第65話

 冒険者ギルドに登録して、ホウキに乗り王都に戻っている。しかし、私の頬はぷっくり膨らんでいた。


「サタ様は酷い! 私の数値あんなに低くするなんて! 受付嬢にFランクのギリギリラインって言われた……周りの人達にもあんな子が冒険者? って笑われたぁ!」


「フフ、ちょっと(いじわる)やりすぎたか?」

「やりすぎたかも、しれませんね」


 とほほな、私のギルドカード……


 エル(16歳)女性

 誕生日 5月7日

 職業 見習いの冒険者

 レベル 10

 体力  11

 魔力  11

 攻撃力 15

 防御力 5

 俊敏性 10


 スキル 薬草鑑定


 ――酷い、これはひどいよ。


「そう膨れるな……ワタシの素材のおかげで資金もできた、よしとしてくれ」


「もう、サタ様『鬼人の方と会えたから』が抜けてる、戻ったら、しっかり彼らにお礼しないと」


「はい、すべて終わりましたら、お礼をたくさんいたしましょう」


 余ったお金で魔法都市サングリアには無い、食材を買ったり、珍しい植物を見つけて帰ろうとみんなと話した。

 

 サタ様はお礼に美味い肉を狩る! と意気込んでいる。

 アール君はヌヌを助けた後で、冒険者になると言った。

 


 


「サタ様、アール君、二度目のアルクスの王都が見えてきたよ」


 私達は王都の近くでホウキから降り、南門の入り口に向かった。サタ様とアール君はモコ鳥と黒猫姿で、魔力を限界まで抑えて王都に入ると言った。


 彼らは、人に見られたくないのだとか。

 私だってと魔法初心者の私は言えない……彼らの足を引っ張りたくないし……いまの私はサタ様の魔法で、最弱のFランクの冒険者だし。


 アルクス王都の南門は馬車、荷馬車用の入り口と、徒歩の入り口に分かれていて、馬車は数人、徒歩は門番が1人ずつ、2人で対応していた。登録も馬車、荷馬車の進みはゆっくりだけど、徒歩の方はさっさと済んでいく。


 おお、もうすぐ私の番だ。

 うわぁ、緊張する。


 列に並んで数分待つと私の番がやってきた。「はい次の方」と呼ばれて、門番に作ったばかりのギルドカードと入国用の硬貨を渡した。

 

 門番にギルドカードを見て「すみません。カードに触れて、あなたのレベルを見せてください」と言われ「わかりました」と、ギルドカードに触れた。

 

 2人の門番の前に私の弱々なレベルが映し出される。

 それを見た門番の2人は一瞬顔をしかめ、次に笑をこらえた。


「…………(ぐぬぬ、笑ってる)」


(絶対、こんな最弱レベルの子が強者(つわもの)しかいない、王都ギルドでクエストを受けるのか? とでもいいたいのだろう……な)


「……フッ、ギ、ギルドカードをお返しいたします」

「フフッ、ありがとうございました。本日――」


 最後に王都を訪れた理由を聞かれて「観光」だと答えると"やはり"とでもいいたいのだろう。笑顔で「どうぞ、王都の地図です。よい王都観光を楽しんでください」と、地図を貰い、難なく入国した。

 


 ――おお!!! ファンタジー!!

 

 確か小説の説明で……アルクス王都は300年前魔王を倒した勇者アークが、この国の姫との結婚を機に国王に即位して、ロマネスクからアルクス国に変わったと記されていた。


 その時代からズッと、この国は勇者の末裔がおさめる国となった。


(ホンモノの王都!!)

 

 私はウキウキしながら、みんなに見えるように門番に貰った地図を広げた。


 ここアルクスの王都はなだらかな傾斜をみせていて、中央には鎧を身につけ、剣を空に向けて掲げる銅像も見える。その中央に建つ、銅像を見た頭の上のもこ鳥サタ様は懐かしそうに。


〈あの銅像は勇者アークだ〉

〈あの方が勇者アークですか〉


〈あれが、勇者アーク〉


 外で話すと私が周りの人達に変な人に見えるからと、(心の声で話す)念話で会話していた。

 

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