第26話
どうして、黒魔術? ヒロインはいったい、シュノーク古城でなにをしているのだろう? ――ただ、私が言えることは。ヒロインは熱狂的なサタナスのファンだということ。
だって、サタナスはこの物語があるていど進まないと登場しない。その魔王サタナス様が囚われている、シュノーク古城に住んでいるって……それしか思いつかない。
(私のほかにも転生者がいたんだ――でも、モブの私には関係ないっかな)
異世界に私と同じ転生者がいると知って、ちょこっとフリーズしていた。
「エルバ様、どうなされました?」
「ん? なんでもないよ。私たちもどこか木陰を探して、シュワシュワ飲もうか」
ホウキに乗り近くにみえた原っぱで、アール君と休むことにした。木陰でマジックバッグから敷物をだして座った先に、低木に実る黄色い果物をみつけた。
ん、あれは?
博士、あれはなに?
《これは野生のレンモンという果物です》
丸いオレンジの形をした、黄色いレモンにすこしパニック。まちがえて、オレンジだと思って食べていたらと思うだけで……唾液がすごい。
博士、野生のレンモンは食べられる?
《はい、食用です》
おお、レンモンを薄く切ってハチミツにつける、レンモンのはちみつ浸け。レンモンジャム、シャーベット、ケーキ、クッキーなどのお菓子、料理にだって使える。
レンモンの効能は。
《疲労回復、ビタミンCたっぷり美肌のもと、皮には食物繊維が豊富です》
美肌と、皮に食物繊維か。
博士、レンモンのタネを頂戴。
タネを、エルバの畑に植えて完了。
――これでいつでも、レンモンが使える。
隣でシュワシュワを待つ、アール君にレンモンをとり、見せた。アール君は不思議そうにレンモンの匂いを嗅ぐ。
彼にもレンモンが食べ物とわかったのか、ペロンと鼻を舐めた。
「これ、レンモンという果物なんだけど、シュワシュワにいれて飲まない?」
「レンモン? 果物? エルバ様、賛成です。レンモンはどんな味がするんでしょう?」
レモン――レンモンはじめてのアール君は興味津々だ。マジックバッグからキャンプで使っていた、愛用の折りたたみのテーブル、愛用のナイフ、竹製のまた板を取り出した。
水魔法で洗いレンモンを半分に切って、コップに注いだシュワシュワに絞る。もう半分は輪切りにして、シュワシュワに浮かべた。爽やかなみためのシュワシュワの完成。
――さてさてお味は?
ゴクリ、喉にくる爽快感とレンモンの果汁と香り。
「んんっ、サッパリした味わいで美味しい!」
「プファ、今日のような暑い日にピッタリの飲み物です。レンモンのシュワシュワおいしい!」
コップ一杯を飲んだ二人の体が一瞬光って消えた。ん? 心なしか魔力が回復して体もすこし軽くなった? 隣のアール君も自分の体を動かして。
「エルバ様、なんだか体が軽くなりました?」
「アール君も? 私だよ」
《エルバ様の調理レベルが6に上がりました。調理法をレシピに登録いたしました。調理レベルが5以上になりましたので新たな能力、調理魔法を取得。レンモンのシュワシュワの効能、疲労回復(小)が発動いたしました》
調理魔法?
疲労回復(小)?
《以後 調理効果が発動いたします》
私が調理したものに、何かしらの効能がつくということ?
うれしいけど、それってチートすぎない?
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