第17話side真冬

ズキッ!


─動くと下腹部に鈍い痛み。でも私が彼に抱かれた証。


 傍で眠る豊和君を見ながら初めて抱かれた余韻に浸る。漸く…私も結ばれた。声も聴こえた。『また1つ結ばれた』と。誓約を交わした時と同じ声。あの瞬間…見間違いかも知れないけど豊和君が濃くなったように見えたし感じた。それは私達が誓約を守れば豊和君とずっと一緒に居られるという確信にも似たような感じ。豊和君の髪を愛おしく撫でながら彼の寝顔を見つめる。


「誓約は必ず守ってみせるから…。だから…ずっと…ずっ~と私達の傍に居て幸せを感じてね、豊和君♡」


 そして、私は彼を見ていると昔の事。私達出逢いを思い返す。




******


「綺麗…」


「…何。ナンパかしら?」


 私が音楽室で歌を歌っている時の事。ゲームではこうやって歌っていると主人公が話し掛けてくる。選択肢は2つ。

「すいません。歌を歌っている時に…」と、

「歌うより遊びに行こうよ」の2つ。どちらもしょうもない選択肢だわ。それで、この目の前の子は主人公なのよね?また私の番…が来たのね。はぁ~。憂鬱。とっても憂鬱だわ。早く終わって欲しいものね。


 さて、いつまでも呆けている訳にはいかないわね。早く次のセリフを言いなさいよ。って、ちょっと待って。この子…今、選択肢ではない事を言わなかった?言ったわよね?


「ごめんなさい、悪いけど…もう一回言ってくれる。聞こえなかったから」


「あ~、すいません。声が…歌声がとっても綺麗だったもので…」


 やっぱり違う。いつもの主人公ではないしセリフが…選択肢の言葉ではない。何で…?

考えても分からない事か。まぁ、結局、他の奴等と同じで私を攻略しに来たんでしょ?


「それでは失礼しました。歌っている所を邪魔してすいませんでした」


 そう言って立ち去る彼。


「ちょ…ちょっと待ちなさい!貴方は私を攻略しに来たんでしょう?」

(この人相手だと思った事が話せる!?)


「えっ?」


 何言ってるのこの人…みたいな痛い目で見るのは止めてくれないかしら。結構傷付くのだけれど…。


「貴方ホントに何しにここに来たの?」


「さぁ~」


「さぁ~、って貴方私をからかってる訳かしら?」


「すいません。そういう意味で言ったんじゃなくてホントに何故ここに居るのか分からないんです。気付いたらそこの廊下に居たんですがここから綺麗な歌声が聞こえたものですから…」


 嘘を言ってる訳では無さそうね。それにしても真っ直ぐこちらの目を見て歌声を褒めてくれる。他の奴等なんて私を上から下へと品定めするみたいに…なめ回す様に私を見てくるのに…ホント不思議な人…駄目駄目!!真冬何を思ってるの?コイツも男なのよ!男なんて全員一緒でしょ?


「で、では今度こそ失礼しますね」


「だから待ちなさいと言ったわよね?」

(はっ!?何言ってるの私ぃぃぃー!コイツは帰るって言ってるのにぃぃぃー!!!)


 慌てて立ち去ろうとする彼を私はまたしても引き留める。


「な、何か?」

「クスッ…そんなにビクビクしなくてもとって食わないから安心しなさい。折角ならもう少し聴いてみない?」


「……」


「取り敢えずそこに居て聴いてみて?」


「は、はぁ…」


「♪♪♪…」


 歌い終わると彼は笑顔で褒め称えてくれた。私は彼とのこの空気がなんとも言えない程落ち着いた。凄く心地いい。さっき会ったばかりなのに…。


「凄く良かったです。言葉で表せない程」


「ありがとう」


「…今更ですが名前を伺っても?嫌なら言わなくて結構ですんで」

「真冬よ…須藤真冬…貴方は?」

「豊和?」

「何で疑問系なのよ」

「う~ん。何となくそれしか分からないので…」

「…分かったわ。豊和君ね。豊和君良かったらまた聴きに来てくれる?」


「良いんですか?邪魔ではありませんか?」


「邪魔にはならないわ」


「それでしたらまた聴かせて下さい。真冬先輩が好きなので…」


「ふぇっ/////!?」


「あっ!歌声っ!歌声がです!」


「…そんなに歌声を強調されるとそれはそれで何かムカつくわね」

「すいません」


「クスッ…とにかくまた来て?待ってるから」

「はい」



******


 私と豊和君との出逢い。最初から私は…貴方に会った時から私は貴方に惹かれていたのね。一目惚れってやつね。今思えば…私ってチョロインかという位、恋に堕ちるのが早かった気がする…。でもそれで良い。私の初恋は見事に実ってくれたのだから…。


「大好きよ、豊和君…チュッ♡」


私は寝ている彼の唇に口づけ、胸元に顔を埋めて私も眠る。永遠にこの瞬間が続いてくれる事を願いながら…。










********************あとがき♡

いつも読んで頂き誠にありがとうございます。お陰様でフォローして下さる方も増えております。本当に有難い事です。引き続き星や評価、フォロー等どうぞ宜しくお願い致します。作者励みになりますので是非!

そして新作『気が付いたら無人島!?』を公開しましたので面白ければそちらも評価等宜しくお願い致します。美鈴でした♡

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