第7話お兄ちゃんは渡さない
私は油断していた。お兄ちゃんは恋愛には鈍感だからだ。幸子ちゃんという幼馴染みの気持ちにも気付いてない。お兄ちゃん達が中学生の頃に引っ越して来た深雪ちゃんの気持ちにも気付いてない。誰から見ても2人がお兄ちゃんに気があるのは明白だ。だから油断していたと謂わざるを得ない。
ご飯を食べ終わりお兄ちゃんには自分の部屋に戻ってもらっている。お父さんとお母さんは今日は都合が良い事に家には帰って来ないと連絡があった。明日も朝早くから会議があるらしくビジネスホテルに泊まるそうだ。
私は後片付けをサッっと終わらせると洗面台の鏡の前に立つ。鏡にはピンクの髪を1つに纏めた私が映っている。髪を結んでいるゴムを外し髪をブラシでとかし髪をセット。寝間着に着替えブラはつけない。唇にリップを塗り潤いを与える。そしてお兄ちゃんの部屋に突撃。
─コンコン!
「お兄ちゃん起きてる?」
「ああ、起きてるよ、どうぞ」
─ガチャッ!パタン!
「えへへ、お兄ちゃん。さっきのお話の続きを聞きに来たよ」
「マジ?」
「マジ!ここ座っていい?」
「ああ、どうぞ」
「ありがとう。それで誰からキスされたの?」
(私のお兄ちゃんにキスしたのは誰?)
「うぐっ!直球だな渚は。まぁ、今日会ったばかりの遥っていう子なんだけど…」
「えっ?今日初めて会った子にキスされたの?」
(遥遥遥遥遥遥遥。よし覚えた!要注意人物の名前!)
「ああ。頬っぺたな。ただ…俺は知って…いや、何でも無い。多分気のせいだとは思うんだけど何か向こうは俺の事知ってた様な気がするんだよね…」
「…そうなんだ」
(あれ、お兄ちゃん。今何か言い掛けてたよね?隠し事……違う…何か引っ掛かるけどお兄ちゃん自身確証が無い…そんな感じ…)
「とにかくどういう経緯にしろ女の子が勇気を出して頬っぺたでもなんでもキスして来たんだからちゃんと考えて返事しないとな」
「えっ?お兄ちゃん。付き合う気なの?」
(駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目)
「…もう少し時間を貰わないとな。5人共冗談で言った訳じゃないみたいだから…。俺も色々考えたいしな」
(主人公の事もあるしな…)
「…そっかぁ」
(お兄ちゃんには私がいるのに!)
「あ~もう、こんな時間だぞ!部屋に戻って休め」
「…いや」
「えっ?」
「今日はお兄ちゃんと寝る」
(今日は譲れない!)
「はっ?いやいや、それはマズくね!」
「私の友達もお兄ちゃんと寝てると言ってたもん…」
(嘘だけど)
「まじ?」
「うん。まじ!」
「そうなの…か。兄貴と寝るなんて普通嫌なんじゃね?」
(こっちでは普通なのか?)
「そんなこと無いよ!それにやっぱり1人で寝るのって…寂しいじゃ…ん…」
(秘技!妹の少し寂しい顔!)
「そう…か。…分かった。今日は一緒に寝るか?」
「うん」
(よ~し!よし!よし!よし!勝った!)
───「あ~その…なんだ…ちょっと…一緒に寝ると言ったけど…近くね?」
「うん。全然近く無いよ!」
(だって久しぶりに一緒に寝るんだよ。お兄ちゃんの匂い。す~は、す~は~!落ち着くぅ。これよこれ!)
「いや…その…なんだ…胸がな…」
「胸がどうしたの?」
(そこはお兄ちゃん。胸が当たってるって言ってくれたら当ててるのと言えるのに…)
「いや…何でもない…寝るか?」
「うん」
(恥ずかしがってるお
─────────す~、す~、す~…
「お兄ちゃん寝た?」
「す~、す~、す~…」
「私のお兄ちゃん…チュッ♡…誰にも渡さないんだから!お兄ちゃんおやすみ♡もう一回…チュッ♡」
(お兄ちゃんからのファーストキス。ずっと待ってるから近い内にしてね)
「ん…す~、す~、す~…」
「お兄ちゃん…大好きだよ♡」
今日はお兄ちゃんの傍で眠れて良い夢見れそう♡
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