第13話
自分の行い(毒草、麻痺草を食べた)で、一週間もエルブ原っぱにいけない。ママとパパに頼み込んで、アール君と一緒ならいいと書庫の鍵を開けてもらった。
ひさびさの書庫――扉を開けて香る古い本の香り。
「んん、久しぶりの書庫!」
「エルバ様、危ない毒草、麻痺草の本を読み出したら止めますから」
「はーい」
植物図鑑と食べもの図鑑、ほかには? とさかざして、古い術式が書かれた魔導書をみつけた。
古い書物だから文字が読めないかもと、興味本位だけで本を開いた……のだけど。
――あれ? なぜか、書物の文字がスラスラ読める。
(こんなに難しい文字も読めてしまうなんて……新しい才能が開花した? それともチート?)
と、自分の力に驚いていた。
それを隣でみていたアール君は『その書物が読めて不思議ですか? 今、エルバ様は僕のご主人様です。僕の能力でその魔導書を読んでいるのですよ』と教えてくれた。
「アール君の力? じゃ、いま私はアール君の力を借りて、この難しい魔道書を読んでいるということ?」
「はい、そうです。血の契約はご主人様の魔力が使い魔よりも"上回って"いないと、成立しない術式なんです」
「使い魔より上回る? 私の魔力がアール君より上?」
「はい。知識、頭脳、技術はまだ僕のほうが上で、エルバ様は魔力だけですけどね」
「魔力だけ? そうなんだ……」
「そして――今、エルバ様が使用できるのは、僕が元から身につけている言語のみ。僕との絆が深くならなければ……僕のスキル、魔法は使用することができません」
――アール君との絆って、なんだかゲームみたい。
「でも、自分だけだと読めない、難しい書物が読めるのは嬉しい。ありがとうアール君」
「フフ、エルバ様にそう言ってもらえて、嬉しいです」
ちょうど、開いた古い魔導書に"血の契約"の説明が載っていた。
やはり、アール君と私がした契約は危険なもので……主人の私が怪我をすると、使い魔のアール君が代わりにその傷を受ける。
無理矢理、術式を解除しようとすると両方、大怪我を負うか、下手をすれば死んでしまうと――その魔導書には書いてあった。
「ちょっと、アール君! あなた、無茶しすぎだよ……」
私の隣でのほほんと前足を器用に使い、料理の本を読んでいるアール君。
「無茶ですか? そうかもしれませんね。でも、僕はどうしてもエルバ様の使い魔になりたかった……ご主人様と一緒にいると楽しそうなので」
「楽しそうって……そんなの、わかんないじゃない……!」
「ダメでしたか?」
――あ、そんなにシュンとしないで……私だって、家族が増えた事は嬉しい。
「ぐぬぬ――もう、わかった! アール君と二人でいろいろ経験して楽しもう。ぜったいに私がアール君を"楽しい"って思わせてみせるわ!」
"エルバ様なら、そうおっしゃってくれると思っておりました"と、アール君は目を細めた。
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