File.2 弁護士
眼を覚ました俺はなぜか恐ろしいほど落ち着いていた…そしておもむろにスマホを取り出し、電話をかけた…
俺が電話をかけたのは小学一年生の頃、いじめられてた俺を救ってくれた六年生の人で今では友だちになっている…その六年生の人の名前は東雲魁戸といい、今では弁護士資格を獲得している…
繋がらないと思っていた電話は思いのほか早く繋がった…
『どうしたんだ?翔太?』
『助けてくれ…魁兄…』
『どうした!?何があったか俺に説明してくれ!!俺はどんなときでもお前の味方だからな!!』
俺が電話をかけたのはどんな状況でも俺を味方してくれた魁戸兄ちゃんだ…正確には兄ではないが、昔俺のことをいじめから救ってくれた人でもある…その時俺にこう言ってくれたのだ…《俺はお前がどんな状況であろうとも、必ず味方だから何かあったら必ず此処に電話しろ!!》ってね…
『いまテレビで痴漢のニュースがやっているだろ…それが…』
『…それ以上は言うな…お互いに助け合ってきた仲だ…どんなことでも私に任せなさい!!』
『うん…』
『…それでどうする?俺は徹底的に追い詰めて関わった奴ら全員破滅させる覚悟ができているぞ?』
『あまり関係のない人たちは巻き込まないであげてね』
『大丈夫か?ちょっと辛そうだが…』
『うん…取り押さえられてから頭がずっと割れるように痛いんだよ…それに親父の顔も母さんの顔も皆歪んで見えるんだ…なんて言えば良いのかわからないんだけどさ…』
俺には親父の顔も母さんの顔もノイズがかかっているかのように鮮明に見ることが出来ない…だから昨日母さんに睨まれたのを最後に家族の顔を鮮明に見ることが出来ていない…
『…分かった…お前の父親に任せてられないから迎えに行く…後30分くらい待っててくれるか?家の前まで行くからそれまで荷物をまとめておいてくれ…』
『荷物をまとめる…分かったやっておくよ…』
俺は電話を切り、作業に移ろうとして、おもいだした…そう妹を見ていないのだ…だが、俺が会ったところで意味はないだろう…それどころか下手に刺激してしまうかもしれない…
幸いにも俺にまとめるほどの荷物はない…というか俺の部屋にあるものは自分の金で買ったパソコンに、自分の金で買ったパソコン関係のものだけだ…俺はデータが飛ばないように注意してから作業を終え、中学生の修学旅行で海外に行った時に使ったバッグに全てを詰め終えた…
そうして部屋を出て、玄関へと向かうと妹らしき人影と鉢合わせた…妹らしき人影は俺に向かってこういった…
「痴漢なんて…最低」
それだけ言って妹らしき人影は、部屋へと入っていった…俺は妹らしき人影が部屋に入った後、玄関をでて外へと出た…
魁兄は俺を助けてくれた…なら俺も助けてくれた分の報酬は出さないとね…
俺は父にも母にも妹にも…家族全員に隠していたことがある…稼いだ分は自分のために使った…そしてここ一年位は一切使わず、溜まりに溜まっていたため…
「現金でずっともらってきてよかった…」
今の俺にはだいたいパソコンを10台近く買えるほどの金がある…だから正式に報酬を渡して働いてもらおう…
「大丈夫か?翔太」
「うん…それとこれ…」
俺は魁兄に今まで溜めたお金を全て渡した…これで足りるだろうか…
「取り敢えずこれについても今後の対策も一度考えなくちゃいけないが、これから病院に行く…」
病院…?どうして行かなくちゃいけないんだ?確かに割れるように頭が痛いが…それも今は耐えられる…俺のことを散々言ったあいつだけは許せないから…
「うん…分かった…疲れたから少しねるね?」
俺は返事を聞かずに寝てしまった…俺のことを助けてくれるのは魁兄だけなんだ…本当はこうなる前に色々と助けてほしかったな…アレ?…俺は誰に助けてもらいたかったんだっけ?
魁戸side
突然電話がかかってきた時はびっくりした…たまたま仕事の休憩中だったため、電話を取ることが出来たため気づくことが出来た…それにこれに気づけなかったら更に大変なことになっていただろう…
今まで翔太は、いじめを受けてきたり色々なことに巻き込まれてきたけどなんとかなってきた…でも今回だけはだめだ…完全に精神がやられてしまっているし、取り押さえたやつが素人だったのかわからないけど、会った時これはまずいって思ったほどに顔が歪んでいたし、苦悩に満ちていた表情だった…本人は自覚していないようだけど、今回の件は相当来るだろう…
弁護士である俺は持てる力の限り、この件の関係者を特定していった…そして、今回の件の被害者や、取り押さえた本人それ以外にも様々なものを特定した…
そして翔太が寝ている間に病院へと連れて行った…そして医者から言われたのは…
「このまま何も対応をしなければ、恐らく自殺をするかもしれません…というよりその可能性のほうが高いです…」
「どういうことですか?やっぱり今回の事件で…」
「それも高いですが、以前にもこれに近いことに巻き込まれたりしませんでした?それ以外にもいじめだったり…」
「いじめにあっていたとは聞きました…私がその時は助けたんですけど…」
「私が貴方に今回取ったアンケートを元に回答させてもらうと、貴方以外のことを今後信じることは不可能に近いと思います…たとえどれだけ仲良くなってもその人のことを完全に信じるのは今回の件で確実に不可能になったと考えられます…それに…解離性同一性障害を発症する可能性も…」
そこからの内容は覚えていない…ただ俺の胸に悲しみと怒りが湧いて頭の中を駆け巡っていた…そしてある人に電話をかけることにした…
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