第45話

 私の頭の上に降り立った『リラックスモードのサタ様をみた』パパ達は私とママが驚くぐらい号泣した……そして、私の前でひざまづく。


「おお、お懐かしゅうございます……う、ぐぐ、サタナス様、あの日別れた時から、2度と会えないと思っておりました」


 パパが地面に付くほど頭を下げてた。それを見た他の2人も大粒の涙を流しながら、ひざまづぎ頭を下げる。


「タクス、エバァ、ドロシア、会えて嬉しいぞ。ワタシもみんなに2度と会えないと思っていた」


 とてもよく、とてもいい感動的な再会なんだけど。

 サタ様、私の頭の上ではやめてほしかった……パパと大人の人――2人を見下ろす形になってる。


 そんな、私の気持ちを知らずサタ様は。


「タクス、よい娘を持ったな。ワタシはエルバの使い魔となった――これからこの家に住み、存分に楽しませてもらうぞ!」


 ハハハッ、もこ鳥はゆかいげに笑う。その下でパパは困惑してママをみていた。元だけど――自分の主人と認めた魔王様が私の使い魔になったのだもの……困惑するよね。


 私も知らないうちにサタ様が使い魔になっていたから、パパの気持ちわかるよと、サタ様を乗せながら頷いていた。


 しかし、パパの心配は違った。


「ママ、サタナス様の部屋どうする?」

「そうね、アール君と同じベッドでは失礼よね」


「そうだな……失礼になるな」


 ――え、心配はそこ?


「フフ、ワタシは別にかまわんぞ。なんならエルバのベ……」


「それはなりません! 私だって同じベッドで一緒に寝たことがないのに! いくら元魔王サタナス様でも……愛する可愛い娘と同じベッドは使わせません!」


「ええ、また娘は16歳です。18になるまでは私も許しません」


「え、ママ……18? ダメダメ、エルバはいくつになっもお嫁にやらず、ずっとパパのそばに置く」


「あなた、娘のしあわせが大事です!」

「パパのそばに居ても幸せだ!」


 うわぁ、パパとママの話がどんどんそれている……恥ずかしい。だけど、その姿をサタ様は楽しげにみていた。そして『家族とはよいものだな』と『ワタシには親などいなかった……』と呟いた。


 そのサタ様の言葉に反応したアール君が、トンと私の肩に飛び乗り。



「います、パパ様、ママ様、エルバ様、そして僕がサタ様の家族です」



「なに? ワタシのタクス達が家族? おお、これは益々楽しめるな」


「はい、今まで以上に楽しめます!」


 ――フフ、私もみんなとトコトン楽しむよ。




「あなた、娘の幸せが第一です!」

「いいや、エルバは俺といた方が幸せだ!」


「………パパ、ママ、まだやってる」


 言い合うパパとママは置いておいて、サタ様は私の足下でまだ頭を下げる――短髪、赤い髪の燕尾姿の男性と、青い長髪、黒いマスクを付けたローブ姿の男性に『体は大丈夫か』と話しかけた。


 サタ様に声をかけられ、2人は嬉しそうに顔をあた。


「うんうん、もういいよ~サタ様たすかった。もう、大切なミネを置いて死んじゃうかと思ったよ。エルバちゃん、アールちゃんありがとうねぇ」


 この人が魔法都市を守る大魔女ミネルバの恋人……なんだか見た目と違って話し方がチャラい――もう1人はローブの胸元から、リアルなドラゴンのパペットを右手にはめ。


「本当に助かりました……サタ様、エルバさん、アール君もありがとう」


 と、渋い声で話した。


「ハハハッ、それはよかった。エバァの話し方は相変わらずだな、ドロシアのドラゴンの脱皮した皮で作った人形、も変わっていない。クク、なんで懐かしく楽しい、これからよろしく頼むぞ」


「はーい、よろしくねぇ~」

「よろしくお願いします」


 300年もの時を得て、ヌヌ卿以外のパパをふくめた濃い元四天王とサタ様、アール君が再び会えてよかった。

 そして、パパ達が助かってよかったぁ……と、ホッとしていると、頭の上のサタ様がいきなり羽をバタ付かせ。


「よし、今からワタシが狩った魔物肉を焼くぞ! エルバ――あの、ナイフを貸せぇ!」


 と騒ぎはじめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る