第158話
真っ黒な霧の中に。黒竜――ドラゴンがいた。あまりの迫力に口を開けたまま、足が止まってしまう。その姿を見たサタ様は苦笑いをして、私とアール君にむけて声を上げた。
「ハハハッ、顔が呆けすぎだ。エルバ、アール、早くククミンを見つけて帰るぞ!」
「あ、はい! 見つけてきます」
「ボクも、エルバ様の見つけるお手伝いしてきます」
2人が走っていく姿を見て、サタ様はドラゴンに手を伸ばした。その手にサタ様のドラゴンはスリスリして姿を消すと――そこに、地面に突きささる愛剣、黒剣があった。
「ああ、懐かしいな。我が愛剣よくぞ私の手に帰ってきた」
サタナスが剣を手にした途端、あたりの瘴気は全て消え去り――サタナスの足元に光文字が現れ、花々が咲き、花畑へと変わっていく。
サタナスはその文字に目を通し。
【魔王サタナス、君の剣を撮りにきたようだね。君の剣で荒れてしまった土地は、僕の魔法でキレイにしてあげるよ。なに気にするな。また会おう!】
読み終わった後、口角をあげた。
(ククク、勇者め。なんと面白いことをするが――だが、シーログの森までは、浄化されておらぬみたいだぞ……あいかわらず抜けておるな)
勇者の割と抜けた性格を面白がり、静かに見守るサタナスとは違い。ククミンを探すエルバとアールは周りを見て驚き、声をあげた。
「ヒェ――! 真っ黒のきもちわるい煙が消えて、青空と花畑に変わった?」
「ええ、変わりましたね」
クルクル周り、驚く2人をサタナスは優しく見つめた。サタナスが愛剣を手にできたもの、この勇者のはからいが見れたのも。全ての始まりは、エルバがワタシを見つけてくれたおかげだ。
エルバのおかげで、ここまで来れた。
――感謝しかない。
「ありがとう、エルバ!」
サタ様が私にお礼を伝えて、幸せそうに笑っている。何かいいことがあったのかな? その姿に私も嬉しくなる。
「サタ様に喜ぶことがあってよかった! ククミンを探すから、もう少し待ってね」
サタ様に向けて、花畑の中から手を振った。サタ様は剣をしまうと、いつものモコ鳥に戻り、こちらに飛んでくる姿が見えた。
「ワタシも探すのを手伝おう。ククミンはどんな草だ」
「手伝ってくれるの? えーっとククミンは……えーっと」
博士、博士、ククミンでどんな植物?
〈ククミンとは、葉は細長い針のような形の植物です〉
ありがとう、博士。
「サタ様、アール君、クミンは細い針のような形の植物だって、博士が教えてくれたよ」
「……そうか、わかった。探してみよう」
「わかりました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます