第36話幼馴染み

 俺は馬場隆弘ばばたかひろ。親の仕事の都合で2年程海外へ行っていた。本当はあと二週間位してから帰って来る予定だったのだが俺は早くこの街に戻って来た。夕方という事もあり人通りは多い。


 幼馴染みの遥と早く会いたかったからだ。俺が海外に行く時は寂し過ぎたのか暫しの別れの挨拶さえ来なかった。今思えば中学生という事もあり思春期だったのだろう。難しい年頃だからな。そういえば家は隣同士でも遥の部屋には入った事が無い。多分俺の写真が飾られていて見られるのが恥ずかしかったんだろうな。


 俺はというとしっかりと中学生一年生の入学式の時遠くからしっかりピントを合わせて撮った写真を机の上に飾っている。今思えばもう少し構ってやるべきだったな?いずれ結婚するんだしな。




───そうこう考えているうちに我が家と遥の家が見えて来た。青い屋根の二階建てが俺の家、黒い瓦の和風作りの二階建ての家が遥の家だ。2年位じゃここら辺は全く変わっていないな。んっ?遥の家の玄関にいるのは遥のおばさんかぁ!懐かしい。これは挨拶して置かないとな。未来のお義母さんになるんだし。


「こんにちは、おばさ~ん!」


「こんにちはって…あら、もしかして隆弘君?」


「はい。隆弘です。2年ぶりですけどおばさん相変わらず綺麗なままですね!」


「フフフ…もぅ、隆弘君たら。海外に行って口が上手くなって来たんじゃないの?」


「いえ、そんな事は無いですよ。何も分からない事ばかりだったので…」


「そうよねぇ、初めて海外に行くって不安だったと思うもの!で、帰って来たという事は今日からまたこっちに住むのよね?」


「はい。おばさん!また今日から宜しくお願いします!」


「うん、こちらこそ宜しくね!あっ、そうそうまだ聞いて無いと思うから言っておくけど明日は臨時休校になったらしいから明後日からの登校になるから間違えない様にね!」


「何かあったんですか?」


「ハッキリと詳しい事は言えないけど誰か怪我したみたいね」


「そうなんですか?遥は大丈夫だったんですか?」


「うん、遥は大丈夫よ。今はその怪我した子のお見舞いに行ってるけど…」


「そうなんですね。久しぶりに会いたかったなぁ~」


「隆弘君ご両親は?」


「両親はまだ二週間位先ですね。帰って来るのは」


「…それじゃあご飯はどうするの?」


「お金は預かっているので何か買おうかと…。恥ずかしながら料理は相変わらずからっきしなので…」


「それならうちで食べなさいよ?」


「そんな悪いですよ!」


「良いから良いから!もうすぐご飯を作り始めるから、そうねぇ…19時位になったらうちに来て頂戴!遥も喜ぶと思うわ」


「分かりました。お世話になります。それでは荷物の片付けしながら19時になったらお邪魔しますね!本当にありがとうございます。」


「いいのいいの!それじゃあ後でね!」


「はい!」




─俺は19時になるまで片付けや掃除をしながら時間を潰した。遥に会えるのを楽しみにしながら!


「そろそろ時間だな…」


 洗面台で少し髪を整える。正直顔には自信がある。よく海外でも声をかけられたものだ。服装を正し遥の家へ。




ピンポーン!


「は~い。どうぞ~!」


ガチャ!パタン!


「お邪魔します!」


「もうご飯は出来てるわ。さぁ、入って入って!」


「はい。それにしても久しぶりですね。お邪魔するのは…」


「そうねぇ…、家が隣でもお互いに中々忙しかったし遥も友達の所に良く行ってたみたいだしね」


「そうですね。色々忙しいですもんね」

(へぇ~遥は友達の家に行っていたのか。よっぽど仲が良い友達なんだな)


「さぁ、どうぞ!しっかりと食べて!」


「あれ、おじさんや遥は?」


「隆弘君、茶道グループって知ってる?」


「あの世界的に有名な会社ですよね?海外でも良く耳にしていました。凄い会社らしいですね?」


「そうなのよ。そこの子会社ではあるんだけどうちの人が社長を任されてね」


「凄いですね!おめでとうございます!」


「フフフ…ありがとう、隆弘君。だからという訳では無いんだけど以前よりも仕事を頑張っていて少しだけ帰りが遅いのよ。まぁ、会社自体がホワイトもホワイトだから早く帰る様に言われているらしいけどね」


「いや~流石おじさんですね。尊敬しますよ」


「あの人が聞いたら喜ぶわ。もうすぐ帰って来るとは思うけど、遥は茶道グループのご息女の愛美ちゃんとも仲が良くてね、今日から愛美ちゃん達とシェアハウスみたいに一緒に住むらしいわ。今日も帰って来て隆弘君の事を伝えたんだけど愛美ちゃんが待ってるからって慌てて飛び出して行ったわ!」


「えっ?……ぁあ、そうなんですね!いや~、久しぶりにホント会いたかったなぁ」


「まぁ、というわけでしっかりとあの子の分も食べていって頂戴!男の子だから食べれるとは思うのだけど…」


「勿論です。頂きますね!」





 食事を終えお礼を伝え俺は自分の家の自室へと戻る。壁から天井にまでビッシリと埋め尽くされる程の遥の写真を見ながらベットへと腰掛ける。


「そんなに僕に逢うのが恥ずかしいのかい、遥?僕は早く君に逢いたいよ…。あれからどれだけ綺麗になっただろうか?楽しみだ…」

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