第4話入学式

『──で、あるからして勉強にスポーツにしっかりと励み心身共に成長される事を目標として下さい。また、今年度は男性が3人も我が校に入学、通う事になりました。男性を尊重し、節度ある学校生活を送って下さい。以上です』


『校長先生からの新一年への祝辞でした。続きまして我が校の生徒会長須藤真冬からの祝辞』


 壇上に凛とした表情でサラサラとした綺麗な髪を靡かせながら向かうのは我が校の生徒会長だ。とても綺麗な女性。それもその筈…彼女はこのゲームのヒロインだ。


『生徒会長の須藤真冬です。今年は男性が3人も入学するという事で皆さん浮かれている部分も多々あると思います。しかしながら学生の本分は勉学。勿論勉学だけではつまらない高校生活になってしまいます。それではモチベーションも保てない事でしょう。勉強にも恋にも一生懸命頑張れるような人を目指して日々励む様にして下さい…』


 生徒会長の話が続く中、式に遅れて一年生の列にコソコソ入って来る人影。人影は俺の横の席に座る。主人公だ。何やってたんだ?気にはなるものの今は式の最中。話する機会があれば聞いてみるか。その後はつつがなく式は進み入学式を終える事が出来た俺達は教室へと戻る。それにしても男ということだけで女性の視線が凄いものだ。廊下を歩くだけで皆獲物を刈る様な目でこちらを見てくる。先生達も同じだな。それだけ男性との出会いが少ない世界なのだろう。


 ふと辺りを見渡すとちゃんと俺の護衛官の双子の姿。距離を保って片手は銃をいつでも抜ける様に構えてピースして存在をアピールして来るのが分かる。銃といっても麻酔銃らしいが…。下手したら小学生が西部劇の真似事をしているみたいに見えるな…。


「お姉ちゃん。豊和君が私を見てるよ/////」

「馬鹿ね。私を見てるのよ」

「お姉ちゃんみたいな幼女を見るわけないじゃん」

「アンタも私と瓜二つでしょうが!何言ってんの!」

「私の方が1センチ胸が大きい」

「くっ、対して変わらないじゃないの!私達に胸なんて不要よ…」

「…ゴメンお姉ちゃん。私が悪かったよ。胸の話は止めよう。私達ペッタンコシスターズだもんね」

「…言ってて悲しくならない?」

「…なる」


 そんなやり取りをしている2人は放って置くとして、「「まさかの放置プレイ!?」」

…何か言ってるが無視するとして、俺は2人の後ろに居る女性に視線を向ける。2人と視線が交差する。赤髪と茶髪の女性…残りのヒロインの2人、茶道愛美と赤井美麗だ。彼女達もやはり居るんだなと思いながらその場を後にした。教室に着きと席に着くと同時に今日は自由時間という事を知らされた。自由な学園生活だなと思いつつ男性陣に視線を向けると直弘も主人公も女性に囲まれている。こりゃあ男同士話すのは無理そうだな…。それを麻季が物凄い形相で見つめているのが気に掛かるが見なかった事にしよう…。あれは後から直弘大変そうだなと心からの合掌を贈る事にしよう。主人公は流石主人公というところか。女性陣がマジで群がっていやがる。う、羨ましくなんてないんだからね…。


 席に座っている俺の視界が少し暗くなる。光が遮られたからだ。俺の所にも女性達が来たのだ。俺だって男だ。チヤホヤされたいと少しは思う…実はかなり思っていた。顔を上げ見上げると……何故だ。どうして俺の所に彼女達が?そこには5人のヒロインの姿。接点なんて無かったよな?何か用事があるんだよな?驚く俺に彼女達は次々と喋りかけて来たのだ。


「私は須藤真冬。この学校の生徒会長をしているわ!」

わたくしは茶道愛美。二年生ですわ」

「アタシは赤井美麗。二年生よ!」

「ボクは君と同じクラスの今野唯。宜しく」

「私も同じクラスの中野遥だよ。宜しくね」


「あ、はい。宜しく…です?」


「ふふっ。貴方って面白いのね」

「ユーモア溢れる御方みたいで安心しましたわ」

「フン!当然よね!」

「君はやっぱり面白いね」

「何で疑問系なの?」


「…ところで何故?何かしちゃいましたか?」


「「「「「私(アタシ)(ボク)と付き合って (欲しいの)(下さいまし)(くれないかい)!!

!!!」」」」」


「えっ!?」


「コホン!貴女達も?」

「ということは貴女もですのね…」

「アンタ達もなの!?」

「なるほど…恋敵ライバルは多い…か」

「負けないんだから!」


「「ちょっと待ったぁー!!」」


(俺のセリフだろうけど今度は何だ?何が起こっている?)


「何…貴女達?」

「何よアンタ達!」

「豊和には女性と付き合うのはまだ早いので出直して下さい!」

(…深雪よ、俺だって女性と付き合ってみたいんだぞ…)

「深雪ちゃんの言う通りだよ!」

(何故だ…幸子!?)

「あら、お付き合いするのにお二方の許しは要らないと思いますわ」

「そうだね。先輩の言う通りだよ」

「そうだよ!唯の言う通りだよ!」

「だ、だって…豊和と付き合うのは私だもん!!!」


「はぁ───────っ!!!深雪、お前何言って…」


「豊ちゃんは私と深雪2人の物だから!!」


「幸子お前まで何言ってんの!?しかも俺の事、物扱いかよ!?」


「「豊和(豊ちゃん)は黙ってて!!」」


「ぐっ…」

(何故俺は蛇に睨まれたカエルの様なんだ…)


「そう…貴女達もなのね」

「アンタ達もコイツを好きって事よね?」

「「そうだよ!幼い頃から想っていたんだから!!」」

「なにぃぃ─────!??」

「彼…メチャクチャ驚いてるよ?」

「「豊和(豊ちゃん)鈍感だから…」」

「「「「「…あー…」」」」」


「皆そこで納得しないでくれ!それに話に付いていけねぇよ!とにかく待ってくれ!まず1人ずつ話をさせてくれ!まずは生徒会長から…」

「いいわよ。何でも聞いて!」


─俺は1人1人話をしてみる事に。主人公がメッチャ俺を睨んでるのは気のせいでは無いだろう…。一体何故こうなってしまったのか…。次回、『彼女達の気持ちにズームイン』なんてな…。








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