第121話

 アビスのミツ――蜂の形をした魔族なのかな? 魔法都市にいるハチは体長が1メートルくらいある、ビービーと言う、ミツバチを大きくした魔物。


 比較的に温厚で話はできないが、話が通じて「ミツを頂戴」と言えば、ハチミツを分けてもらえる。強者になると養蜂家の様にビービーを飼育している。


 どうやら、アール君はハチに苦手意識があるみたいで、ビービーのハチミツ取りに行こうと、誘ったときの彼の顔は……面白かった。


「サタ様、パワー様、数100年前に見た……あの姿のままなのでしょうか?」

 

「皆も、そう変わっておらぬから。変わっておらぬだろう」

 

「ウウッ、そうですよね……」

 

「アールはあの姿が苦手か? 余は別に気にする様な格好ではなかったと思うぞ」


「ひぇ、あの姿で抱きついてくるんですよ! ボクは寒気しかしないです!」


 アール君が嫌がるほどの姿?

 まあ、会ってみないとわからないけど。




「さぁ、ミツを取りに行くか」


 サタ様の合図で私とサタ様、アール君はコーサックの森の奥に進んでいる。パワー様は洞窟に残り、ソーロ君をはじめ、ソーロ君の家族の容態の変化を見てもらっている。


 もし何かあったら、魔法でサタ様に連絡が入るらしい。


「エルバ、そこに実る赤い果物はなんだ?」

「ん? 赤い果物?」


 私の頭の上に鎮座するサタ様は、右側に実る果物を指差した。すぐに博士に尋ねると「野生のリリンゴ」だと教えてくれる。


「それ、野生のリリンゴだって」

「ほぉ、魔王領で昔見た野生のリリンゴより、一回り小さいな」

「えぇ、小さいですね」


 前、ママが作っていた改良リリンゴとは違う、小さな野生のリリンゴ。博士にタネをもらって畑に植えた。画面の中でリリンゴの木が生え、赤い実をつける。


「これで、いくらでもリリンゴが食べれるね!」


 リリンゴ――リンゴと言えばアップルパイ、タルトタタン、リンゴジャム、焼きリンゴ、リンゴのコンポート。もちろん、シュワシュワに入れてもいい。


「エルバ様、戻りました。リリンゴ入りのシュワシュワが飲みたいです」


「ワタシも飲みたいな」

「帰ったら作るね」


 

 サタ様とアール君がいるからか、強い魔物と会うこともなく、コーサック森の奥に着くと。どこからか陽気な鼻歌が聞こえてきた……この声に聞き覚えのあったのか、アール君は毛を逆立て尻尾を太くして、サタ様は私の頭の上で「アビスも変わっていない」と笑った。


「エルバ、この木の奥だ」

「エルバ様、お先にどうぞ」


「わかった、行くよ!」


 鼻歌の聞こえた方角に向かうと、そこに床と柱しかない家? を見つけた。

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