第三部
第1話ここは…?
「んっ……」
目が覚めたばかりでまだ眠たい
「ここは…」
椅子に腰掛けているみたいなので体に力を込め立ち上がろうとするが立ち上がれない。
「…何だ?」
─ボンヤリとする意識の中腕を見ると両腕共に手首が椅子に固定されている。
「はっ?」
足を動かそうしても両足共に何かに引っ掛かり動かせない。腕と同じ様に固定されてる?自分の体を確認すると服を着ていない。息子の姿が見える。
「裸だし、一体どうなって…」
見渡せる範囲で辺りを見渡すと部屋自体は広くはない。大体6畳あるか無いか位の広さだろう。地面はというより壁も天井もコンクリートに見える。背後は流石に分からないが何も置かれていない。部屋の中央に俺は座らせられてると思う。
「どうしてこんな事になった?」
直弘を見送って戻ろうとした時何かで口と鼻を塞がれた…?そんな覚えがある様に思える。思い返していると不意に後ろから…
ガチャッ!キィィッ……パタン!
─誰かがここに入って来た。背後から誰かが近付いて来てるのが分かる。取り敢えず眠った振りをして様子を見た方が良いかと思い静かに固唾を呑む。気配は俺の直ぐ後ろで止まる。
「目が覚めて起きているのは分かってるんですよ?クスクス…」
背後から耳元でそう声を掛けられる。声は低く女性だと思う。柑橘系の香水の香りが漂っている。目が覚めているのがバレているのならと口を開く。
「これを外して貰えると有難いんだけど?」
「外す訳ないでしょう」
「(ですよねぇ~)…じゃあここは?」
「愛の箱庭よ♡」
「んっ?」
「だから愛の箱庭♡」
「愛の…箱庭?」
「そうよ」
「理解が出来ないんだけど…」
「理解する必要なんて無い。本能で感じ取れば良いだけなのだから!」
全く言ってる事が分からない。愛の箱庭?本能で感じ取れ?この人危ない人か?まぁ、俺を誘拐?しているんだから普通では無いけど…。
「…俺を逃がしてくれればこの事は無かった事に今ならしますよ?貴女も犯罪者にはなりたくないでしょう?」
(厳密に言えばもう罪を犯しているけどね)
「…何を言っているの?」
声にどことなく圧が掛かった様に聞こえるし感じる。マズッた?変に刺激してしまった?
「愛する人を家に連れて来ただけで何が犯罪なの?何が問題なの?何でそんな事を言うの?あの女達のせい?ねぇ、何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?」
ヤバい。この人何かがヤバい。取り繕わ無いとマズいと思った。コイツマジでヤバい!
「いやいや、俺の言い方がまずかった。悪い!すまなかった。貴女(?)は何も悪く無いからっ!」
「だよね♪そうだよね♪♪」
「うん…そうそう。ところで君は誰?ほら、名前が分からないと君の事呼べないから!」
「私の名前はキャロルでしょ!忘れたの?何度も夢の中でも名前を呼びあった筈よ!ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ!」
「冗談!冗談だから!キャロルだろ!ちゃんと覚えているから!キャロルをからかっただけだから!」
(初対面の筈だし、夢の中の話をされても分かる訳ないだろぉ!キャロルって偽名か?それともハーフか?)
「そっかぁー!豊和ったら私をからかったのね!イケナイ子なんだからっ!」
「ゴメンゴメン!俺が悪かった。それよりもさっき起きたばかりで何か飲み物を欲しいんだけど…」
「喉が渇いたの?」
「嗚呼、水か何か飲ませて欲しいんだけど」
「分かった♡もう少し待ってて♡さっき豊和の為に私が水分を多く取ってきたからもうすぐ出るからね♡」
「んっ?何て?」
「だ・か・ら・もうすぐ出ると思うから少し待っててと言ったの♡」
「……………………………何が?今っ……何と言った?」
「豊和の飲み物に決まっているじゃん♡豊和専用の私の・せ・い・す・い♡」
「………」
一刻も早く誰か助けてくれぇ────!!頼むぅぅー!
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