第27話 シュノーク古城

 これが異世界チート! だと。自分の能力に驚いていたけど、レンモンのとなりに"枝豆"らしいものが生えていた。


 博士、これは?


《エダマメマメという、マメ科の野菜です》


 食べられる?


《食用です。たんぱく質と食物繊維が豊富です》


 やった、枝豆だ。塩茹でにして食べると美味しいのよね。スーパーに行くとついつい買っちゃうし。枝豆って茹でて食べるほかにも枝豆ごはん、卵焼き、料理の彩りに使える。


 博士から、タネをもらって畑に植えた。



 この原っぱからシュノーク古城に行くまでには、いくつもの畑と原っぱがあるみたい。だから、みたことがない薬草、野菜をみつけれるかも。


 ――クゥ、ワクワクする!


「さてと、休憩を終わりにして、アール君そろそろ行こう」


「はい、ところでエルバ様。ここからだと、シュノーク古城まで、まだ距離がありますがどう行かれますか?」

 

 まだ、私たちがいる場所からシュノーク古城はみえない。小説の通りだと、丘の上に建つシュノーク古城……と書いてあった。


「歩いていくのはちょっと無理な距離かな? ほうきで、やすみ休み飛んで行こう」


「かしこまりました。では、姿を消しますね」


 アール君は魔法でスーッと姿を消し、私は身消しのローブを羽織って、ママに借りたホウキにまたがり魔力を集中する。


「エルバ様、魔力が安定していません。落ち着いてください」


「わ、わかってる……フウッ――よし、いこう!」


 私は地面を蹴って飛び上がると、上手く魔力が乗って、空高く飛び上がりホウキに乗れた。ここで乗れたと喜び、気を抜いてはダメ。

 練習ではこのあと気を抜いて、高度がストーンと下がり尻餅をついたのだ。



 ――まだ、集中!



「エルバ様、魔力が安定いたしました」

「そう? すこし、コツが掴めてきたのかな?」


 そういうと、肩に乗るアール君は"いいえ"と首をふった。


「少しだけですが。僕の力も使っているので、まだまだです」


「え、アール君の力? 私は自分の力でホウキに乗れていないんだ」


「はい、そうなります」


 クゥ――乗れたのかと思ったけど。まだ、ホウキに乗るのってむずかしい。訓練のときママが言っていたのだけど、私は他の魔法使い、魔女よりも魔力の量が多いらしい。


 しかし、未熟な、いまの私ではその魔力量は手にあまると言っていた。


「アール君、ありがとう。日々訓練だね」


「ええ、訓練は大事です。魔法都市に戻ってからも、毎日いたしましょう」



 その数分後――私とアール君は順調に進み、丘の上に建つシュノーク古城の近くに降り立った。

 

 ――いやぁ、ここにくるまでが楽しかったなぁ。

 

 たまたま通った畑に実っていた野生のトマトマ、レタスス、キャベンツ、トトロモウシをみつけて、博士からタネをもらいエルバの畑に植えた。


 効能もトマトマは風邪予防。

 レタススは美肌効果。

 キャベンツは胃痛を和らげる効果。

 トトロモコシは腸内環境を整えると、博士に教えてもらった。


 フフ、城に着くまでに色鮮やかな、野菜畑ができあがったのだ。だけど、薬草は見つけたものばかりで、新しい発見がなかったのは残念。

 


 


「…………ウヒョォ」


 変な声が漏れた。


 辿り着いた、丘の上の森の中に建てられたシュノーク古城――所々、レンガで作られた外壁がところどころ崩れていて、苔とツタが巻きついている。

 


 こ、こ、このシュノーク古城に人が、ほんとうに住んでいるの?

 


「ねえ、アール君、どう? このシュノーク古城にお化けとかいない?」


 アール君の『ええ、なにかいますね……』と、淡々とこたえた言葉に私は震えた。


「ヒェ――ほんとうにいるのぉ?」


「フフ、エルバ様はお化けが怖いのですか?」

「怖いよ、実態のないお化けだよぉ……」


 私を驚かしているのか?

 ほんとうなのか?


『ここと、そこに何かいますね』という、アール君の言葉も怖いのだが。――シュノーク城に近寄ればちかよるほど寒気がしてくる。

 マジで怖いから、肩の上にいるアール君を抱っこしたいと言ったら断られた……とほほ。



 な、何故かわかりませんが……このシュノーク古城が怖い。ガタガタ震え、その恐怖を乗り越えてシュノーク古城の外壁近くまで来た。


「《…………》」


「え? アール君何か言った?」

「いいえ、なにも言っておりませんが」

 


「《……ウ、ウウッ、なんとも懐かしい魔力の気配がする。近くにいるのか? この魔力を持つもの……はやく、ワタシのところに来てくれ!》」

 


 ハッキリ聞こえた、地を這うような低い声。

 


「うぎゃあ――!! アール君、アール君、へ、へ、変な男性の声が聞こえたよぉ〜!」


「はい、聞こえましたね」


 へぇ? あれ? なんで、君はそんなに落ち着いているのぉ?

 

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