第36話side直弘

 豊和が行方不明になってから3日が過ぎた。豊和が消えた日、豊和が最後に会ったのは俺だと思っている…。


 ─あの日俺は見舞いがてら午後から学校を休み心友に会いに行ったんだ。


「よぉ、具合はどうだ?」


「来てくれたのか直弘!丁度暇してたところだよ。傷もほぼ塞がっているし問題無いよ!心配掛けたか?」


「当たり前だろ。俺の心友はお前だけなんだから!」


「相変わらず照れさせる事言うなよ直弘。坊主頭の癖に!」

「おまっ!坊主は関係無いだろう?坊主頭は髪洗うのも楽だし、麻季なんか俺の頭触るの好きなんだぞ!」


「…惚気が混じっていないか?」

「事実だっ!」


「そうかい」

「ああ」


「「ぷっ、アッハッハッ!!」」



 ─俺達は何気無い話をして笑い合う。豊和とはいつもそうだ。冗談でもなんでも何でも話し合える。心からの心友。豊和とは以来の付き合いだ。な~に、よくある話だ。俺の顔は少しいかつい。そのせいか何かあるたび、俺が悪いと疑われる事も多々あった。


 小学生の時同じクラスの男子の給食費が入ったいわゆる給食費袋が無くなった。あの頃は今みたいに振り込みではなく手渡しだった。当然疑われたのは俺だった。クラスでも浮いていたしな。豊和はそんな俺を気にせず、むしろ俺にしか話し掛けて来なかった位だ。そして、


「直弘君に決まっているよ!」


 俺はいつもの様に黙り込んでいた。言っても無駄だと悟っていたからだ。我ながら達観した考えの可愛くない小学生だったな…。


「何言ってんだよ!証拠はあるのか?」

─豊和が真っ先に反論。


「何だよ!証拠って!顔見たら分かるだろ!皆もそう思うよなぁー?」

「「「「「そう思う!!!!!」」」」」


「はぁ~、ふざけるな!何言ってんだお前等?直弘が盗ったところ見た奴居るのかよ?憶測で判断するんじゃねぇよ!」


「そんなの…」「顔見たらアイツしか…」

「「「見てないけど…」」」


「何だよ豊和!アイツの肩なんか持ちやがって!良い子ぶんなよぉ!俺のお金が無くなったんだぞ!」


「だからお前が忘れただけだろ?ちゃんと調べてから言えよ!」


「良いんだ、松山。いつもの事だから…」

「良くない。全然良くない。あの馬鹿に疑われてるんだから!」

「誰が馬鹿だよ!」

「お前だよっ!」


 そこから豊和と馬鹿は取っ組み合いの喧嘩に発展。余裕で喧嘩には勝っていたけど先生にはどんな理由があっても喧嘩してはいけないと怒られていたっけ。そして結局その騒動は馬鹿が自宅に給食費袋は忘れていただけの事だった。馬鹿は親と一緒に俺の所に謝りに来たけどどうでも良かった。俺を疑わず俺の為に怒ってくれた豊和とより仲良くなったのだから。


 昔の事も思い出しながら談笑していると麻季から連絡があった。勝手に早退して1人で見舞いに行くなんてと小言を言われた。麻季と付き合えたのも豊和のお陰だし…な。


「そろそろ帰るわ!麻季の小言が増えそうだから、ご機嫌とらないとな!」


「確かにな。麻季も怒ったら怖いからな」

「だな!あっ、今のは内緒だぞ!約束だ!」

「了解!じゃあ外迄運動がてら送るわ!」


「ここで良いぜ!」

「いや、体が鈍ってるからな」

「…分かった。サンキュー!」

「俺こそありがとうな」


 豊和は俺の姿が見えなくなるまで見送ってくれていた。だからその後、豊和に何かあったんだ。仁多野や波多野から聞いた話では茶道先輩が入院している豊和に護衛を3人付けて居たらしいのだが3人共気絶していたらしい。病院に付いてる防犯カメラも作動していなかったという事だ。


 俺も必死に豊和の行方を捜していた。学校なんか行ってる場合ではない。麻季も一緒に捜してくれている。仁多野や波多野、皆必死に手掛かりを見つけようとしていた。とにかくなんでも良いから無事に帰って来てくれよ心友。出来れば俺がお前を捜して見付けてやるから!

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