第2話テラス
真冬先輩が泣き止むのを待ってお風呂を一緒に出た俺は恥ずかしながらも身体を拭いて貰い着替えも手伝って貰った。真冬先輩は髪を乾かしてから部屋へと戻るとの事なのでお休みの挨拶をして俺は屋敷のテラスへと足を運ぶ。火照った身体を涼ませる為だ。
テラスに置かれている椅子へと腰掛け星を見上げる。今日も星が輝いて綺麗に見える。星なんかは現世と変わらない。ふと携帯を取り出すと深夜1時にも関わらず親友の直弘から鬼の様にメールと着信。また掛かって来た…!
「…もしもし」
『おい!豊和!電話もメールも音沙汰無いからこっちは心配したんだぞ!』
「悪い…本当に悪かった。ただ、こっちも色々合ってだな…」
『言い訳するんじゃねぇーよ!幸子なんか麻季にちゃんと連絡していて俺は麻季からお前の事聞いたんだぞ!』
「麻季から聞いたんなら良いじゃねぇか?」
『良くねぇからな!ちゃんとお前の口から聞きたかったんだよ。で、腕の傷は?』
「二週間で抜糸だよ。聞いてるだろ?」
『…本当は?』
「…あ?」
『麻季にも言わねぇから俺にはちゃんと言え!分かるんだぞ!何年お前と親友やってると思っているんだ?』
「…そうかい。サンキューな!親友!」
『…で、どうなんだ?』
「…リハビリすれば元通りになるだろ?」
『ほら、見ろ!全然大丈夫じゃねぇじゃねーか!』
「…何で分かった?もしかして他の子も気付いているか?」
『いや、気付いて無いだろ?』
「じゃあどうしてお前は気付いたんだよ?」
『…なんとなくだな』
「お前はオカンか!」
『医者にも口止めしてるのか?』
「ああ、両親にも他の子にも心配掛けたくないし、特に真冬先輩には責任を感じて欲しく無いから。分かるだろ?真冬先輩には笑っていて欲しいだろ?まぁ、真冬先輩だけで無く女の子には笑っていて貰いたいじゃん?」
『だな!分かった!俺がお前を補佐してやるから何でも言えよ!』
「なぁ、直弘…」
『どうした?』
「一度しか言わねぇから…お前が親友でお前がこの世界に居てくれて本当に良かったよ親友!」
『けっ!愛の告白かよ!』
「うっ!だから一回しか言わないと言っただろ?」
『…そんなの俺も思っているよ!親友』
「けっ!愛の告白かよ!」
『おい!仕返しかよ!』
「『ハハハハハハハ!!』」
『あ~笑ったな!そういえば皆で暮らす様になったんだってな?』
「ああ、ほぼ無理矢理だろ、あれは」
『まぁ、良いじゃねぇか!この際だ。目指せ!ハーレム王だろ!』
「馬鹿野郎!そんな不埒な事…」
『そうやって一緒に暮らしているんだし、何より泣かせる子を出したくないだろ?』
「………」
『俺にも言えない理由でもあるのか?』
「あ~、そうだな。直弘には言っておいてもいいか。怖いんだ」
『怖い?』
「ああ、何故だか怖いんだ。何かあった訳では無いんけどな」
『そうか』
「自分でも分からないんだけどな」
『俺が言えた立場では無いけどそのうち…そうだなぁ…言うなれば心が何らかの理由で凍っていてお前の心を溶かしてくれる子が必ずいると思うぞ。そこに集まってる子達の中の誰かか?それとも全員か?…または他の誰かか?必ずな!』
「…ありがとう直弘。じゃあそろそろ寝るわ!」
『ああ、明後日な!豊和!』
「お休み直弘」
「おう、お休みぃ~」
親友とは良いものだな。俺はそんな事を思いながら部屋へと戻って行った。
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