第34話夕方

 皆とは新しく住む家で合流する事となり(俺の意見は勿論無かった)、その日の夕方遅く俺は自分の部屋から持っていく物の選別を片手でしていた。大きな荷物は後程のちほど愛美先輩が手配した引っ越し業者が取りに来てくれるらしい。


 妹の渚も隣の部屋で鼻歌を歌いながら持っていく物の選別をしているみたいだ。今日は本当に色々な事があったな…。もしかしてこの世界はゲームの世界とは違うのかもとこの時の俺は考え始めていたのかも知れない。


 幸子と深雪も家に帰り親を説得後、ここに手伝いに来てくれるらしいが許す訳無いと思う。年頃の男女が同じ屋根の下に住むという事は娘を持つ親からすれば複雑だし、何より男女1対1ではなく、男女比1対9という不埒な関係だぜ?俺が親なら間違い無く反対する未来しか見えない…。そんな事を考えながら持っていく物の物色をしていると…


「やっほ~!豊和来たよぉ~!」


「深雪かぁ、やっぱり反対されただろ?だから言ったんだよ俺は!」


「ううん。しっかり墜として離れられない様に依存させろだって!手段は問わないらしいよ!それに……あのね…ほら…コレもね…

使えって渡されたのこの箱。何に使うかは知ってるけ…ど、穴は開けてるらしいよ……言ってて…恥ずかしくなってきちった…」


 手渡された箱を見てみると『うすうす0.03ミリ』と書かれている…………………。


「せいやぁぁあぁ──────────!」


ピュ────────ン!


「あ~~お父さんとお母さんから預かった大切な箱がぁぁ──!豊和なんて事を…」


 開いてる窓から外に向かって精一杯力の限り右腕で放り投げる!!なんてモノを…。深雪の両親は何を考えているんだ。今度しっかり話をしないとな。しかも穴開けてるってなんだ?自分の娘を孕ませる気満々じゃねぇーか!どうなっているんだよ!


「深雪よ。意味わかってるのか?あの箱の意味が?」

しょしょりはもぢろんそれは勿論。ゴニョゴニョ…」


 はぁ~、絶対分かっていないな?よ~く分かった。


「深雪」


「な、なな何っ突然!?」

─俺は深雪との距離を詰めて行く…。


「どど、どどうしたの?豊和。そんな真面目な顔をしてっ…きゃあ…」


─深雪は後退りしてつまずき体勢を崩しベッドに仰向けに倒れ込む。俺はすかさず距離を詰め覆い被さるかの様に深雪の上に跨がり、右手を深雪の赤く染まった頬へ優しく触れる。


「と、ととととととととよか…ず?」


 潤んだ瞳、倒れ込んだ拍子に外れた髪止めがベッドの横には落ちておりエメラルドグリーンの艶のある髪が真っ白なシーツに広がり普段とは違った妖艶な雰囲気を醸し出していた…。


「…深雪」

「…とよか…ず?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る