第34話アタシのせいだ…
あの後、豊和は病院に運ばれ緊急手術を受けた。茜から連絡を受けた愛美が全て手配してくれていた為病院の受け入れ態勢も完璧だった。その為手術も無事に終える事が出来た。意識はまだ戻っていない。病室にはアタシと真冬が付き添っている。アタシ以外は交互に付き添う事になった。病室の中は機械音が響き、それがやけにアタシの耳に入ってくる。
(ゴメン…ゴメンね豊和。アタシなんかを助けて怪我を負わせてしまって…ホントにゴメン!アタシの…アタシのせいだ…アタシがモデルなんて辞めておけばあんな奴に目をつけられる事は無かったのに…)
「私が見てるからそろそろ美麗は休みなさい。怖い目にあったんだし休まないと…」
「…アタシ…豊和の意識が戻ったら…」
「離れるとでも言うつもり?」
「っ…!?」
「分かるわよ。美麗が考えている事は…。私も豊和君が私を助けて怪我した時考えたもの…」
「……だったら…」
「美麗は…離れて生きていけるの?」
「それは…」
「私は無理だった。無理に決まっているわ。恋い焦がれて恋い焦がれて漸くまた出逢う事が出来た。心の奥底迄繋がっていると私は思っているわ。だからどんな事があっても私は離れるなんて出来ないわ…」
「アタシだって、だけど…アタシのせいで…だからアタシは離れないと…」
「私達には誓約もあるでしょう?豊和君とどんなことでも乗りきって幸せにすると心にも決めた筈よね?」
「誓約は…」
誓約は結び直すと口にしようとした瞬間、
「!?豊和君の体が…」─薄く消えかかろうとしていた。
「嫌!誓約は必ず…アタシは必ず守るからっ!果たしてみせるから!だからお願い!!もう言わないからぁ!」
アタシがそう言った瞬間、願った瞬間、直ぐに薄くなっていた豊和の身体は元の状態に戻ってくれた。
「……大丈夫よ、美麗。豊和君…元に戻ったわ。今の事でも分かったでしょ?私達は繋がってるのよ」
「…うん」
アタシ達が誓約を果たせないと豊和は消えてしまうと改めて思い知らされた。不意に握っていた手がアタシの手をゆっくりと握り返される。
「…美麗…先輩?……無事ですか?」
「「豊和(君)!!」」
(目を覚ましてくれた!良かったぁ!)
「私は皆に知らせて来るから、美麗宜しくね!」
気を効かせてくれたのね。ありがとう真冬…。
「頬の…怪我は?」
「アタシは大丈夫!アタシの事なんかどうでも良いの!あの時どうしてアタシを庇ったのよぉ!アタシなんか庇わなければアンタは…こんな怪我なんかしなかったのにぃぃ!」
(こんな事言いたい訳では無い…。なのに…)
握っていた豊和の手がアタシの手から離れアタシの頬に添えられる。
「美麗先輩が無事で…良かっ…たです」
「…っか…ホントに馬鹿なんだか…ら。アタシの心配より自分の事心配しなさいよね!」
「俺は…大丈夫で…すよ。まだ何か眠い…けど…ホントに美麗センパ…いが無事で…良かった。美麗先輩は…大切な人…だから…」
「豊和…好きよ、大好き。アンタはアタシの全てよ…」
「お…れもですよ……ただ…まだ眠く…て…」
チュッ♡
「ゆっくり休んで豊和。目が覚めたらいっぱいキスしよう。そして豊和が…元気になったら愛し合おうよ…」
(もう迷わない。アタシは他に何も要らない。モデルをする時間よりも豊和の傍に居る時間が大事。分かっていた事でしょアタシ!必ずアタシが幸せにしてみせるから!)
「…は…ぃ…」
─豊和が眠るとタイミングを見計らったみたいに皆が病室に入って来た。外で聞いていたのね…全く!でも…皆も話したかったに決まっているのに…。皆ありがとう。そしてアタシは夜が明けると共にモデルを辞めた。
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