第64話

 奴隷は罰則だから、解放するのが良い事とされないこともある。なので、援助金をもらえた理由をしっかりと明記しなくてはいけないそうだ。


 エイコの取り分は奴隷の購入価格。購入時の手数料は含まなないので、その分商品として考えれば赤字だ。

 カレンについては衣食住全てエイコ負担だったため、費用についてはもう考えるのを放棄している。数字として認識してしまうと、イラッとくるというか、赤字額がデカすぎて認識したくなかった。


 考えない方が心の平安を得られる。


 家の購入費より、壁とか水路とか、離れなんかの改造費用の方が高くついている。そのまま住めないからこそ、安い家だった。

 お風呂にはいつでも入れるし、ご飯は誰かが作ってくれる。エイコに錬金術で作れる物以外、作れという人もいない。

 そんな今の環境は悪くないが、それは結果論でしかなかった。


「あとはぁ、エイコの保証人の許可が有ればぁ、首輪は外せるぞぉ」


 リクシンが手続きするそうで、許可を得たら首輪を外しにくるそうだ。エイコも書類にサインして、今できる対応が終わると納品依頼の話がくる。


「冷凍車と冷蔵車は大きさどうしましょう?」


 オークションに出したのと同じでいいそうで、各七台要望を出された。素材はあるので、帰るころに庭で作って持って帰ってもらう。


「リクシンさん、素材は追加で、なるべく質の悪い魔石と錬金術の素材になる魔物の骨お願いします。こっちも質は悪いのでもいいです。いい物も欲しいですが」

「ダンジョン産でなくてもぉ、いいのかぁ?」

「どっちでもいいです。質が悪いのは練習用にいっぱい使いますから」


 錬金術師グラムのレシピは、試行錯誤しないと作れない物が多々ある。失敗前提の物に高い素材は使いたくなかった。


「浮く、絨毯、需要あったんですか?」

「荷車の中で使うとぉ、移動時の振動を受けないそうだぁ」


 床面積を増やして、商品の破損を防げるらしい。絨毯は持ってきているから魔法陣を付与してほしいそうだ。

 一つにつきいくらという契約で、絨毯の質よって値段が変動する。リクシンが六〇枚絨毯を持ち込んでおり、ダジアが三二枚持ってきているそうだ。

 どっちも収納アイテム持ちなので、手ぶらに見えてもかなりの物を持ち歩いている。


 これは、カレンに使った分のお金を補填してくれているのかもしれない。最初にこれだけいい人に出会っているのに、奴隷落ちしたカレンが残念すぎた。


「エイコはそろそろぉ、上半期の税金を払った方がいいなぁ」

「税金をって冒険者ギルドで払っているじゃないの?」

「冒険者ギルドで金のやり取りが発生したらぁ、手数料と一緒に引かれているよぉ」


 小額の取引らなともかく、月当たり一〇万エルを超える取引があるなら、調べらる可能性が高い。エイコはオークションで一〇〇万エル超えのやりとりをしており、三ヶ月で余裕の一〇〇〇万エル超えだ。素材を購入したり、家を職場購入費用として計上しても利益が大きい。

 税金を払わないと、確実に調べられるそうだ。


 税金は一年分を年末、一六月に払えばいいが、年一括払いだと支払額が高額になるため、四ヶ月に一回払っている人が多いそうだ。


「払いに行く前に保証人には連絡入れておけよぉ。新人商人が稼ぐと嫌がらせもあるからなぁ」


 リクシンとダジアも顔が利くが、その分足を引っ張られる相手も多い。貴族にツテがあるなら、そっちを利用した方がいいそうだ。


「うーん。それ、お礼いりますよね?」

「冷蔵庫かなぁ」

「お礼の定番は換金しやすい宝飾品か人を呼んだときに自慢できるお酒や珍味ですね」


 よほど特殊な嫌悪感がなければ、定番品にはずれはない。相手の趣味嗜好がわかるなら、そちらに合わせることになる。

 職業技能を使うのも、被保護者からのお礼としてはいいそうだ。今までのエイコのお礼が、これにあたり、今後も自分で作った物はの方が費用を抑えられる。


「お酒にしようかな」


 錬金術レシピがいくつかあるし、試しに作ったまま死蔵している物もあった。元の世界ではお酒の飲める年齢ではなかったし、酒の味なんてわからないから、料理やお菓子作りにしか消費されてない。

 ときどき男どもは酒盛りしているようだから、聴き酒してもらえば、どれが贈り物にいいかわかるだろう。


 贈り物より先に収支計算しなくてはいけないが、全部は覚えていない。オークションの主催者と冒険者ギルドで明細書をもらい、リクシンとの取引記録で、どうにがなるならしいが、今後は帳簿をつける必要がある。


 利き酒のお酒でつれば、きっとトミオたちが帳簿の手伝いをしてくれるはず。

 手伝いはしてくれたが、この町の税については詳しくないので、クリフの助言てパトスに頼ることになった。


 パトスがいるなら、お礼の品はパトスに聞いた方がいいだろう。利き酒してもらったら、月に焼酎一本で会計をすると言い出す。

 芋でも米でも麦でも、焼酎であればなんでもいいそうなので、作れない事はないだろうと会計をお願いすることにした。


 保証人へよお礼はブランデーがいいそうだが、パトスの趣味ではないかとエイコは疑っている。けれど、どっちの趣味でも問題がなければ、それでよかった。


 税金は利益の二割くらいで、応接室に置けば美術品も経費なるらしい。オークション会場ではまったく価値を理解できなかったが、税金額を下げるには必要な物だと理解する。

 お金がいるときに即売れる美術品なら、なお良くて、人気の美術品を欲しがる気持ちが理解できた。


「今からオークションに参加するべき?」


 何か都合のいい物があるだろうか。紹介者がいるようなら、リクシンに頼めば大丈夫な気がする。


「錬金術で失敗した素材は費用として計上する。美術品は錬金術で作れ」


 応接室に飾れるような物を錬金術でつくれば、資材が備品になるそうだ。何かあったときに売れるかどうかはわからないが、即資材として使える物であればいいと勧められる。


 金属で造花を作ろう。混ぜ物なしでつくれば、錬金術的にはどんな形でも精製金属でしかない。造花を飾る壺も金属にしてしまえばいいか。

 魔石や貴石や宝石を金属の板にモザイク絵のよつに配置する。壁にかける絵と衝立とテーブルの台にしてみた。


 淡々とパトスは資材を備品として処理する。節税になった金額を聞いて、エイコはパトスに渡す焼酎を一本増やした。

 今後も節税に協力すると、約束してくれる。


 お金流れを整理してもらい、仕事用と個人で使う物を別にした。

 家にいる人はクリフ以外全員、住み込みで雇っていることにする。そうしないと、ユウジとショウが商業ギルド登録なしの違法販売者になるらしかった。


 メイとトミオも税金対策していなかったので、エイコに紐つけて全部パトスに面倒を見てもらう。

 

 その内独立してもいいが、独立すると家賃の計上が必要になるし、家賃を受け取ったエイコは支払う税金が増える。

 経営を別にして、エイコの買った土地で商売及び生産していると、家賃分贈与されていることになるそうだ。


 いつまでも今のままではいられないが、独立させるのは春まで待った方がいいらしい。冬場になれば移動が困難になり、今ほど売上は得られなくなる。


 畑が雪に埋れれば、農具の需要もない。


「冬場の農家って、何しているの?」

「家にもよるが、内職か、出稼ぎだ」


 夏場とは違うと何度も繰り返された。

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