第29話不安

 食事もほぼ終わり後片付けをしていたら豊ちゃんが急に何処かへと向かった。すぐには戻って来なかったのでトイレかなと思っていた。昼がご馳走だったから…。


 授業が始まっても豊ちゃんは戻って来なかった。何かあったの豊ちゃん?


私の席は後ろの方なので前の方に座っている深雪も心配しているのが手に取る様に分かる。


 始まって20分位経った頃、他の先生がうちのクラスにやって来た。廊下で何やら話しているみたい。それを見た私は深雪に視線を向ける。深雪もこちらに視線を向けていた。心がざわつき嫌な予感がする。耳に…



─────ピーポー!ピーポー!ピーポー!ピーポー!『緊急車両が通ります!道を開けて下さい!』─ピーポーピーポー!ピーポーピーポー!ピーポーピーポー!ピーポー!…


 救急車!?近く迄来てサイレンが鳴り止む。ここら辺で止まったんだ。先生が戻って来た。


「あ~、ちょっと色々あったみたいで皆悪いが安全が確認されるまで暫く教室から出ない様にしてくれ。色々聞きたい事はあると思うが静かに頼む。またお達しが来るからそれまでこのまま待機してくれとの事だ」


「「「「「「「「…はい」」」」」」」」


「先生!豊ちゃん…松山君が戻って来ていないのですが?」


「悪いな、仁田野。


 今は話せない?やっぱり豊ちゃんに何かあったの?豊ちゃんを今すぐ捜しに行きたい衝動に駆られる。暫くすると救急車がまたサイレンを鳴らし始めサイレンの音が段々遠ざかっていく。


 それからどの位時間が経ったのかは分からない。また他の先生が教室に来て廊下で話をしている…。先生が戻って来た。


「今日はこれから下校する事になった。それと明日は臨時休校となる。後日、しっかりと学校側から説明があるから宜しく頼む。それでは今日はこれで解散だ。気を付けて帰ってくれ!それと仁田野と波多野は帰る準備が出来たら職員室に来てくれ!先生からは以上だ」


「「…分かりました」」



───急ぎ帰る支度をした私と深雪は職員室へ向かう。職員室には黒服を着た人達がチラホラ。先生達は黒服の人達に何か指示されてせわしく動き回っていた。私達が職員室に入って行くと…


「来たか。仁田野と波多野」


「幸子ちゃんと深雪ちゃんも呼ばれたの?」

「うん。遥も呼ばれたんだ?それに唯迄?」

「そうだよ。ボクも呼ばれてね。豊君は先に帰ったのかい?」

「私も豊和君と一緒に帰りたかったなぁ~」

「「それが…」」


「あ~君らを呼んだのには理由があってな、今から総合病院に向かって貰えるか?こちらの方々が病院迄送ってくれる。茶道の関係者だ。本当はもう1人、赤井も一緒の予定だったんだが先に向かったそうだ。詳しい話はこちらの方から車の中で聞いてくれ」


「皆様。詳しい事は車の中で話しますので急ぎ病院へ向かうとしましょう!お嬢様の指示ですので」


「「「「…分かりました」」」」




───私達は車に乗り込み、そこで漸く豊ちゃんの事を聞く事が出来た。襲われた真冬先輩を助け怪我した事。総合病院に運ばれた事。命に別状は無い事。命に別状が無い事を聞いた時、私達は自然と泣いていた。不安と安心が入り交じったからだろう。病院に着いたら憶えて置いてね豊ちゃん?女の子を4人も泣かせたんだからしっかり償わせさせるんだからね!

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