第3話渡さない
俺達は帰りの準備を済ませ下駄箱へ。幸子も深雪も家が近所の為、中学の時に深雪が引っ越しして来てからは3人一緒に登下校している。
「…だったら本当にさっきの子達は今のところ、何でも無いし何も思って無いって事でいいのね、豊ちゃん?」
「クドイ!」
「…幸子は心配してるだけだと思うよ?」
「何を?」
「豊和があの子達にモガモガモガモガ…」
「深雪は黙っていようね」
「…背後に周り口を塞ぐとは流石だな。幸子。流れる様な素晴らしい動きだったぞ…」
「そんなの褒められても嬉しくないからね!」
「ぷはっ、幸子、豊和の言う通り格闘技や暗殺者の才能あるわよ、間違い無く!」
「そんな才能いらないわよ、もぅ!!!」
「じゃあ、この後はいつもの様に3人で甘いモノでも食べに行きますか?」
「そうしようか!!」
「俺はパス!」
「「何でよっ!!」」
「早く帰れるのは今日だけだぞ。俺はゲームを今日は満喫すると決めている!」
「「却下!!良いから行くの!!」」
「くっ!はぁ~、分かった分かった。行けば良いんだろ、行けば…」
「私達美少女とある意味デート出来るんだから良いじゃない!ねぇ、幸子?」
「そうそう!」
「お前達が可愛いし美人なのは周知の事実だけど自分で言うなし!」
「「…っ!?!?」」
「おい。そんなに照れるなら最初から言うなよな!こっちが何かむず痒くなってくるだろ!」
「べ、ベべべべべ、別に私は…」
「そ、そうだよ。急にそんな事口にする豊ちゃんが悪い…」
「…まぁ、いいか。じゃあ行くか?」
「あ、ボクも行くよ!」
「私も行くよ!」
「あ~、唯と遥のクラスももう終わったのか?」
「もうボクの名前を呼んでくれるんだね豊君!」
「嬉しいよ。豊和君が名前を呼んでくれるなんて…」
「名前で呼んでと言ってたよね?ちょっ…お、おい…」
えっ?このヒロイン達距離感バグってるよ!自然と腕を組んで来るなんておかしいからね。腕に柔らかい感触当たっているからな!それにしてもこの感触ホントにヤバいなコレは!ずっと堪能したくなる。そして俺の後ろでしれっとお尻をつねるんじゃない幸子!ってお前もかよ深雪!痛いから、マジで痛いから止めような!!腫れるから…絶対青くなってるよ…トホホ…。
「今日は私達3人で行きたいので日を改めて貰えますか?」
「そ~そ~。今日は色々豊和に聞きたい事が一杯あるので遠慮して欲しいかななんて…」
「う~ん。そう言われると確かに。色々と急ぎ過ぎたかもね。《僕達》。」
「そっかぁ。分かったよ。今日はお2人に豊和君をお返しするとしますか。でも…」
─チュッ。
「「「あ───っ!?!?!?」」」
それは誰も予想出来ない唐突な出来事。視界の端に映るのは目を瞑った遥の染み1つない綺麗な小顔。鼻腔には甘い花の様な香り。頬っぺたに柔らかいプルンとした感触。
「私は本気だから!豊和君は誰にも渡さないからね?唇と唇は付き合った時に取って置こうかな…なんてね!大好き♡私は豊和君が大好きだから♡じゃ…じゃあ…また…ね!」
遥が顔を赤く染め上げながら走り去って行く。どうして俺を?遥は主人公の幼馴染みで確か2人は惹かれ合ってたんじゃあ…それで…それなのに…。けれども今は主人公は居ない。彼女はモブの俺を好き?頬っぺにキスされた場所には先程からずっと残る柔らかな感触。ごちゃごちゃと脳内が入り乱れる。
お尻の痛みは増すばかり。つねりながら捻るんじゃないよ、幸子に深雪!俺は何もしてないだろ?ホントお前等は何に怒っているんだっつーの?
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