第118話
ここのダンジョンはレシピだけでなく、素材も出てくれる。妖精の工房よりは生産しやすい環境だ。
「おしゃれよりお金?」
「億稼がないといけないのよ。気に病まずにぼったくれて、量産できる物はありがたい」
ラダバナ周辺で出した化粧品や基礎化粧品と微妙に素材が異なり、こっちの方が色や香りのバリエーションが多い。材料一つ違いで香水のレシピが多すぎて、自分でアレンジできそうな誤差しかなく、出すとハズレに思えてくる。
これ、献上品として使えるのだろうか。入れ物の方もレシピが出たので、凝った容器も作れそうのなのはいいが、どの程度の価値なのかエイコにはわからなかった。
レシピも冒険者ギルドで売れるから、香水のレシピを取り込むのをやめるのも一つ手ではある。けれど、錬金術スキル用レシピならともかく、職業限定がついていると珍しい職だけに買い手がいない。
そうなると当然、冒険者ギルドの買取価格も低くなる。
手鏡や櫛も複数のレシピがあり、髪留めや髪飾のレシピも出てくる。こっちは素材で値段を変えたら売りやすそうだが、自分で直売するよりは取引先にできる店が欲しい。その店次第で収益の差は大きそうなのが難点ではある。
「メイ、桂とか付け毛のレシピ出たんだけど、使いこなせる?」
「こっちで髪の染料レシピが出てるから、いろいろ試してみたいよね」
ドレスには盛り髪だと、メイは主張する。ドレスでなくても、マナミのグループは髪を盛るのが好きだったはず。文化祭とかハロウィンで気合いの入った頭を見た気がする。
「カラコンみたいなレシピ出ない? 髪と瞳の色を変えれるなら、ドレス何色でもいけるでしょ?」
「カラコンはないけど、瞳の色が違って見えるメガネならあるわ。あとは、顔を偽装する
「顔偽装って、犯罪臭がするわ」
エイコもそう思ったから一回は作ったがそれっきりになっている。
瞳の色だけなら、幻術を付与したチャームで対応できそう。でもそうすると、エイコに合わせたドレスではなく、ドレスにエイコが合わせなくてはいけなくなりそうで黙秘した。
夕食を食べ、お風呂用キャンピングカーで汚れを落とした頃、メダルを溜め込んだゴーレムが戻ってくる。
夜営している他の冒険者に不審そうな目を向けられているが、気にしない。ガチャの順番を待っている人もいないので、どんどんガチャることにした。
メイがお風呂から出てくると、メダルが三割くらい残っていたのでメイに譲る。メダル分、服を作ってもらう予定。服に合わせた小物もいるで、布系の物はメイに頑張ってもらいたい。
ガチャが終わると見張りを軍属の方々に任せて、エイコとメイは寝た。
夜の間に何があったのか、女性ばかりでパーティーを組んでいた冒険者たちが軍属の方々にいいよっている。いいよられている方もまんざらではなさそうだ。
「浮気?」
朝食準備中のクリフに問えば、にこっと笑う。
「情報収集」
女性冒険者にとっては、冒険者より軍人の方が収入が安定しており、よほど高収入な冒険者の比べなければ結婚相手として良い相手だそうだ。
ここのダンジョンに入れるので生産系職業なのは確定しており、休日に一緒にダンジョンにもいける。
結婚適齢期の方というか、この世界的には遅い分類に入りそうな女性冒険者たちが婿として獲物を狙う目を向けていた。
ただ、男の方は遊びで応じている。アルベルトが連れてきているのは騎士爵持ちか、将来的に騎士爵を得る予定の人たち。普通の冒険者の女性は結婚対象にならない。
生産系冒険者なら店持ちでかなり稼いでいるか、教養が必要になるそうだ。
「貴族として最底辺でも夜会とお茶会は発生するかね」
お金ナシ、教養ナシ、コネナシだと、嫁になった方も困るらしい。まったく貴族らしい生活をしないというなら別だが、何か一つくらいないと上司へのあいさつどころか、同僚の奥さんに紹介もできないそうだ。
「ここ星六つだし、お金はあるんじゃない?」
「その場合、仕事辞めて婿にきてっていう状態からだと思うよ」
仕事を辞めるつもりのない男としては、結婚相手として考えない。そして冒険者を下に見ているから、遊び相手と見るそうだ。
「わたし、遊び相手?」
「違うよ。こういう時の遊び相手は、後腐れのない大人の女性。だから、重そうな相手には手を出さない」
ダンジョンの外には上司がいるのに、査定に響く様な面倒な女は相手にできないそうだ。
なので、女性によってこられるのはまんざらではなくても、情報収集らしい。
「クリフ、エイコにそんなこと言っていいの?」
「エイコには自衛してもらいたいから。男女間の話もした方がいいかと思ってね」
今までは誘拐囲い込みだったのが、陞爵後は既成事実、嫁、囲い込みに警戒しないといけないそうだ。
「若い女で金を稼げるとなると、バカはいくらでもわくから」
「護身用に影にアオイを潜ませておくわ。最悪、ブレスで更地にしてしまえばいいし」
「上司に警護つけるように交渉しておくから、街中でブレスはやめよう」
首を傾げながら、ちょっとだけ考える。自衛と特に思い入れのない街。優先するのは自衛だ。
「警護、監視くらいなら妥協するけど、行動制限されるのはイヤよ?」
ダンジョンで闇魔術育てよう。あとちょっとがんばったら、魔導ゴーレムと魔導人形をアオイみたいに待機状態にさせられそうな感覚がある。
ガチャで手に入れた収納スキルは、エイコの意識が無くなれば取り出せないから、待機させるなら影の中しかない。
毒物レシピ大量にあるから、最終自衛用に即死毒使う魔導人形を作っておこう。そこまでしなくてもいいなら、拘束用に麻痺とか睡眠系だろか。
心を折りたい相手用に死なないけど苦しむ毒もありかも。ヤバすぎてダンジョンにポイッしたの物をもう一回作るつもりはないけれど、残っている毒物も多い。
依存性のある薬だけさけとけば、いいよね。
クリフやパトスに相談していれば、全力で止められそうなことをエイコは良いとして、のほほんと朝食を食べる。
使い道のなかった毒物の使い道が決まったと、のん気なエイコ。アルベルトがダンジョン内にいられれば、直感スキルで危険を察知できたかもしれないが、戦闘職の男はこのダンジョンには入ってこれない。
昼間は探索さしてメダルを集め、夜はガチャで出た素材で何が作る。そんな生産職冒険者らしく、エイコは夜な夜な魔導人形を作った。
野外なら大型化させやすいゴーレムタイプだが、街中の、それも室内で運用することも考えると小型化させやすい自動人形を選んで量産する。
ダンジョン二日目のガチャから、やたらと装飾品のレシピがでた。それも、隠し武器を内蔵しているものばかりで、ついでだからとエイコはお試して作ったそんな装飾品で自動人形を飾る。
クリフの鑑定では、レシピの段階で偽装が組み込まれた装飾品の暗器までは見抜けない。
誰も止める人がいないまま、エイコはその危険性を理解しないまま自衛用として夜な夜な魔導自動人形を作り続けた。
そしてダンジョン五日目。闇魔術が成長した様で、影に魔導自動人形を待機させられるようになった。
いつものごとく、通信端末の確認にダンジョンを出たところでアルベルトに捕まる。
悪気のないエイコは、アルベルトの影の中に何がいるのか、という問いに素直に答え、怒られた。
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