第116話
初日に薬関係のレシピが多く出たせいか、二日目からはそれ以外のレシピが出るようになった。
ただ思ったらほど家具は出なくて、魔導具の家具レシピは出るけど、まっとうな家具のレシピは出ない。ただ、家具の飾りに使える模様がレシピで出たので、錬金術で飾りをつけられる様にはなった。
自作の図面から作っていた素人感満載の家具が少しはマシになるかもしれない。そんな素人作の椅子でも、ここのガチャで出る座ったら壊れてしまう半人前職人の椅子なんかよりは使える。
飛空船に配置する普通の家具が欲しかったのたが、思った様にはならない。
「このガチャなら、不人気ダンジョンって呼ばれるの納得したわ」
「いや、エイコはかなり引き強いよ。銀メダル以上に限定すれば使える物しか出してないよね。それだけの引きの良さが誰にでもあれば、ここのダンジョン不人気になんてなってないから」
クリフに作ってもらったクレープを食べながら、先ほどガチャで出したばかりのカトラリーを使う。
カトラリーに耐熱の付与はいるのだろうかと悩みたくなる品で、熟練職人の作になっているせいか持ち手の飾りは緻密だ。
鍋料理なら耐熱に価値があるかもと思いはしたが、鍋から直接食べるならフォークやナイフではなくお箸がいい。
結局、カトラリーとして普通に使えるだけでいいとするしかなかった。
エイコとしてはおやつタイムだが、クリフとしては現状は隔離監視タイム。王都に送った人たちが報告に来ており、お話の間大人しくしていてほしいと願われている。
この報告時間もすでに三回目だ。おやつを食べているのが誰にとっても平和でいいそうだ。
メイはガチャで出した見習いの作ったドレスの糸を解いているのに、エイコには作業させてくれない。見習いの作った薬を錬金術で素材抽出した時に異臭を発生させたのが良くなかったのだろう。けれど、よくない薬こそダンジョンで作ってナイナイさせたの方がいい。
果物とクリームたっぷりのクレープは美味しいけれど、不満だ。
お薬を作るときは解毒薬、毒物検査薬、それから毒物の順に作る様に指定まで受けている。
解毒薬のない元の世界で麻薬にあたる様な薬はこちらでは乱薬や混薬、幸薬に酔薬と呼ばれたくさん種類があった。
そこにあるだけで、常温て気化する物あるらしく、作る前にガスマスク的なものが必要なのもある。触れるとダメなのもあるらしいし、密閉性の高い専用の実験室が欲しくなる。
飛空船の一つを実験室にしてしまおうかとも思ったが、一回作れば満足するならダンジョンでやってしまえと唆された。
実験室を作っていつでも作れる状態になる方がダメだと、アルベルトの直感が主張したらしい。
脳や精神を壊す系の薬は作るつもりはないのに、どうにも信用がなかった。
おやつを食べた分、運動がてらダンジョン探索兼よろしくない薬の作成にでも行くべきか。迷っていたところにパトスがやってくる。
紙一枚につき一件の不動産情報が記載されており、好きなのを選べと言われた。
ラダバナで買った家より最低でもケタが二つ多い物件を買えとは、なかなかひどいおっしゃりようだ。
「家持ちが貴族の標準?」
「王都在住の男爵なら標準だ」
騎士爵のクリフとパトスは家を持っていない。王都はアパートもラダバナより家賃が高いので、王都にいたときは二人とも寮暮らしだそうだ。
アルベルトは寮にいたいが、実家から呼ばれて王都本邸か別邸にいるかとが多いらしい。
「ちなみに、家を買わないとアルベルト様と滞在先が同じになるぞ」
「宿という選択肢は?」
「冬場はぼったくり価格だ。陞爵するのに安宿にも泊まれない」
パトスのさっさと選べとばかりの冷たい響きの言葉より、クリフの穏やかな言葉がささる。
「高級宿だと、生産活動する作業空間がないよ。もちろん僕もご飯を作ってあげられない」
エイコは金策ができてないし、メイにドレスも作ってもらっていない。
「もう飛空船を家として登録したい。ダメなら家の価格並みで売りたい」
最近、金策にばかり悩まされる。
普通のポーションなら一万個以上売らないとダメだと思うと、頑張ろって気にすらならない。
売るならもっと単価の高いものでないと、頑張れそうになかった。
「事故物件で安いの買って、更地にした後飛行船置いて住んだら?」
作業の手を止めてメイが話に入ってくる。メイはエイコから安定的にドレス代を徴収するまで店を作るつもりはないそうで、エイコの住む所に服を作る部屋をくれと要望していた。
「どうせどの家を買っても内部は自分達で改装しないと居心地悪いもの」
土足文化は宿なら諦めるが、家ならやめたい。食事も定期的に米食べたいし、家の中までドレスで生活したくなかった。
「落ち着こう。外観くらいは目立たないようにしてくれ。できれば、人を招く応接室くらいまてば、こちらの世界に合わせてほしい」
更地に飛行船をパトスは回避したいらしく、悪目立ちするとご近所付き合いが大変だと諭してくる。何しろご近所さんもみんな貴族。貴族同士の近隣付き合いはかなり気を使うらしい。
「ねえ、敷地面積とか部屋数より、家の近隣に面倒な貴族がいるかどうかの方が重要じゃない? 近隣に絡んでくる系貴族がいない家はどれ?」
金策は頑張りたくないけど、頑張ればどうにかなる。よろしくない近隣住民はお金払ってでも関わりたくない。
ならば、選ぶ基準は不動産価値では決められなかった。
「近所付き合いするつもりがあるのか?」
「ないよ。でもね、からむ人って、こっちが避けようとしてもよってくるでしょ」
ラダバナても近所付き合いはトミオを中心に丸投げしていた。メイやカレンはお店をやるついでに少しは交流があったみたいだけど、男性陣の方が圧倒的にご近所さんとの関わりが多い。
「今からでもトミオさん連れてくるべきかしら」
「待て。家令や執事職でスキル持ちでもなければ、一五歳の人では侮られる」
当主となるエイコが一〇代なので、ご近所対策の家令なら年寄りの方がいいそうだ。
「そんな人知らないわよ。あっ、ラウは? なんかスキルありそうじゃない?」
「隣国ほどひどくはないが、この国も獣人差別はある。それに奴隷が家令では信用がたりない」
パトスはあれこれダメ出しばかりで、口うるさい。嫌な顔をしてそっぽをむけば、クリフが頭をなぜてくれた。
「とりあえず、どういう人がいいか希望出して。こっちで探してみるから」
「怒らない人。口うるさいのは嫌だし、問題ごとを持ち込む人もイヤ」
問題が起きないように雇うんだし、問題が発生する前に対処してくれる人でなければ困る。
「見た目や性別にこだわりはないんだね」
「見た目は問題を引き寄せるようなのでなければいいよ。性別よりは相性の方がきになるし」
ざっくりとした希望だけ告げて、家と家令は任せることにした。家の購入はとりあえずアルベルトが実家の名前を使って物件を押さえてくれるそうなので、金策が間に合わなければ、アルベルトの実家相手にポーションやお酒、お薬を大量生産することになるらしい。
もしくは、ガチャで出した魔導具を何個か売れば購入費に足りるらしいが、売ったら分解できないのが悩みどころだ。
ここは売る分と分解用と献上品用が出るまでねばるべきだろうか。悩んでいる間に銅メダルからエイコもメイもレシピがでなくなり、別のダンジョンに移動することになった。
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