第2話

 持ち物の確認が終わったので、次に確認したいのがスキルだ。さて、どうやって確認をすればよいのか悩む。

 ここは異世界転移のテンプレを信じたいところだ。


「ステータス」


 なんか透明なパネルが出てくる。何にも出てこなかったら、確認の仕方がわからないままになるところだった。


 名前 エイコ オトナシ

 年齢 15  (享年17)

 性別 女

 種属 受肉体 偽装種属 ヒューマン

 職業 魔導技師

  職能

   魔導具作成 魔導具修理 錬金術

   魔導具改造 製図作成 魔法陣

   鑑定 付与魔術 解読魔術 

 称号

  大母の女神の慈悲

   異世界言語 受肉 生活魔術

  魔導具神の戯れ

   技術者の指 目利き 火魔術

  邪神の好意

   隠者 魅了耐性 闇魔術


 技能

  魔力感知 魔力操作 肉体操作 算術

  器用 水魔術 杖


 どうやらレベル表示はないらしい。スキルの説明もない様だ。なんとなくあると知れば火魔術も闇魔術も使えそうな感じはある。

 あっさりとポーションができたから、道具や材料がそろえば魔導具も作る事ができるだろう。


 確認するべきことはしたので、ガチャの続きに戻る事にした。


 それにしても、戦う能力は低そう。この世界の治安がよければいいが、女の一人歩きは大丈夫なんだろうか。

 スカートじゃないし、先ほど出た帽子で髪の毛を隠しておこう。


 髪の色が亜麻色だから、受肉した身体は元の身体と別物のはず。手鏡が出たので、顔を見ると元の姿の面影のある美容整形後って感じになっていた。

 そばかすがなくなって、ちょっと目が大きくなっているのが嬉しい。瞳の色は小麦色で、身体に違和感を持たないですむようにできている。


 食器とか調理器具とか日用品もでてきているが、売れそうな物が何かわからない。鉱物や金属、魔石に魔物素材といろいろ出てくるが、素材は売らないで取っておかないとスキルが使えない。

 魔物素材はダンジョンモンスターと関連がさなそう。骨とか羽はなさそうなモンスターだったのに、ガチャでは出る。

 魔導具レシピも出てきているし、売るなら加工後の物にしたかった。食べ物も出てくるみたいだし、外に出て加工する場所があるかどうかもわからない。


 この場に留まり、ガチャが終われば物作りしてから、最初とは逆の道に行こう。




 なかなかガチャが終わらないから食事休憩して、またガチャる。疲れたら生活魔法の清潔を風呂代わりに使い、ガチャで出た寝袋ぽい物を使って寝た。

 目覚めたらご飯を食べて、レシピと素材が一致している物を作る。作る物がなくなったらまたガチャした。


 もう一〇連ガチャとかにならないだろうか。一枚ずつしか回せないのがつらい。

 鑑定しているとはいえ、この世界で何に価値があるかわからないから、当たりハズレによる感情の揺らぎもない。


 大量に手に入る銅メダルでそうそういい物も出ないだろう。

 エイコは三回の食事と二回の睡眠をとり物作りに勤しんで、この場を去ると決めた。

 そうして、最初とは逆の道へ進み、数メート歪曲した道の先に青空を見つける。


 最初の選択に間違わなければ、ダンジョンで彷徨うこともなかったと知った。

 もう木の杖に、道標は期待しない。


 何日ぶりかはわからないが、青空と太陽はいい物だ。今なら光合成できるかも知れない。

 洞窟から解放され、エイコは喜ぶ。


 ダンジョンを出てすぐの看板に視線を向ければ、異世界の文字が読めた。


 生産職専用ダンジョン カムカムボール

  初心者用 難易度 ⭐︎


 とりあえず、受肉先で即殺そうとするほどの殺意は神々にはなかったぽい。


「うわっ、幼児ガキでもないのに初心者用から出てきた」

「ダサっ」


 少しばかりイラっと来たが、見た目はともかくこちっは異世界0歳児だ。子どもが知っていることも、知らない状態である。

 他人の評価はスルーしよう。


 できれば冒険者ギルドの場所を聞きたかったが、悪口をいう相手にわざわざ問う必要もない。あたりを見渡し、遠くに人工物の壁が見える方へ伸びている道を進む。


 そこそこ道行く人がおり、一人歩きの者も少ないがいる。周囲に合わせた歩調でエイコも歩いていく。

 外壁の近くまでいくと、関所らしき門があり、いくつかの列ができていた。

 門とは別に短い列ができているところや、行列相手に物売りしている人もいる。


 あたりを観察しつつ、エイコは周囲にある鑑定できる物を全部鑑定していく。

 なんとなく門でトラブルのは良くない気がする。武装した兵士が何人もいるし、門を利用する人はみんな自分がどこを使えばいいかわかっていそう。


 門のちかくの小屋。テーマパークのチケット販売所みたいな建物を鑑定すると冒険者ギルド出張所とあった。

 よくよく見てみれば、列に並んでいる方が物を出しお金をもらっている。どうやら買取してくれている様だ。


 自分が作った物が売れるかどうかの確認もしたいし、門のそばの看板に入管料とある。

 金額までは人が邪魔になって見えないが、現金ナシでは入れなさそう。さっそく冒険者ギルド出張所の列に並ぶ。


 エイコまで後三人になったところで、窓口のそばに立てかけられた木の板の文字が読めるようになった。


 ラダバナ入管料    五〇〇〇エル

 冒険者ギルド登録料 一五〇〇〇エル


 どうやら最低二万エルはないと、入るのやめてダンジョンへ金策しに戻るしかないようだ。

 この辺りに出ている屋台の食べ物が五〇〇エルからニ〇〇〇エルくらいなので、そのくらいで食事が一回できるはず。


 まったく推測できないのが宿泊料。買取価格が五万を、超えたら中に入って、それ以下なら金策にダンジョンへ戻る。

 そんな基本方針を固めていると、順番が来た。

 マントの下に背負っていた鞄から自作のポーションを出す。薬草も瓶も結構素材が出たから全部作ってしまったのでかなりの数がある。けれど、今は様子見に一〇本だけにしておく。


「ここじゃ、一本六〇〇〇だ。ここで四本売ったら、後は冒険者ギルドに登録してから売りな」


 四本だけ回収して、残りは戻される。一万エル札一枚と五〇〇〇エル札二枚と一〇〇〇エル札四枚となんか紙を一枚くれた。


「その紙を持っていけば冒険者の列に並べる。ここでの取引も冒険者ギルドの実績になるから、冒険者ギルドの受付に渡せ」

「ありがとうございます」


 サイフがないのでお金もポーションも全部腕輪に収納しておく。たぶん、ポケットに入れるとスリに遭う。

 なんか、壁際にいた人たちに獲物というかカモ認定受けたぽい視線をもらっている。


 長居は無用だ。駆け足で列に並びに行く。ちょつと不審そうな視線を集めたが、一人でいて囲まれたら怖い。

 冒険者用の列は1番端っこで、人数は多いが進みは早かった。最後尾に並び息を整える。


 深呼吸していると左腕を掴まれた。


「イヤ、離して」


 叫んだつもりなのに、か細い声になってしまう。相手が知らない男で、自分より大きいというだけで身体震える。


「何、やってんの!」

「嫌がってるだろ、離せよ」


 前に並んでいた六人組の冒険者の一人が、エイコ腕を掴んでいた男の腕をつかみ、手を離させる。女の人がこっちと抱き寄せてくれた。


 絡んできた男は舌打ちしていなくなる。


「めっちゃ震えているけど大丈夫? 怖かったね」

「あ〜、女の子か」

「買取所から走って来たってことは、新人か?」

「高額取り引き見られて絡まれたか?」

「に、2万ちょっとて高額なの?」


 そうすると、冒険者ギルド登録料はとても高い事になる。


「あれ、意外と少額だった」

「よければ、何を売ったか教えてもらえる?」

「ポーション四本。残りは中で登録して売れって戻された」

「それはポーション狙いだね。中の方が高く買ってくれるし、町の中に入らない連中はポーション買えないヤツがほとんどだから」

「しかしよく何本もポーション出したな」

「ポーションは出てない。素材と道具が出たから作った」


 答えたら、なんか大きなため息つかれた。


「君、田舎から出てきたばっかりだろう? 発言に気をつけないと人攫いに遭うぞ」


 ポーションが作れると知られると、誘拐から監禁してポーション作りさせられると脅される。なんでもポーションは冒険者の必需品で、需要に供給が追いついてないらしかった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る