第3話必ず
急に不思議な光が辺りを照らしたと思ったらいつの間にか公園に居る。見知らぬ公園。辺りには定番のブランコ、滑り台、砂場。人は1人も居ない。辺りを見渡すとどうやら住宅地の中の小さな公園なのだろう。
「さてと…これが豊和が住んでいる世界か?向こうとあんまり変わった所はないみたいだけど…」
『聴こえるか?これが私との最期の会話になるだろう。そちらで困らぬ様に限度額無限のカードを用意してそなたの財布に入れておる。生活には困らないだろう。サインは名前を書くだけでよいのでな』
「何から何までありがとうございます神様」
『神様と大層なモノでは私は無い。そんな存在ならもっと…。そんな事を言っても今更だな。豊和はその街の総合病院に入院している。意識不明から目覚めた直後だ。直弘、そなたの事を憶えていないし、人を信用も出来ない状態だ。願わくば救ってやって欲しい。そろそろ限界だな。豊和の命はいつ尽きるか分からん。そなた次第だ』
「必ず…アイツに生きたいと思わせますよ」
『…そう…願っておるよ……』
「本当にありがとうございました神様。俺の中ではやっぱりこんな事出来るのは神様だと思うから…」
『……』
会話を終えた俺は住宅街を抜け通り道にあったコンビニで総合病院の場所を尋ねた。どうやらここからそう遠くないみたいだ。店員の方が親切で地図迄書いてくれた。地図通り向かうと1、2、3…五階建ての白い大きな建物。十字の赤いマーク、そして総合病院と書かれている。建物の中に入り病院迄来たは良いが俺を憶えていないならどう接触しようか考える。
(どうすっかなぁ~。……小学生低学年の時の同級生を装うしかないか?)
受け付けで豊和の名前を告げ、見舞いと称し入院している部屋を聞いた。どうやら五階の個室にアイツは居るみたいだ。豊和に漸く会えると心は踊っていたのだと思う。例え俺の事を憶えていなくても。だってそうだろう?もう会えない筈だった心友との再会なのだから。部屋の前には松山豊和のネームプレート。ドアは開いており声を掛け中へと入る。
「豊和?」
部屋の中は色々な機械が置かれていた。多分、今朝迄使われていたのだろう。酸素マスク等もあるのが分かる。
「…誰?」
ベッドに腰掛けているのは豊和。俺の心友。でも…俺の中の豊和とは至る所が違っていた。頬は
「…何か用?」
「…ぁ…ああ、すまない。見舞いに来たんだ。風の噂で入院していると聞いたから。俺の事憶えていないか?」
(何があったんだよ豊和?)
「…誰だか分からない。ボクの見舞いなんて来る人は居ない筈だし」
「俺だよ。小学生の時同級生だった根来直弘。覚えていないか?俺は憶えているよ豊和の事」
「…ゴメンね。覚えてない。小学生の時もほとんど学校へは通っていなかったから…」
「…とにかく入院していると聞いた以上俺は毎日豊和の見舞いに来るから!」
「…来なくて良いよ。君は何が狙いなの?」
「狙いって何だよ?」
「ボクに媚びっても何も無いし、何も得られないよ?兄達なら別だろうけど…。それともアイツ等にボクの面白いどうがでも撮ってくる様に言われたのかい?だとしたら目なんか覚めない方が良かった…な」
「何言ってるんだ?アイツ等って誰の事だ?」
「…違うのなら良いよ。わざわざ話す事でも無いしどうでもいいよ。それに今朝方目覚めたばかりだから体が怠いんだ。帰って貰ってもいいかな?」
「!?…そうだよな。目覚めたばかりだから体がキツイよな。また明日来るから…ちゃんとゆっくり話そうぜ」
「……」
「またな」
「……」
俺は何も答えない豊和を背に病院を後にした。病院近くのカードが使えるホテルに泊まる事に。何があったのかは分からない。アイツ等って言ったのも気になるし、兄達と言ったのも気になる。何にしてもやる事は変わらない。俺は必ずお前を救ってみせるからな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます