常暮れ草原ダンジョン 難易度⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
第23話
朝早くから獣車にガタゴトとゆられ、ダンジョンへ向かう。獣車を引くのは大きな鳥で、空は飛べないそうだ。
すごく足が速いってこともなく、とっても力持ちでもないこの鳥は扱いやすく、借りるのも安さランキング上位にくる魔鳥らしい。
性格は温厚で、調教されているのはだいたい安全だが、野生で生息しているのは危険らしかった。
エイコとメイだけで遭遇したら、魔術で遠距離から攻撃できないなら逃げろと言われている。
昨日、奴隷商を後にしてからマナポーションを定期的に現金で購入するのはBランクのフレイムブレイドでも難しいと説明を受けた。
マナポーションは三〇万エル以上するらしく、品質を考えると五〇万エル以上はするらしい。一〇〇万エルの値をつけても買う人は買う。そういう品らしかった。
二泊三日でダンジョンに連れて行き、銅メダルを三〇〇枚を渡すことで、マナポーションを一本渡すことに同意する。たぶん交渉すれば、銅メダルの枚数を増やせるし、銀メダルも貰えるかもしれない。
けれど、フレイムブレイドに対して対価を求めすぎると関係が悪くなりそうで、やめた。
あちらがそのくらいなら払えると言うなら、それに同意しておく。たぶん、金儲けだけを考えるならオークションに出すべきだ。
ただ、ダンジョンガチャで出た物だと思ってくれたらいいが、作ったと知られると面倒事が発生するらしい。
情報の秘匿のためには、ある程度安く買われてもいいとした。
フレイムブレイドと二泊三日のダンジョンへ行くのは今のところ六回を予定している。週一で行く予定なので、来月までは一緒に活動する事になりそうだ。
エイコたちとダンジョンに行ったあと、一日休みを挟みフレイムブレイドだけで再びダンジョンへ行くらしい。そっちで金策するそうで、難易度の高い所へ向かうらしかった。
考えると疲れので、奴隷商との話はダンジョンにいる間は棚上げしておく。そして、そのまま忘れてしまいたい。
クラスメートが奴隷って、かなりハードなイジメだと思う。助けてあげたいなんて善性はあんまりないし、いじめを楽しめる性格もしていない。
チャラ男がんばれ。
きっと、ハーレムの一員になってくれる。だから、買い取ってくれ。確か、胸もデカかったはず。
日の出とお昼のちょうど真ん中くらいに、目的地であるダンジョンへ到着した。獣車はこれから町にもどり、二日後の昼に迎えにやってくる。
獣車から降りると身体を伸ばし、まずは腹ごしらえしだ。今食べるのは出発前に街で買ってきたもので、各々が好きなものを食べている。
みんなパンで何かを挟んだ物が串焼きで、パンの具以外の差はない。
食事兼休暇を終えるとダンジョンへ向かう。ダンジョンの入り口は荒野にある木の門で、門の前に看板が出ていた。
混合ダンジョン 常暮れ草原
中堅者用 難易度⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
ラダバナからさほ遠くもないダンジョンではあるが、このダンジョンは冒険者にあんまり人気がない。
ここのダンジョンガチャで排出されやすい物の中にミルクがある。種類は牛や山羊なんが複数の種類があり、高額取引される物もあった。
しかし、物がミルクのため、常温で町まで持ち帰ろうとすると腐ってしまう。
そのため、時間の進みを遅くする収納アイテムや保存容器、冷蔵庫のような冷やすアイテムが必要だった。
そういったアイテム持ちにとっては簡単すぎて面白味のないダンジョンであり、難易度が適正な冒険者はアイテムを持っていない事が多く、その結果として不人気ダンジョンとなっていた。
ミルク系の納品依頼は常設依頼ではないが、それに近い頻度で依頼が出ている。取り合うほど人気もないため、うまく持ち帰れたら依頼を受けるといいそうだ。
アイテムはいろいろあるので、たぶん大丈夫。ダメそうなら、ミルクよりは保存のしやすそうなチーズに錬金術で変えてしまう予定にしている。
木の門をくぐった先は半分くらい赤い空をしていた。太陽のない夕焼け空の下、風になびく草原が広がっていた。
この草原のどこかに下へ向かう階段があり、下へ下へと進んでいく事になる。
フレイムブレイドのメンバーに反応して魔法陣が光っていた。数が多い。
魔法陣は五層刻みであり、ダンジョンは六二層まであるそうで、一二個の魔法陣が輝いていた。
エイコとメイにつくリラとラミンを残して、フレイムブレイドのメンバーは魔法陣を使う。銀メダル狙いでフロアボス巡りをし、六〇層から金メダルを取りにダンジョンボスを倒しに行くそうだ。
先をいくメンバーを見送り、エイコたちは一層の探索に向かう。
獣型のモンスターが多く、鳥型のモンスターも出る。だだ、一層に空を飛ぶようなモンスターはいないそうだ。
危ないと感じないなら、とりあえず剣で対処する様に言われ、お好きにどうぞと進行方向も教えてくれない。
とりあえず、入ってきた場所を背にして進んでいればいいだろう。
ときどき草が編まれただけの罠があり、引っかかる。引っかかる度に笑われるが、メイもエイコの半分くらいは引っかかっていた。
さすが中堅者用。初心者に優しくない。
五層までは即死するような罠はないからと、それまでに警戒心を養えと笑いながら応援してくれる。
遭遇するモンスターはだいたい一体づつ出てくるので、腰くらいまである大きな兎みたいなのは剣で切った。牙をむいて威嚇してきた狼は火弾をぶつけて倒す。
銅メダルが落ちるのは、四体に一つくらいだった。
何度目かわからないくらい草に引っかかり、転んだ先に階段があってリラが落ちないように捕まえてくれる。階段は落ちると危険なようだ。
「下に降りる前に問題です。ダンジョンの出入り口はどっち?」
エイコとメイは別々の場所を指差した。
「おっ、エイコは正解」
空間はだいたい把握できる。罠はダメだが、あとちょっとでどうにかなりそうな気もしていた。
エイコが階段を見つけたからエイコが先頭と指名され、二層へ向かう。
見た目的には二層も一層も差はなかった。
「層と層の間にある階段はモンスターが出ない。そういう意味では休憩するにはいい場所だけど、冒険者の多いダンジョンでやったら顰蹙を買うからね」
「短気な冒険者なら、いきなり階段から蹴り落とすぞ」
「階段封鎖して、通行料払えってカツアゲする冒険者もいるから、蹴り落とすのも悪い対処じゃないのよね」
冒険者ギルドでは明文化されていない冒険者ルールを、教えてもらいながら先へ進む。ただし、冒険者ルールは地域性に特化したローカルが多いので、どこでも通用するとは思ってはいけないそうだ。
「二層の課題として、剣で狼を倒そうか」
二層はまだ単体でしか出てこないので、がんばれと応援してくれる。倒し方は教えてくれないし、見本も見せてくれなかった。
剣の間合い入ると、狼に跳びつかれたら噛みつかれるし、牙でザクッとやられそうで怖い。メイも同様のようで、なかなか剣で斬りかかれなかった。
跳びかかる力をためるように体制を低くされたら、つい魔術で対処してしまう。
「二人とも、跳びかかるまえの体勢はわかっているのよね」
「まず、跳びかかられたのを避ける練習するか?」
「跳びかかったらもう進行方向変えれないから、横に動けばいいの。まずはそれだけやってみましょう」
「大丈夫、大ケガする前には助ける」
それは、少々のケガなら助けないってことですね。痛いのは嫌だ。
エイコもメイも踏ん切りがいつまでもつかないでいたら、ラミンに打った魔術を相殺され、リラに強制的に避ける動作を取らされた。
何度かそれを繰り返し、エイコもメイを避けられるようになる。避けられるようになると、跳びかかっている時は逃げられないので狼が斬れた。
対処できるようにしてくれたのは感謝するべきなのだろうけど、もっと優しくしてほしい。
三層へ続く階段を見つけ、階段前で昼休憩にした。
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