スケルトン市場ダンジョン 難易度⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

第7話

 明るくなってから起きて、昨日買った硬くなったパンを温めた物と白湯を朝食とした。ガッカリな朝食にテンションを下げ、メイと一緒に冒険者ギルドへ行く。

 冒険者ギルドの中だけ、通勤ラッシュを思わせる混雑ぶりに受付へ質問になんていけない。


 大声で呼びかけをしている人もおり、怖い。人の少ないところを探して二人してウロウロしていたら、人の少ない場所があった。

 依頼書を張り出した掲示板の前は人だかりで、固定パーティーを組めていない人は大声で人を探したり、売り込んだりしている。

 そんな掲示板の前なのに一番奥の隅っこは人がいない。なぜかと見ていれば、生産職専用依頼だった。その隣は冒険者ランク上位者向けの依頼書になっている。

 依頼を取り合う相手がいないから、ここは空間が空いているようだった。


「レシピの納品依頼多いね」

「レシピって狙って出る物なのかな?」


 銅メダル百枚以上回して、料理レシピなんて一つもでていない。生産職系の依頼って、もしかしてレシピ出してから依頼を受けるべきなのではないだろうか。


「ガチャボックスにそんな機能なさそうだよね」

「あー、でも職業補正はあるかも」


 魔導具の素材は比較的多く出た。メイは布や糸が多く出たらしいが、エイコはそんな物まったく出ていない。


「依頼って、受けたら期間内納品できないと罰金があるだよね」

「ここの依頼って、罰金商法詐欺?」

「何それ?」

「だって、依頼達成するより、罰金払う事になる依頼ばっかりじゃない」


 ヤバイ、ヤバイ言い合っていると、三人組の男の人にメイが声をかけられた。


「あっ、トミオさん。おはようございます」

「メイちゃん友達できたのか」


 メイは声をひそめる。


「同郷同級生。こっちで会えると思わなかったんだけど、顔に面影がある」

「知り合いが一人でもいるのはいいな。オレはこっち流に名乗るなら、トミオ・サトウだ」

「エイコ・オトナシです」

「ショウ・シオタです。よろしく」

「ユウジ・アマミ」


 面識のない者同士で自己紹介を済ませる。


「アラフォートミオ、アラサーユウジ、チャラ男ショウだから」


 受肉体の年齢はみんな一五歳で、外見から元の世界の年齢はわからない。


「メイちゃん。チャラ男って、オレだけ悪意ない?」

「オレのハーレムの一員にしてやるなんていう人だから」


 にっこり笑顔でメイは拒絶する。


「イヤ、だって、ほら、チートあると思ったんだよ。オレが主人公だと夢見たかっただけなんだ。まって、エイコちゃんまで冷たい目で見ないで。オレ、それを喜べるタイプじゃないから」

「ショウも悪いヤツじゃないから許してやって。突然の状況に混乱しながらもポジティブに生きようとしただけだから、な」

「オレTUEEEできないとわかってからは、堅実な子だから、遅くにかかった厨二病だとでも思ってそっとしておいてやって」


 黒歴史はそっとしておいてあげるのが大人の優しさだと、アラサーユウジはとどめを刺しにいっている。


 メイはダンジョンを出てすぐに彼らと会い、冒険者ギルドまで無事に来られたそうだ。登録までは一緒にいて、生産職だけアパートに入れるとわかり別行動になったらしい。


「ここにいるってことは嬢ちゃんたちも依頼をうけるのか?」

「受けられそうなのがないから、たぶん受けないでダンジョンへ行くと思う」

「依頼受けなくてもダンジョンには行けるが、はっきりしねぇーな」


 話すように促されてメイが口を開く。


「エイコ、町の入管の列に並んでいた時に腕掴まれて絡まれたの。ギルド職員の人にそのまま連れ去られてもおかしくなかったていわれたから、二人で外でも大丈夫が聞きにきたんだけど、今忙しそうで」

「それは、よく無事だったな」

「一昨日のアレを見てると余計にそう思える」

「男も女も関係なかったからな」


 男たち三人がしみじみとしていた。


「わたし、その頃まだダンジョンから出られてなかったんですが、そんなに大変だったんですか?」

「チャラ男くんの勘違いを正さないまま目立った人たちが狙われて、異世界人狩りになたんだよ。あの勢いは、異世界人でない人も攫われている」

「人攫いって、犯罪じゃないの?」

「犯罪だよ。立証してくれる人がいればな」

「立証する前に借金があっとか、売られたっていう書類準備されてしまって、誘拐ではなく合法取引にされるみたいてすが」

「治安わるっ」


 どうも生産職二人でいるのは安全から遠そうだ。しばらくは冒険者ギルドに求められるままポーション作りをしていた方がよさそう。


「あっ、いたいた。覚えてる?」


 元気な声で女の人が声をかけてきた。振り向けば見覚えのある顔をしている。


「えーと、フレイムブレイドさん?」

「あはは、それパーティー名だから。リラって呼んで」

「エイコです。昨日はありがとうございました。ギルド職員の方にもよくよく感謝しておきなさいと言われまして、そちらで材料の用意をしてもらえるなら応じた方がいいと言われました」

「本当、やったー。今、時間ある?」

「受付の人がヒマになるくらいまでは」

「ユト、ギルドで部屋借りて立会人つけてもらって」


 誰が聞いているかわからないから、ここで話すのは良くないとリラが場所の準備をする。


「あの、友達も一緒でいいですか?」

「どちらさん?」

「エイコの隣の部屋に住んでいる、メイです」

「エイコちゃんの同業者なら歓迎だよ」

「すまんが、オレらも同席させてくれ。同郷の人としてこの二人だけじゃ心配だ」

「いいわよ。うちらは搾取したいんじゃなくて、安定供給が希望だから」


 大人数でぞろぞろと移動する。




 フレイムブレイドはBランクパーティーで、リーダーのミルタだけがAランクになっている。

 六人全員が戦闘職で、冒険者ギルドで買えるポーションはランクによって上限が決まっており、ポーション不足がダンジョン攻略の足枷になっているそうだ。


 なので、フレイムブレイドが素材を提供し、それをエイコが作るという契約を最初はする予定だった。そこに待ったをかけたのがトミオで、上限を決めろと言い出す。


「オレらはFランクの新人だ。それでも1日ダンジョンでモンスターを狩っていれば数十枚はメダルが得られる。Bランクで人数が多いならそっちはもっと大量に手にはいるだろ?」

「一日あれば、二〇〇は超えるな」

「そうそうあるとは思えんが、それが全部ポーションの材料で、連日になると嬢ちゃんの負担が多すぎる。あんたらもそこまで毎日ポーションはいらんだろ?」

「まあ、そうだな」


 フレイムブレイドの面々で話し合いを始める。トミオの語った例は極端なものではあるが、ないとは言い切れない。そういった問題を起こさないためにも契約書は作られる。


「ポーションを入れる瓶ってどういう扱いになるんだろう? 瓶の素材ってポーションの素材ほど出なかったんだけど」

「瓶も作れる?」

「材料があれば」

「瓶の現物見せてもらえるか?」


 話し合いををしていたが、エイコのつぶやきにフレイムブレイドと人は反応してくれた。


「中身入っているけど、大丈夫ですか?」


 腕輪の収納から瓶入りポーションを一本取り出して渡す。


「これ封入瓶だ。瓶も素材こっち負担て契約書した方がいい」


 瓶を確認していた人が興奮気味に告げたが、この場にその意味を理解してる人は発言した人だけだった。


「封入瓶と普通の瓶の違いわかっている?」


 わからないと答えていいか悩んで、首を傾げるだけにとどめる。


「普通の瓶にポーションを入れておくと時間経過で劣化する。三ヶ月くらいでたぶん半減するんだ。それが封入瓶だと、三ヶ月くらいじゃ効果が落ちない。長期保存できるんだよ。この瓶ならポーションが余るくらいあっても困らない。最終的に余っても売れる」


 一人だけ熱弁してくれるが、他の人はみんなそうなのくらいの反応で、温度差がひどいことになっていた。

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