第21話…ヤバい

「ただいま~」


し~ん………。


アレっ…??今日は皆居ないのか?どこかに行くとは聞いて無いし母さんはまだ仕事だろうし。電話しようかと思ったが時間はまだ夕方の4時。その内帰って来るかと思い手洗いうがいを済ませた俺は自室へと向かう。カバンを机の上に置きブラウスのボタンを外したその瞬間、


バチチチチチッ!!!


 首筋に何かが当てられ俺は床へと倒れた。痺れた様に体は動かず意識が遠くなる…。しまった。完全に油断してた。誰かが潜んでいた?キャロルと渚は無事なのか?自宅で襲われるとは思って無かった…………




******


「……んっ……ここは?」


「目が覚めたみたいね豊和?」


後ろから声がする。声からして女性だろう。少し声が曇った様に聞こえる。俺の事を知っているのか?体を動かそうしても動かない。意識が少しずつハッキリとしてくる。どうやら椅子に縛られているみたいだ。辺りを見渡すと見覚えのある物ばかり。間違い無く俺の部屋だ。


「姉さんや妹は何処だ?無事なのか?」


「心配しなくても大丈夫よ…」


「本当かっ?姉さんや妹に手を出したら絶対に許さないからな!」


「っ……分かったわ」


「俺は何されても構わない。姉さんと妹を無事に返してくれよ?絶対だぞ!」


─気配が近付いて来る。俺の視界に犯人の姿が写り込む…。間違い無く女性。なぜならソイツはプロレスラーが着ける様な覆面をしているものの、体には水着しか着けていない。


「…なるほど。変態…か?」


「失礼ね!変態じゃないわよ!」


「変態以外の何者でも無いだろうが!おかしな覆面に水着……その水着姉さんが着けていた…」


「フフフ…どう?似合うでしょ?欲情した?」


「するわけ無い!それよりも姉さんと妹は無事なんどろうな変態!姉さんと妹と話がしたい!」


「…………それはまだ駄目よ…」


「何が目的なんだ?」


「私の体を見ても欲情どころか姉と妹の心配とは…まずはこれを見るのね!」


 女が用意したのはポータブルDVDプレーヤー。どうやら映像を見せるつもりなのだろう。何かのディスクを入れ胸元の位置にモニターを持って来ると女は再生ボタンを押した。姉さんと妹が映っているのか?2人に何をした?何が映っているんだ?不安が募る。頼む2人共…。無事で居てくれ!


「んっ……はぁはぁ…とよか…ず…」


「姉さん!姉さん!」


俺は必死に動かない体を動かそうとする。虚しくガタガタと椅子の音が響く。女が見せた映像にはキャロル姉さんの顔が…。汗をかいて苦しそうに息も絶え絶えに俺の名前を呟いている…。


「姉さん姉さん!くそっ!姉さんに何をしたぁー!あんな…あんな苦しそうにぃ!姉さーん!姉さんを今すぐ解放してくれっ!頼む!」


「……あっ……豊和……私…もう…」


「…もう止めてくれっ!姉さんのこんな…こんな苦しそうな表情…見たくな…い」


「駄目よ!しっかり映像を見なさい!もうすぐ良いところなのだから!」


「…くっ……姉さ…ん」


「これ以上は……はぁはぁ……豊和…」


ホントに苦しそうだ。映像の中の姉さんが心配で堪らない!


「もう…駄目ぇ…………いぐぅ…」


姉さんの声にならない様な心からの叫びの様な悲鳴なのだろう…。よっぽと酷い拷問を受けているのだろう……。俺は止めどなく溢れて来る涙に頬を濡らした…。


「ちょっ!?何で泣いてるのよ?」


「…お前が俺の大切な姉さんに酷い仕打ちをしてるからだろうが!血も涙も無いのか?姉さんこんなに苦しそうに……」


「ほらっ!見てっ!よく見て!姉さん苦しんで居ないでしょ?」


─姉さんの顔だけを映していた映像が切り替わり姉さんの全身が写し出される。裸だ…。


「…姉さんを辱しめたのか?」


「ち、違っ!!」


「よくも姉さんをーっ!俺には何しても構わないから姉さんを…」


「あ~も~!黙ってよく見て!!!」


これ以上俺に何を見ろと…苦しめたいのか?それが目的なのか?俺がいつの間にかコイツの恨みをかっていたのか?すまない姉さん。俺が…俺がいなければ…映像の中の姉さんは………



はっ!?


「ふぅ~漸く気付いたのよね?」


「何だ…これは?」


「アンタの姉さんの1人情事の映像だけど?」



何を言ってるコイツは?


「えっ?!?」


「だ・か・らぁ・私の1人情事の映像って…「わた…し?」……ヤバっ…!?」


「…姉さん?」


「……」


「姉さんなんだろ!何してんだアンタは!覆面を今すぐ取ってこの縛っている紐をほどけ!」


「…怒らない?」─覆面を取り機嫌を伺う様に俺を見ている姉。怒るに決まっている。


「早くしろ!」


「怒ってるから嫌(プイッ)」


「プイッじゃないんだよ!何でこんなことしたんだ?」


「豊和の豊和をアンタの高校の全員が皆見たって言ってたから!」


「馬鹿なのか?馬鹿だったなうちの姉は!」


「大きくなってからは見た事無かったから。たまにテント張ってるのは知ってるけど…」


「…姉さんホントに馬鹿なの?」


「(ムカッ!)良いから弟は黙って姉の言う事を聞きなさいよ!」


姉はそういうと俺の下半身に身に付けている物を脱がし始めた。


「おい!馬鹿姉貴!止めろぉ!」


「止めろと言われて止める馬鹿は居ないわよ!」


「頭イッテルからな!とにかく止めろぉ!」


俺の叫びは虚しく姉には届かない。


「ふぁっ…!?これが…豊和の豊和なの…ね。危うく意識が飛ぶところだったわ…」


くっ……姉に何故大事な所を俺は見られているのだろうか?


「は、早く本当の姿を見せなさい!私知ってるんだから!」


「そんな第二形態みたいに言われても…」


只でさえ先程の件で怒りが勝っているというのにそんな状態になる筈もない!


「犯罪だろ!馬鹿姉!」


「弟にするのは犯罪じゃないの!」


「頭イカレテルからな馬鹿姉貴!」


「また馬鹿って……………良いわ!私の本当の姿を見てアンタも本当の姿を見せなさい」


そう言って脱ぐ姉。目を瞑る俺!


「見なさいよ!姉の言う事聞けないの!」


「聞く訳無いだろ!姉さんとは暫く口聞かない!」


「っ……ばかぁー!」


姉は部屋を飛び出した。俺は椅子に縛られ下半身は丸出しの状態。ったく、どうしろというのだ。あの姉には困ったものだ。そして…話はこれだけでは終わらなかった…。










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