File.148 兄と妹

俺は魁兄と一緒に病院に来ていた。魁兄が面会をすることを先に伝えておいてくれたおかげでスムーズに行くことが出来た。俺は車から降りた所で固まってしまったため魁兄に車椅子を押してもらうことで対応をすることが出来た。


車椅子ということで、周りから注目されたが仕方がない…魁兄と俺は数分掛けて妹の病室の前に居た。


「魁兄…俺は彼女と話せるかな?」


「大丈夫さ。翔太は覚悟を決めてここに来たんだろ?それだったらどんな状況になったって、頑張れるはずさ!!」


心臓の音がうるさい。今日が彼女と話せるチャンスなんだ…例え俺の目に彼女が人間の姿に見えなくても、話さなければ行けないのだ。


俺は覚悟を決めて妹の病室に入った…






やっぱり俺の目には、妹の姿はなかった。そこに居たのは粘性の化け物だった。でも以前見たときはすぐに気持ち悪くなっていたが、今はそんなことは感じなかった。


「お兄ちゃん…あの時はごめんなさい。」


以前から聞いた声ではなく、妹の声が聞こえた。


「いや…俺も悪かったところはあるだろうし、良いよ。」


俺が彼女に目を向けてようとしたところで俺は驚愕した。そこには妹の姿があったのだ。年生の化け物の姿ではなく正真正銘妹の姿だった…


「私、お兄ちゃんにずっと謝りたかったの。お兄ちゃんが家から出ていったあの日、なんでこうなったんだろうなって思ってたんだ…」


「うん…」


「お母さんもおかしくなっちゃったし、もうこれからどうすれば良いのかわかんないよ…どうすればいいと思うお兄ちゃん…」


「学校には行っているの?」


「一応…でも、前までいた友達は皆何処かにいっちゃったんだ…」


「そうか…」


「私、お母さんがどうなったのか知りたいんだけど…どうなっちゃったのか知ってる?」


「…聞く覚悟があるんだよね?」


「大丈夫…あれから何処に行っちゃったのかわからないし、知りたいの。」


「わかった。それじゃあ覚悟を持って聞いてくれ。まず初めにお母さんとは数年は会えなくなった。」


「…どうして?」


「人として許されないことをしたんだ。ここまで言えばわかるよね?」


「…」


「それとお父さんとももう会えない。お父さんに関しては、場所だけは教えてあげられるけど…聞く?」


「うん…」


「北海道にいるらしいよ。農家になっているとかどうとか…それと、お父さんとはもう会ってはいけないよ?」


「どうして会っちゃいけないの?」


「…お父さんは俺等兄妹とはもう会わないって決めたらしいんだ。だから俺らから関わっちゃいけないんだ。」


「わかった…お兄ちゃんはそれを知っているってことは、話したの?」


「電話でね…でも、父さんはそれもだめだっていうから、もう話すことはないかもね…」


妹は明らかに悲しんでいた。あんな事をしたとは言え、母親であることには変わらないし関わらないと決められたとは言え、父親なのだ…辛いことには変わりないだろう。








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