第一部

第1話えっ?

「私と付き合ってくれるわね!」

「アタシと付き合いなさい!」

「わたくしとお付き合い下さいまし!」

「ボクと付き合って欲しい!」

「私と付き合って下さい!」


─5人の美少女が同時に俺?に言ってくる?


「……えっ?」


「「「「「貴方はどうするの(かしら)(のよ)(のですか)(だい)?????」」」」」


 何故?俺の目の前であり得ない事が起こっている。俺はモブキャラの松山豊和まつやまとよかずだ。もっと言うと転生者。俺が好きだった恋愛シミュレーションの『ときめいてフォーエバー』の顔も出て来ないキャラの1人に転生した。完全に枠外。こういうゲームって脇役迄良い顔してるから俺も顔は普通だとは思うが。


 えっ!なんでゲームの中だと分かるのかって?それが不思議なんだよね。このゲームをしていたのもゲームの中に転生したのも何故か分かる。分からない事といえば前世の自分の事。名前とかどういった人生を過ごしたのか、死んだのかは全く分からない…。


 先日突然その事に気付いた訳だが前世の記憶とこの世界の俺の記憶は上手い事1つになっているみたい。ゲーム本編はこれから始まる予定。だって今日はこのときめいて高校の入学式。物語本編はこの二週間後に主人公が転校して来てそこから始まるんだぜ!俺はモブだから最初から居るのだろう。


 体育館での入学式を終えた生徒達は各クラスに戻り、先生の話が少しだけあった後この日は解散、自由になった。俺はこのクラスで新しく出来た友達と教室に残り談笑していたんだ。そしたら5人の美少女が俺の元へとやって来て冒頭へと至る訳だが……待ってくれ!貴女達5人全員ゲームのメインヒロインだよね?俺は1人1人顔を見て確認する。


 俺の正面左から腰迄ある銀髪ロングヘアーの美少女。160センチ。細身でCカップの胸を持ちスタイルが良くこの学校の生徒会長。三年生の須藤真冬すどうまふゆ


 次に赤髪ミディアムヘアーの美少女。158センチ。Bカップの胸を持ち細身。スラッとした足がとても綺麗なツンデレキャラ。二年生の赤井美麗あかいみれい


 真ん中が蒼い髪のショートボブの美少女。162センチ。Aカップの胸を持つ。細身でしっかり引き締まっている。スポーツが得意な僕っ娘キャラ。同級生の今野唯こんのゆい


 次が黒い艶のある髪をピンクの大きめのリボンでポニーテールにしている美少女。155センチ。Bカップの胸を持ち細身。主人公の幼馴染み。同級生の中野遥なかのはるか


 最後がセミロングの茶髪の美少女。150センチ。5人の中で一番背が低い。Aカップの胸を持つ細身の大金持ちのお嬢様。二年生の茶道愛美さどうまなみ


 うん。間違い無く皆このゲームのヒロインだね。えっ?何で身長やら胸のサイズ迄分かるのかって?そりゃあ、知ってるよ。ゲームのヒロインキャラ紹介に載ってたから。とにかく俺は5人と接点は無いので誰かと間違えているのかな?しかも聞き間違いだよね?付き合ってなんて…。


「えっとぉ、人違いでは?」


「松山君でしょ!」

「豊和でしょ!」

「豊君だよね!」

「豊和君だよね!」

「松山様ですわ!」


 5人共間違い無く俺の名前を………って、

あれ…おかしいな。みんな俺の名前を口にしてる。ヒロイン達に何処かで会ったっけ?いや…………無いな!俺はこのゲームを極めている。何処かで会ったのならヒロイン達の事を忘れる訳無い!多分…。


「え~と、初対面ですよね?」


「………そう…ね」

「………そう…よ」

「………そう…ですわ」

「………そう…だよ」

「………そう…だね」

 

「…ですよね?」

(今…何かがあった様な?それに…表情が少し曇らなかったか?)


 って、やっぱり初対面じゃねぇかぁー!そりゃあ、ヒロイン達とこうしてお喋り出来るのは嬉しいけども、知り合った奴等なんか関り合いたくないのか秒で去って行って遠くからこちらを見ていやがる。くっ!薄情者達がぁー!俺もそちらへ行きたい。今すぐに!しかしこの5人の圧が凄い。何故だ?そして隣の席からジト目でこちらを見ている俺の幼馴染みの視線がやけに俺に突き刺さる!


「…なんだよ、幸子?」


「…別に!(怒)」


 めっちゃ不機嫌だし!金髪ボブヘアの髪先を指で弄りながらこちらの様子をうかがっていやがる。何でジト目かは分からないが助けろよ!いや、助けて下さい…。


「あ~取りあえず人違いでは無いという事は分かりました。それで会った事もましてや話した事も無い俺に何の御用かもう1度お訊きしても??」


 俺に本当に何の用なんだ?ゲームに登場しないモブだぞ俺は!主人公が転校してきたら主人公と仲良くなって誰を選ぶのか等、恋バナに花を咲かせたり恋愛のアドバイスをしたりしようと思っていたのに……。



 「「「「「じゃあ、もう一度…」」」」」


「私と付き合って欲しいの!!」

「アタシと付き合いなさいよ!!」

「わたくしとお付き合い下さいませ!!」

「ボクと付き合って欲しいんだ!!」

「私と付き合って下さい!!」


─5人が同時に真剣な表情でそう言ったんだ…。

 

「えっ?」


 やっぱり聞き間違いじゃ無かったぁぁぁ───────!どういう事?俺の身に何が起こっているんだぁー!主人公よ!モブの俺にいったい全体どうなっているのかをどうか詳しく教えてくれ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る