第62話
冒険者ギルドから肩を落として出ると『あ、この前の』と、声をかけられた。振り向くとノロル村であった、おばちゃんがいた。
サタ様は頭の上で、アール君は肩の上で姿を消している。
「おはよう、あの後シュノーク城は見れた?」
「おはようございます。はい、見れました。とても素敵な古城でした」
実際に見た、シュノーク古城は素敵だった。
そこに住んでいるヒロインこと、アマリアさんは強烈キャラだったけど。おばちゃんは『そうかい、よかった』と、微笑んだ。
そして、前のお礼をしたいからと連れてこられたのは、街の中央で開催されている朝市。おばちゃんは3ヶ月に一度開催される、このマサン朝市に手作り野菜を売りに、旦那さんと来ていると教えてくれた。
(たくさんの野菜、果物に雑貨……ゆくっくり見て回りたい)
これには頭の上のサタ様と、肩の上のアール君も食い付き。串肉が食べたいとか、丸焼きもち鳥、彼らは肉ばかり見ている。
「えっと、あなたのお名前を聞いてもいい」
「はい、私はエルバと、いいます」
「エルバちゃん、はい、この前のお礼、私の畑で作った物だけど食べて」
と、野菜がはいった袋を渡した。
中身はレタスス、トマトマ……と、ピーマン、ナスだ。
博士これは?
《ピピーマンといい。ビタミンCを多く含み、シミ、そばかす、シワ、たるみを防ぎます。ヘタ、タネをとらず丸ごと食べますと苦味がなく効果的面》
ピピーマンて美容にいいのか……知らなかった。
じゃー、こっちは?
《ナッスンといい夏バテ解消、腸内環境を整えます》
夏バテ解消かぁ……焼きナッスンにして、すりおろした生姜と醤油、まだ無いけどカツオ節をかけて食べたい。
コッチの丸々としたピーマンを見ると、肉詰めが食べたくなる。半分に切ってお肉を詰めるのもいいけど。ヘタの部分をくり抜き、中にお肉をギューギュに詰める『ピーマン丸ごと肉詰め』もいい。
ピーマンを噛んだ瞬間、肉汁がジュワッと溢れる。
ピーマンとナスの甘辛炒めも最高だ、どれもコメが進む。
「おばちゃん、ありがとう。お野菜いただきます」
「フフ、いいのよ。またエルバちゃんに会えて、お礼ができてよかった」
おばちゃんの旦那さんにも、たくさんお礼を言われた。
ご夫婦にお礼を言って、ほかの出店を見回っていた。
頭の上のサタ様が『あの屋台』と言って羽をさした先に串団子屋さんがあった。
サタ様、アール君とで店を覗くと、この店ではコメの団子を売っていた。そして、いきなり現れた私に『あ、エルバ様』と呼んだ……なぜか向こうは私を知っているらしくて、微笑んで頭を下げられた。
もう1人の若い店員さんにも。
「おはようございます、エルバ様。人里で何をなさっているのですか?」
と、深々く頭を下げられた。
この場所を人里と呼び、コメ団子を売る彼らは誰? だと、驚いている私に、彼らは小声で『僕達魔法都市サングリアから来ています、鬼人です』と教えてくれた。
なぜ名前を知っているのかというと、新エルバコメの袋には、デカデカと私の似顔絵が描かれているらしい。
――今度は似顔絵まで。
いま販売しているコメのお団子は人里でもかなり人気で、来ても直ぐにお団子は完売してしまったらしく。彼らは出店のリサーチをし終わって帰るところ。
サタ様がこの2人に、あの青い花について話をしたいといった。
「あ、帰る前に私について来てください」
2人が帰る前に場所を青い花が咲く原っぱに移動した。
サタ様とアール君が彼らの前に姿を現して、あの青い花の説明をした。
「人里で、この花を見つけたら近付くな、触るな、と他の人達にも伝えて欲しい。触ったら……ワタシもどうなるのかわからん」
彼らはサタ様、アール君のことも知っていて、話を真剣に聞いて頷く。
「それは恐ろしい花。サタナス様、必ずみんなに伝えます」
「うむ、よろしく頼む」
そして、言いにくいけど……彼らに私達の事情を説明して『アーク銀貨5枚貸し欲しい』とお願いした。2人は快く貸してくれた。
「これがアーク硬貨です」
渡されたアーク硬貨の真ん中には鎧を身につけた、勇者っぽい横顔の男性の絵が入っていた。アーク硬貨の種類はローズ金貨、白金、金貨、銀貨、銅貨、原石と話し。
上から
ローズ金貨が1,000,000円(アーク)
白金貨が100,000円(アーク)
金貨が10,000円(アーク)
銀貨が1,000円(アーク)
銅貨が100円(アーク)
原石は10~1円。
と、自分で分かりやすく解釈した。
「うむ、ローズ金貨、ロゼ金貨が白金か……昔とあまり変わらないな」
「変わりませんが……僕達が持つ硬貨とは絵が違うので使えませんね」
サタ様とアール君は不揃いになお団子を貰って、食べながら硬貨を見ていた。カラス達も自然と集まっておとなしく見ている。
「ありがとう、必ず銀貨5枚は返します」
「いいえ、私達も来た頃は困りましたから」
借りた銀貨があれば冒険者ギルドに登録ができて、素材が売れる。
「ほんとうにありがとう」
「助かった」
「ありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ、毎日、楽しくコメ草、他の薬草で、多くの開発をさせてもらっております」
「はい、毎日が楽しくて仕方ありません」
「よかった、それでね」
私は2人に疑問をひとつ聞いた。
魔法都市サングリアでしか採れない、コメ草のお団子を人里で売っても大丈夫なのかと。知らない薬草だったら、大変なことにならないか聞いてみた。
2人は。
「それは大丈夫です。ここでのコメ草は道端に生える草でしかなかったんです……誰も食べれると知らなかったようで、初めは『草を食わすのか?』と言われて、全然売れませんでしたが……食べられることを説明して、炊いたコメを見てもらい、コメの味を知った途端、毎回完売するようになりました」
「私たちも長年コメ草を『コメノリ』としてしか使ってきませんでした。エルバ様の発見は素晴らしいです」
「…………えへへらそうかな」
目の前で褒められると……照れる。
では、魔法都市に帰ります、と、彼らも姿消しのローブを羽織り、親指と人差し指をくっつけ円にして、その円にフウッと息を吹きかけた。その指を通った息は白くモクモク雲のように固まっていった……2人は出来上がった雲に飛び乗る。
(これ……き、筋斗雲(きんとうん)に似てる!!)
「それではエルバ様、失礼いたします」
「失礼します」
と、2人は魔法都市サングリアに飛んで帰って行った。
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