンジョンへ来ていたことを思い出す。
下になっていた右頬に手をやれば、ザラザラとした手触りがあり、たぶん髪も汚れている。水魔術の清潔と火魔術の清潔を全身に重ねがけして、汚れと一緒に不快感を取り除いた。
「起きた? 立てる?」
ゆっくりと立ち上がる。貧血ぽい魔力切れの症状はなくなっている。
「メイも立てる?」
「大丈夫です」
「じゃ、移動しよか」
うながされ、六層へに続く階段の前に移動する。どうやら今回も向こうの方が到着が早かったようだ。
「やっぱり
「まあ、五層くらいだと早いもの勝ちだから」
「エリアボスって、層に関係なく倒すと銀メダル以上確定なのよ」
銀メダルと銅メダルでばガチャで出るものが違うそうだ。たまに一緒の人がいるが、それは銀メダルで銅メダルでも入手しやすい物を出しちゃった運の悪い人か、銅メダルで銀メダル並の物を出しちゃった運のいい人限定の例外になる。
「じゃ、行こうか」
階段を降りていると踊り場があった。これが五層攻略済みで使える様になる移動魔法陣で、使わないで階段を降りて行けば六層に着く。
全員で魔法陣にのると光に包まれ、場所が変わった。
「人いっぱい」
「人気のダンジョンはこれがあるのよね。戦闘職はそっちの端の列にさっさと並ぶ。遅くなると帰れなくなるよ」
戦闘職も生産職も専用のダンジョンであれば、ガチャボックスは一つしかない。混合ダンジョンだけが、三つのガチャボックスがある。
一番人気で行列になっているのが戦闘職限定ガチャボックス。名前そのままに職業が戦闘職でなければ使えない、職業関連のアイテムが出やすいガチャボックスだ。
列ができるどころが人がいないのが生産職限定ガチャボックス。生産職のみで混合ダンジョン星四つに行けるのはかなりの猛者。
ダンジョン上層で屯しているような冒険者に生産職を守る技能はないため、使える人はほぼいない。
真ん中の混合ガチャボックスはなんでもでる。職業補正はあまりない。
冒険者ギルドで依頼を受けてきた人は回すが、必要な物が出たら武器や防具狙いで戦闘職限定ガチャを回したいのが一般的冒険者。
二人でじゃんけんして、負けたのでメイからガチャを回す。出たアイテムの荷物持ちに、リラとミランが見守っている。
お互い持っているメダルは五〇枚もないため、すぐに回し終わる。メイは四枚のレシピとぐるぐる巻かれた布の塊が一〇反。糸が二種類に薬草セット。それから野菜や果物が出てきていた。その結果を見てミランがリラにささやく。
「ミルタたちのメダル回収してきてくれ。二人に任せた方が薬の素材は出やすい」
リラが離れたが、ミランがいれば絡まれても対処してくれるらしい。冒険者が多くてビビっていたのはバレていた様だ。
メイと交代して、ガチャる。
三枚連続でレシピがきてテンションが上がった。手にとってその場で覚えてしまう。作れると物が増えるのは嬉しい。
そのためにも素材こいと、欲望にまみれてガチャを回した。
魔石六個に薬草の束ばかり。金属とか鉱石もよこせとうなだれる。ガチャには物欲センサーがあるのだろか。
あきらめ気分になると食材が続いた。
最後のガチャった薬草の束だけなんか違う。鑑定したかったけど、素早い動きでミランが回収してしまった。
「後で話そう。こちらが話を振るまで絶対に話題にだすなよ」
押し殺した声で告げられ、コクコクと頷いておく。
リラが戻ってきて、フレイムブレイドの集めたメダルを二人で半分づつ回す様に言われた。
「二人とも職業補正は強いね。ここのダンジョン、基本、食料品が出ることで有名なのよ」
護衛をしてくれていたフレイムブレイドのメンバーの持つメダルは多くなくて、すぐに回し終わった。
その頃にはダンジョン探索をやめて戻ってきた冒険者が、更に増えていた。
長い列に並んでいたトミオたちはやっとガチャボックスの前に着いたばかりで、もうしばらくここで待たなくてはいけない。
「混合ガチャに並ぶ人増えた」
「ガチャを選んでいたら遅くなるでしょ。あんまり遅いと町の閉門に間に合わなくなるから」
日が暮れてきて、人が途切れたら門は翌朝まで閉められる。そうすると門の外で野宿になってしまう。
「町のすぐ外って、住み着いている人がいたでしょ。町のそばで野宿なんてしたら狙われるから、間に合わないと思ったらダンジョンのそばで野営した方がマシね」
ガチャボックスの前はモンスターがポップしないので、状況によってはダンジョンの中の方が安全らしい。
エイコは知らないまま、ちょうど良い場所で寝泊まりしていたようだ。
トミオたちがガチャを回し終え合流した頃、歓声が上がった。声の方を見れば、ガチャボックスより大きな木の板が出てきている。
どうやって出たのかかなり謎だ。
「いいな、木材」
「使えるか?」
「机とか椅子なんかの簡単なのなら」
製図作成がやれるぽい反応がある。ラミンがわかったと、交渉に向かってくれた。
どうも木の板を出した男は木材に関係のある職業のようで、その後も木の板や丸太、角材も出していた。
その人がガチャを回し終わるのを待ってラミンが戻ってくる。
「ラミンさん、いくら?」
「全部で一万エル」
ポーション一本の買取価格並み。
「安くない?」
「収納アイテムを持ってないと持って帰れないから」
この辺りにいる冒険者はだいたい持っていない。フレイムブレイドのメンバーは一人一つ以上は持っている。Cランクのパーティーなら一つは持っているような物だが、買うと高い。
冒険者も複数手に入れないと売らないことが多く、流通量も少ないそうだ。
帰ろうとしたところで五つ目の転移魔法陣が光った。
「誰かダンジョンボス倒して戻ってきたのよ」
「おっ、フレイムブレイドか?」
「アンガーファングか」
どうやら知り合いのパーティーらしく話だす。
筋肉の固まり集団のアンガーファングに比べてたら、フレイムブレイドは細マッチョだ。トミオたちに比べたらムキムキだったが、対象物が変われば評価も変わる。
「筋肉量に比例して肌色割合って増えるの?」
「それ、思っていても黙って」
メイに小声で叱られて口を閉じる。
パーティーリーダー同士の話にラミンが加わると、お金とメダルのやりとりがあった。
「銅メダル、一枚一〇〇エルで買ったから、ガチャ回して」
ずっしりと重そうなパンパンに膨らんだ小袋をラミンが持って戻ってくる。
「時間がないから、ドンドン回せ」
メイがメダルを入れ、エイコがガチャっとやる。出てきた物はフレイムブレイドのメンバーが回収し、何かなんて見ないでどんどんやる。
疲れたらガチャとメダル入れを交代して回し続けた。
やっと終わったと思ったら追加がくる。
ボソボソと小声でラミンが理由を説明してくれる。アンガーファングからは一袋三万エルで買ったらしい。中身は四〇〇枚は超えているので、一枚一〇〇エルもしていなかった。
それをわざわざ声を大きくして告げたのは、行列に嫌気が差している人を狙ってのことのようだ。
それに応じた人たちのメダルが第二弾として、小袋がパンパンにならほどにある。
「フレイムブレイドはお金持ち?」
「ランク相応だ」
カンガーファングは混合ガチャの最後尾に並び、並んでいるパーティー事に順番を買って一番前まで行った。
ボス周回で手にした金メダルと銀メダルだけ自分たちで回してダンジョンを出て行く。
第三弾までつきあっていたら閉門に間に合わなくなるので、総計七〇〇枚超えでガチャを終える。回し終わったあとも買ってくれと言ってきたパーティーもいたが、お断りして急足でダンジョンを出た。
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