第61話
しくった……急いだ結果、転生初日のような失敗をした。だって魔法都市サングリアで生まれてから、ずっと、物々交換できたから仕方ないよね。
(カラス達で魔法都市に戻っても……パパとママがアーク金貨を持っているとは限らない……魔法都市の人も同じかもしれない。それより……みんなが慌てて魔法で偽金貨とか、どんでもない事が起こりそう)
う〜ん、どうする、どうしたらいい? 考えても、何も浮かばない……よし、ここはハッカ飴で落ち着こう、と、ガラスの瓶を開けてサタ様、アール君と自分の口に放り込んだ。
ハッカの飴が口の中でとけ、スーッとし気持ちが落ち着く。
《イライラ解消、ストレス軽減いたしました》
博士のいう通り落ち着いて、コロコロ、3人横並びに並んで、飴を舐め城壁を見上げた。
「姿消しのローブを羽織ったまま、スーッと入れないかなぁ」
「それは無理だな。王都入り口すべてに『魔法解除の陣』が描かれている。かかっている魔法は全て解ける仕組みだ。まあワタシとアールなら魔法を気付かれず魔法解除の陣すり抜け、姿が消えたままでも通れないこともないが……エルバには少し荷が重い」
(私が魔法初心者で、魔力のコントロールが出来ていないからだろう。ここで爆発でも起こせば私だけ捕まる)
「じゃ、2人が持ってる、ロマネクス硬貨は使えない?」
この問いに黙り込む2人。
「うむ。ロマネクス硬貨は勇者アークの名前になる前……300年前、ここがロマネクス王国だった頃の硬貨だ」
「いまも使用できるかもしれませんが……使った後に嫌な予感がします」
300年前の硬貨か……歴史的に価値、歴史的な発見になって『貴様の様な子供が、なんでこのコインを持っている?』と、下手をしたら盗んだと言われて、私だけ捕まるかも。
――それ、怖いんだけどぉ。
「さて、どうするかなぁ?」
「フフフ、こうなったら真夜中、城壁を破壊して侵入するしかあるまい」
「おお、サタ様ナイスアイデアです! それが手っ取り早くていいです」
賛同したアール君と、サタ様は城壁のどの部分を壊すかの話しだした。私だったら、人通りの多い南口ではなく、人の通りが少なくて、警備が手薄なところかな……って。
「こらっ、2人とも考えが物騒すぎる。近くの街でサタ様が捌いた魔物の素材を売れないかなぁ? 2人は姿を消したまま入都するとして、私の分――アーク銀貨10枚か金貨1枚があればいいんだよね」
と、簡単に言ったものの。私はこの世界に来てまだ、硬貨――お金を見たことがない、いくらなのかもわからない。
――そうだ。
「サタ様、アール君、ロマネクス硬貨が見たい。あと、いくらなのか教えて」
マジックバッグから耐熱シートを取り出した。
サタ様がアイテムボックスから、ドシっと麻袋パンパンに入った硬貨をシートの上に置いた。その麻袋の紐を開いて中を見ると……ピンク、赤、金、銀、銅色……色の付いた石が入っている。
「エルバ、ピンクの硬貨がローズ金貨、赤い硬貨がロゼ硬貨、金貨、銀貨、銅貨と人達は呼んでいたな、石は色石になる原石だ」
「ローズ、ロゼ……」
これが300年前の硬貨……私はその中の金色をした金貨を1枚取り眺めた。
「綺麗……この金色の金貨って、どれくらいの価値なんだろう?」
日本円に例え、金貨1枚を10,000円として考えて。
金額より上のロゼ金貨が100,000円……
その上のローズ金貨が100,0000円⁉︎
だと考えたら、この量……すごい金額になるんじゃない?
「サタ様、この金貨達の金額は?」
「そうだな……今エルバが手にしている、金貨一枚で高級な定食屋でエールと上質な肉がたらふく食えた。ロゼ金貨、数枚でオリハルコンの剣、ローズ金貨、数枚でプラチナの鎧一式買えた」
「ええ、良いお肉がたらふく食べれましたし、なかなかの装備が買えましたね」
「へぇ……そうなんだ」
食べ物と物での計算?
「ヌヌを助けだしたあと、エルバが冒険者になるのなら、それなりの装備を揃えなくてはな。さて、近くの街で魔物の素材が売れないか探すか」
「はい、探そう!」
「そうだね」
冒険者、鎧かぁ……憧れる。
❀
王都に入都するために私達は近くの街、マサンに移動して、魔物の素材が売れないか買取専門店を探した。
しかし、どこの買取店でも。
「すみません。素材はいいものですが……冒険者ギルドか商人者ギルドの『ギルドカード』が無いと、規則でウチでは買取できないんです。すぐそこに冒険者ギルドがあるので、冒険者になってから再度きてください」
と、店主に言われて冒険者ギルド、マサン支店に行ったものの。
受け付けで『ギルドカード登録料、銀貨5枚の提出をお願いします』と言われた。
――ここでも、詰んだ。
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