第66話

 私は地図を確認して2人に伝えた。


〈サタ様、アール君、今朝、遠目から見た建物が学園みたいだよ〉


〈その様だな、エルバ急げ!〉

〈行きましょう、エルバ様〉


 頭と肩に乗る2人が叫ぶ。

 ん? 私が走るの? ――はい、頑張ります! と気合を入れた、私の前に東門行きのバス馬車? 馬車バス? が通る、それに乗りまーすと手をあげその馬車を止めた。


 よかった……馬車停とかは無く、乗りたかったら手をあげて乗るスタイル。王都内どこまで行っても銅貨5枚(500円)で、料金先払い制で私は銅貨5枚を払い乗った。


〈中々良い乗り物だ、昔はこんな乗り物はなかった〉

〈これは移動が楽です〉


〈ふうっ、東門まで走る羽目にならなくて、よかったよ〉


 王都の中は研究、実験が好きで家に引きこもりが多い、魔法都市サングリアとは違い。働く人、出歩く人々が多い……服装も黒のローブではなく、ドレス、タキシードを着た人々が、従者を連れて歩く姿、馬車で移動していた。


 地図からすると、私達が入った南門はギルドを含む専門店、商店街が立ち並び、商人たちが多く住む。西は貴族達の屋敷が立ち並び、東は学園街で北は王城か。


〈サタ様、アール君、ヌヌを助けたら、この商店街行きたいね〉

 

〈商店街かいいな、美味いもんが食べたい〉

 

〈僕も食べたいです〉


 

 馬車バスに乗って5分後、学園街がある東門に着いた。

 私が思い描いた学園とはまったくといって違っていた……庭園と噴水、お城のような建物……こ、これがファンタジーの学園。


 豪華な建物すぎ、この学園に貴族しか通えないのがわかる。


 この学園にヒーロー、グルナ・アルクス

 ヒロイン、アマリア・リルリドル

 魔王、ローザン。

 悪役令嬢、リロッテ・サーロルが通っているのか。


 小説のように、ここで青春を謳歌しているのだろう。



〈エルバ、学園に入る前に、姿消しのローブを着るといい……すぐにヌヌを助け出すぞ!〉


〈ええ、みんなで助けましょう〉

〈はい、エルバ様が逸れない様、見ております〉


 ――ん、アール君?


〈よし、ワタシがサーチする〉


 サタ様は魔力を高め、私の頭から床におりると【サーチ】で魔犬ヌヌの場所を探す。サタ様の魔力が……どんどん膨れ上がる。


(お、おお? これ大丈夫?)


〈サタ様、やりすぎです……魔力を感知されますよ〉


 さすがに危ないと、アール君が止めた。


〈ん? すまん、すまん……気合が入りすぎて王都全体にサーチ魔法をかけてしまったようだ〉


〈サタ様のお気持ちわかります。それで、何かわかりましたか?〉


〈うむ、この学園に魔力量が多い人物が2人いた、後は王城に数名、南にも数名……そしてヌヌの居場所と、この学園の奥に不思議なものがいた〉


 ――不思議なものとヌヌ? 今、サタ様が学園内に魔力量が多い者が2人と言った相手は、多分ヒーローと魔王、王城は勇者末裔の国王とヒーローの弟、妹。南はギルドがあるから冒険者かな。


〈サタ様、今度は学園内だけにしてください〉


 頷き、もう一度、サタ様がサーチした。


〈東の奥、円状の建物に複数の人物が集まり、そこにヌヌと他の魔物もいるな。んん? 今、2人にサーチ魔法がバレたというか、勘付かれた〉


〈え、勘付かれた? 隠密に移動しないといけないのに……その2人って、サタ様が魔力量が多いと言っていた2人かな?〉


 アール君がコクっと頷く。

 

〈ええ、そうだと思われます。僕達が姿を消してしまえば、まず見つかることはないでしょう。さあ、ヌヌがいる場所へ向かいましょう〉


〈うむ、ヌヌは東奥にある、円状の建物にいた……〉


 円状の建物って、魔法の授業?

 魔法訓練だとしたら、ヌヌが危ない?


〈サタ様、アール君、急ぎましょう! ヌヌが魔法訓練で怪我をしてしまいます!〉


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る