第157話

 サタ様とアール君と一緒に北のカルルの原っぱへ、カレーを作るための、ククミンを採りにきている。しかし、私たちの前に勇者結界が張ってあった。


 その先には300年前、勇者と魔王が最後の戦いをした場所で――その場所に前魔王サタナスの愛剣、黒剣がある。

 

 いまサタ様が、この結界を破壊しようとしていた。

 

「エルバ、アール。魔力を使うから、ワタシの側から離れてくれ!」

 

「わかった」

「わかりました」


 サタ様は私たちが離れたのを見て、省エネのモフモフの黒鳥から、長い黒髪の前魔王へと姿を変えた。そして右手を結界の前に出し、魔力をため黒玉を生みだした。


 いま、サタ様の手の中にある黒い球が私には少し、気味悪く感じて、体が拒否する。


「うっ、吐きそう……」


「すまぬ、エルバ! ワタシたちは他の魔物より、体内に多くの瘴気をためている。いまそれを解き放った……エルバにはタクスの娘。多少、瘴気耐性があるだろうが、ワタシの強い瘴気にあてられ体が拒否したのだな。いつもは気をつけていたが、少し我慢してくれ」


 ――だから省エネ、黒モコ鳥の姿だったの?


「エルバ様、ボクも魔物ですが……瘴気はほとんどありません。ごめんなさい、もう耐えれません」


 パタンと、その場に倒れたアール君。


「アール君⁉︎」


「すまぬ……結界を壊したら、瘴気に耐えれるよう魔法をかけてやる」


 サタ様は手の中には魔力をためた、黒玉を結界へと向けて放った。勇者結界にヒビが入り、バリバリ、バリバリ音を立てて粉々に崩れ落ちる。


「いま。アール、エルバに瘴気に耐えれるよう魔法はかけた。ワタシは剣を回収する。エルバはすぐ、ククミンを探してくれ」


「はい、すぐに探します」

「ボクも手伝います」


 カルル原っぱの中へと、足を進めるサタ様のあとにアール君と続くが。結界の中は暗い霧状のものが渦巻いており、その中にサタ様の黒い剣を守るようにして、黒龍が私たちを見下ろしていた。


「ひぇ、黒いドラゴン⁉︎」


「エルバ、大丈夫だ。ワタシの剣の化身だ! 愛剣、黒剣、ワタシが迎えにきたぞ!」


 サタ様が手を広げ、ドラゴンに話しかけた。

 話しかけられた黒いドラゴンは、サタ様を見て。


〈主人? あぁ我が主人――サタナス様、お待ちしておりました〉


 深く、深く頭を下げた。

 

 

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