部屋を充実させよう 

第16話

 太陽の光を浴びて目を覚ます。すっきりとした目覚めではあるが、もっと寝ていたかった。

 窓にカーテンがどれほど必要か実感する。


 顔を洗いたいと思いつつ、清潔を使い、寝室を出た。布団は寝袋の閉じている部分を開けばいいが、敷布団はいる。

 身体がいろいろ痛いし、筋肉痛も発生しているようだ。


 借りている指輪型の収納アイテムから中身を全部出す。床に静かに出たのはいいが、広かったダイニングキッチンが足の踏み場もないほど埋め尽くされている。

 とりあえず、大きな木材は収納してしまおう。持ち上げようとして、無理だった。

 なんか、闇魔術でどうにかなるみたい。闇手とかいう術で闇がいくつもの手の形を作り持ち上げてくれる。

 それからすぐ使う予定のない武器類も全部収納してしまう。

 昨夜作った容量の大きい方の収納ブローチにどんどん詰め込んでいく。


 木材や武器がないだけでだいぶすっきりした。

 ざっと手拭いを探してみたが、布製品は全くない。どうも全部メイの方へいっているようだ。

 後で交渉に行くとして、食材も転がっているから先にご飯にしたい。そうすると、テーブルが欲しいと思い、紙とペンを拾って暖炉を机代わりする。


 四対六くらいの天板で、高さは天板の短い方と同じくらいにして、縮小比率二〇分の一くらいにしてみる。

 材料はその辺に転がっている金属で、多そうなのを使い、木材をのけてできた空間に錬金術の魔法陣を展開させた。

 材料はポイポイと闇手で入れていく。材料が足りたらしいところで、一際強い光を放ち、光が消えるとテーブルができていた。

 思ったより高さがあったが、今はこれでいい事にする。これに合うように背もたれのないイスを作った。

 使い心地は追々考えよう。


 食器は木材で作ったのがあるので、闇手にテーブルの上に置いてもらう。使う前に清潔をかけて、さて、何を食べようかと食材を見つめる。

 小麦粉の約三〇kg入りの袋が六つあるが、パンの焼き方やパスタ麺の作り方なんて知らない。お好み焼きとかたこ焼きとかならまだわかるが、卵はない。

 体験学習で、小学生の頃にやったうどんの麺はなんとなくならわかる。麺棒くらいなら木材加工は難しくないが、麺つゆなしでどうやってうどんを食べればいいのだろうか。


 食材から作る物を考えるなんてそんな高等技術はムリだ。考え方を逆にしよう。錬金術の料理レシピが何だったかを考える。


 保存容器を作り、素材の足りているレシピをとりあえず作ってみた。ケッチャップみたいなの、だだし黄色い。よくわからんソース二種に、乾物野菜。野菜の種類だけある。

 乾物キノコ。キノコの種類だけあるし、一部は食用じゃくて薬材。


 食事になるレシピがなくて、そのまま食べれる干し肉をかじり、ハーブティーぽくなる草でお茶を淹れる。

 ドライフルーツになった果物は食べられるが、腹にたまる物がない。


 食材もこれであらかた片付いたが、朝食としては残念すぎる。保存容器を作り、仕方なく装備品を身につけて買い出しに行くことにした。

 保存のきくパンくらいは常備しよう。




 まだ太陽はあんまり高い位置にない。けれどもう街は活動を始めており、カフェらしき店に入ってみた。

 パンとスープに何かの肉。さつまいも的な色をしたジャガイモのポテトサラダに似た何か。マヨネーズ味ではないが、塩気はある。

 別料金だったが、果物ジュースも注文した。


 パンは焼きたてで、くるみやカボチャの種に似た何かの入った物と塩パンで、どっちもそこそこ大きい。

 肉はソースがかかっており、さっき部屋で作ったソースとよく色が似ている。肉にかけて焼くといいのかもしれない。

 素材に果物があったし、甘辛いソースだった。


 朝食のお値段一三〇〇エル。ジュースがなければ八〇〇エル。何かわからないお茶なら追加料金はニ〇〇エル。どうも果物が高いようで、ジュースも高めな値段のようだ。


 朝食に満足し、ついでだからパン屋へも寄って行く。鑑定の結果を信じるなら、保存の容器に入れておけば1週間程度日持ちするらしい。

 保存容器の実験もかねて、持ってきた八個の容器が埋まるくらい惣菜を買う。パンはそのままでも持ちそうなのを、保温容器にいれてもらった。

 部屋に戻ったら保存容器に移し替えようと思う。


 パン屋で払った額、四二〇〇エル。高いのか安いのかわからなかった。


 部屋に戻り、忘れないうちにパンを詰め替える。それから放置していた金属や鉱物を含め、使わなかった小麦粉のなんかの食材も全部収納ブローチに入れてしまう。

 荷物整理はできてないが、これで部屋は片付いた。


 お昼まで時間があるので、まずスタンドランプを作る事にする。とりあえず、夜部屋の中を歩くのに困らないくらいはほしい。たぶん、メイも使ってくれるはず。

 あまってもいいかと思いつつ、気の向くまま二〇個ほど作った。


 次に作るのは封入瓶。ガラス製品を作りたくなった時ように手持ちを二割ほどの残して全部封入瓶にしてしまう。

 薬草はそのまま持っているより、作って封入瓶に入れたしまった方が長持ちするようで、マナポーションを先に作りあまった瓶を一本だけ残してポーションを入れた。

 一本残した封入瓶には毒消し薬をいれる。素材がある分全部錠剤に変えたが、瓶は八割ほどしか埋まらなかった。


 傷薬はいくつかの鉱物を素材にして保存容器を作る。手の平サイズのを六つ作り、残りは鍋みたいに大きいのにまとめて入れる。

 鍋の分は時間ができたら冒険者ギルドに全部売ってしまってもいい。

 

 処理しておきたいことは、他に思い浮かばなくて、やっと生活するのに必要な物を考えられる。

 布系の物はメイに相談してからにするとして、今のところ一番使っている寝室をまずはどうにかしよう。


 とりあえず、部屋の中は靴を脱ぎたい。木材、上手いことやったらフローリングのようにならないだろうか。石の床と木の床の間に空間を作って、床下収納ぽくしてもいい。

 現在、着替えはポーチに入っている分しかないが、おそらく着替えは増えるし、ふやしたいし、クローゼットがあるといいと思う。


 床下収納は欲しいが、底が抜けたら怖いので、まずは木の板を床に敷き詰めることにする。そうすると寝台が邪魔なのて、清潔魔術をかけてから収納ブローチに入れた。

 床も清潔魔術をかけてから作業を始める。

 厚さを一定にした正方形の板を大量に作り出した。闇手ががんばって並べてくれる。

 端のはまらなくなった部分は闇刃という魔術でスパッと切って隙間なくはめこむ。

 ドアが寝室の方へ押し開けるタイプだから邪魔になる部分の板をどけ、ずれないようL字型の木枠をはめこむ。

 玄関ぽくなったので、板の上は土足禁止にする。スリッパ代わりの木靴を作り、三段くらいの下駄箱を作って設置した。


 湿度で木が変形した時が心配だが、問題が起きたらその時に考えることにする。

 次に作るのはクローゼット。壁と板を使って箱状にし、金属の棒でハンガーをかけられるようにした。

 ハンガーをかけるようにしてから、この世界でまだハンガーを見ていないと思いいたる。どこで売っているかわからないから、ハンガーも作ってしまう事にした。

 あとは、鏡台も欲しい。座椅子とちゃぶ台もありだ。


 イスより座布団が欲しい。クッションというか、枕も欲しいが、メイは作れるだろうか。できるなら、ソファーもお願いしたい。


 そろそろメイは起きただろうか。異世界に来てから早寝早起きらしいが、訪ねてもいいが悩む。

 悩んでいたらドアがノックされ、名前を呼ばれているようだ。

 返事をしつつ、玄関を開けに行く。


「お待たせ、おはよう」

「おはよう。ちょっと部屋に来て魔物素材でいる物がないか確認して」

「あっ、魔物素材そっちにあるんだ。こっち全然なくて、作れないレシピあったの」


 玄関の鍵を閉めてメイの部屋に移動した。

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