第二部

第1話ドキドキお風呂

 とうとうこの時間が来てしまった。お風呂だ。この屋敷には大浴場のお風呂が1つだけ。全て計算されてるかの様に感じるのは俺だけかな?明日は一応学校は臨時休校だし、現在の時刻は丁度日付が替わった0時。屋敷は静まりかえっている。もう皆お風呂にも入っていたみたいだし、疲れて寝ている筈…。静まりかえった屋敷の中を音をたてない様に大浴場へと移動。


 くっ、大浴場の脱衣所で俺は苦戦していた。下は簡単に脱ぐ事が出来たのだが上服が首に引っ掛かってしまった。左手が使えないのは不憫なものだな。何とかTシャツを脱ぎ後は肌着だけ…。またしても首に引っ掛かる。はぁ~、面倒くさいものだな。右手で引っ掛かっている部分を掴み脱ぎに掛かる。スッ~と引っ掛かりが無くなった。


「もう!私のせいで怪我したんだから、ちゃんと声を掛けなさいよ?」


「あっ、どうも…って…………んんっ!?」


 振り返りビックリして声を出そうとすると素早く口を手の平で塞がれる。真冬先輩だ。視界には真冬先輩の顔、甘い花の香りがする程距離が近い。それこそキスする何秒前かの様だ…。真冬先輩のみずみずしい唇に目が釘付けになる。あの時、真冬先輩にキスされた感触が鮮明に思い起こされ頬が熱くなる。


「し~!豊和君がお風呂に入っているのがバレたら他の子が突入して来るわよ?それは不味いんじゃない?今から手を離すけど良い?分かっているわね?」


─コクコク!首を縦に振る。


「じゃあ、一緒に入りましょうか♡」


 手を離し、真冬先輩が後ろにピョンと距離をとる。俺の目はまたしても真冬先輩に釘付けになった。ピョンと跳ねた時に揺れる2つの双丘とピンクの可愛い突起物。何も着けていない身体は芸術的ともいえるきめ細かい白い肌……。


裸じゃねぇかぁ──────────っ!?


 危うく大声で叫ぶ所だったぞ。よく心の叫びで我慢出来たな俺…!そんな俺を誰か褒めてくれ!


「早く行くわよ♡」


 浴場の洗い場へと手を引かれ椅子に座らさせられる。


「あのね、そのね、豊和君。その~、私の事を見て大きくしてくれるのはう…嬉しいんだけど…隠してくれると助かるか…も」


「っ!?すいません…俺っ」


 慌てて股間を隠す。真冬先輩に見とれて隠すのを忘れるなんて…くっ、恥ずかしい!!一生の不覚だ、見られてしまった…。


「もう~、そんな顔しなくてもいいの!私は嬉しいわよ。こうなっているのは…だって、私に反応してくれたんでしょ?」


「…すいませんすいませんすいません」


 俺も男だからね?思春期でもあるし、皆貞操観念しっかりと持って欲しい。襲われても文句は言えないぞ?


「じゃあ、背中から洗うわね!ま…前は洗えるかしら/////ど、どうしてもというなら洗ってあげるけど…」


「大丈夫です。問題ありません。というか洗って貰ったら問題しかありません!」


「…そうよね。じゃあ、始めるわね」


 真冬先輩は背中から優しく洗い腕、胸へと向かう。胸を洗ってくれるのは良いが俺を包み込む様に洗ってくれるので肌は密着。大変柔らかい感触が背中に直に伝わってくる。息子が冷静になる時間が欲しい。

(煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散!!)


 どれ程の苦行だったか分かるか?それでも何とか天国とも地獄ともとれる時間が漸く終わり俺達は湯船の中へ。


「…迷惑だったかしら?」


「あ~いえ、左手が動かせないので助かりましたけど未婚の男女が一糸纏わぬ姿で一緒に風呂とかは流石にマズイとは思いますが…」


「…豊和君はやっぱり変わらないね」


「…先輩それはどういう意味です?」


「こっちの話♡もう少しだけそっちに行くね!」


「ちょ…真冬先輩ぃ!?」


 コテンと首を俺の肩へ…。


「今日は本当にありがとうね」


「いえ、真冬先輩が無事で良かったですよ」


「あの時は本当に怖かった…。襲われていたら今ここでこうしている事は絶対に無かったもの…私は…わだじは…」


「真冬先輩…今は2人だけですよ…。泣いても誰も見てませんしお風呂ですから泣いた事は分かりませんよ?」


「……ぅぇぇええぅ…怖がった…ううっ…凄くごわがっだのぅ…ぇぇぇ…んん……」


 本当に真冬先輩が無事で本当に良かった。自分の腕の傷を見て安く済んだものだと心から思えた…。この傷は真冬先輩を守れた証なのだから……。

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