第122話
その家らしき建物に近付くとそこに、アルビノ種とでもいうのだろうか、真っ白な人外のハチがテーブルで作業していた。
お!
この、ハチが身に付けている服は「ノースリーブ ニットワンピース」通称"ここでは言えない服"に似ている。
ハチ特有の腹部がないと、お尻が見える!!
「うむ。アビスも変わっておらぬな」
「えぇ、変わっていませんね」
サタ様はそのハチの側まで飛んでいくと、声をかけた。
「よっ、アビス、元気にしていたか?」
「え? だ、誰?」
作業の手を止めて振り向いた、アビスと呼ばれたハチ。
見た目は彼、彼女、どちらかはわからないけど、真っ白なボブカットの髪、まつ毛、琥珀色の瞳の綺麗なハチだった。
「アビスはアビの名前だけど……え、ええ⁉︎ そ、そのリラックスモード……もしかして、サタナス様とパワー様、……?」
「アビス、今はアールといいます」
「アール? 可愛い、アビ、その名前好きだよ!」
「……ありがとう、この名前、けっこう気に入ってる」
アビスは琥珀色の瞳を細めて、アール君を見つめるが、アール君はフンの顔を逸らした。その横から、丸玉のパワー様が顔を出して。
「ボウズ、元気にしていたか?」
その呼び方に、プクッとアビスは頬を膨らます。
「パワー様ボウズ呼びはやめてくださいと、前にも言いました……」
「ボウズは、ボウズだろう?」
「ボクは雌雄同体です。見た目が、可愛いのでアビちゃんと呼んで!」
「無理だな、ボウズ」
「いや、アビちゃん!」
ほぉ、雌雄同体って、オスとメスを両方持っているだったかな。だから男性にも女性にも見える、この綺麗な見た目なのか。
「それで、アビスはずっとここで1人か?」
「そうだよ、サタナス様。ボクは仲間に気持ち悪がられているし。すご――く昔にサタナス様が消えたと聞いた後、人間が周りに街などを作りはじめてからは。この森の奥に家を建てて、ひっそり暮らしてるんだよ。たまに人間が、ボクを魔物だといって襲いにくるけど……弱い」
「そうだろうな。アビスのランクはSくらいか? そう簡単に、ニンゲンの冒険者に倒されるわけがない」
「当たり前です! ボクと同じくらいの力なのに、倒されるのは許さないですよ」
「アール……」
こうやってくると、さすが元魔王のサタ様の周りってS級ばかりで。強い個性で、凄いサタ様の仲間が魔法都市隣の領地に集まってきている。
私よりも能力が高い、高すぎる住民ってありなの?
サタ様が領主を務めれば、いいかな? その方がいいような気がする。
みんなの輪に入らず、ブツブツ考え事をする私にアビスが気付く。
「あの、ところで、この女の子は誰なの?」
「ワタシの主人、エルバだ」
「ボクの主人でもあります」
「ええ!!」
アビスは驚き綺麗な琥珀色の瞳で、私をジロジロ見てきたけど……何かに気付いたのか頷いた。
「この子、アビより……強い。みための可愛さではアビの方が勝つけど、力で負けるのは悔しい」
「アビス! 美だとか、力だとかどうでも良いではないのか? 1番必要なのは中身だ。中身がダメな奴はとことんダメだぞ」
パワー様はいい事を言う。
それに、アビスも分かるとウンウン頷いた。
「ん? アビス、何かあったのか?」
「うん、アビ、パワー様の話わかる……ひと月前にここに来た、初めて会った女の子。アビの家族とか、アビの事を詳しく知っていて「あたしと来れば幸せになれる」って言ったんだ――いきなりだし、気持ち悪くて逃げたけど」
と話した。
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