第7話 塩おむすび
――コメを炊こう!
だが、ここで問題――コメ草からコメはどう採るのだろう?
博士、なにか知らない?
《コメ草の実の取り方は袋に実の方をいれ、振れば実から飛びでて殻と分かれます》
へぇ、お米とは違い。もみすり、精米とかいらなくて、振るだけでいいなんて簡単だ。
ありがとう、博士。
「ママ、使ってもいい袋ない?」
「袋? わかった、コメ草の実を採るのね。待っていて、いま持ってくるわ」
「ありがとう」
ママが持ってきた袋に、コメ草の実の方をひと束入れて振った。ザラザラと袋の中に殻から飛びでてくる。
「ママ、袋の中にコメがとれて面白い」
「ほんと、楽しいわね。鬼人の人もコメを採りだすとき"楽しいよ!"と、言っていたのはこのことなのね」
全てのコメが取れたみたいで袋の中を覗いた。
あ、昔見ていた半透明なお米とは違い、コメ草のコメは真っ白な粒だった。
その、とれたコメをハカリで測ると全部で450gあった。
えーっと、450gということはお米だと三合ぶんかな。二合を炊くときは水が400だから、三合の水は600mlかな。
――あと、コメはお米のように研ぐの?
――お水にも浸す?
私はお米と同じ扱いでいいのか迷っていた。
「エルバは何を悩んでいるの?」
「ママ、コメを水で研いで、浸すか悩んでいるの」
「コメを研ぐ、水に浸す? そうね、今回はなにもせず炊いたらどうかしら? 炊いてみてから色々考えましょう。コメ草はママがもらってくるから」
「うん、そうする」
お米(450グラム)三合を炊く準備を始めた、コメをザルで軽く洗い、鍋に入れて水600mlいれてお母さんに渡した。
「それにしても、コメ草を炊いて食べよだなんて、エルバは面白いことを思いついたわね」
……きた、この説明が難しい。
「あのね、ママ。……ママがいないときに少しコメ草をかじったら美味しかったの。だから……食べたくて、いろいろ考えて炊くのはどうかなって」
なんとも、ベタで、ヘタな説明だ。
「コメ草をかじったの? ……エルバはパパと同じ食いしん坊さんね。今回はエルバの手の届くところに置いておいたママが悪い。――でもエルバ、知らない薬草は勝手に触らず、ママに聞いてからにして欲しいわね」
私には教えてくれる博士がいて、コメ草が食べられると知っていた――だけど、普通は知らないことだ。
コメ草が危険な薬草だったら……大変なことになっていたと、ママは言いたいんだ。
「わかった、次からはちゃんとママに聞く」
「いい子ね、エルバ」
優しい瞳、優しい手で撫でてくれた。
コンロにママが魔法で火をつけて、コメが入った鍋をかけた。
しばらくして水が沸騰したら、コンロの火を調節して弱火にする。――弱火で九分加熱して火を止め、コンロから下ろして、タオルに包んでコメを十五分蒸す。
――そろそろ、十五分かな?
「ママ、十五分たったよ」
食卓の上でママと、炊けたコメが入ったお鍋を見つめる。
「いい、エルバ、鍋の蓋を開けるわよ」
「うん」
ドキドキする――匂いはいい、後は味だ。
ママがミトンをはめた手でタオルを外し、お鍋の蓋を開けると炊き立てのお米に似た甘い香りがした。
みためは……あ、真っ白だったコメの色が半透明になっていた。
(いい香り――炊き立てのお米と同じでふっくら、ツヤツヤ、お米がたってる……これは絶対においしい!)
ゴクっと喉がなる。
「なんとも言えない、いい香りね。炊く前のコメ草の粒は真っ白だけど……炊くと半透明になって艶が出るのね。エルバ、コレはどうやって食べるの?」
「……えっ、どうやって」
はっ! コメを炊くことばかりに気を取られていて、食べ方を考えていなかった……どうする、炊き立てのご飯にあうお漬物はない、卵かけご飯は醤油がない……ここは、塩おむすびかな。
「ママ、塩おむすびを作ろう!」
「塩おむすび?」
「私が先にやってみるからママは見ててね。――まず、ボールに水を汲み両手を濡らして、手のひらに塩を少し多めにまぶして……こうやって、手のひらをコメを乗せた手を三角にして、よっ、ほっ、こう握るの」
「エルバは器用ね、ママもやってみるわ」
二人で炊いた、コメを全部握った。
お皿の上でキラキラ輝く、十個の塩おむすび。
ママと手をあわせて。
「「いただきます」」
炊き立てのコメで握った塩おむすびを手に取り、一口かじった。
「う……んんっ! 味もみためもお米……甘くて、ホクホク……この、塩おにぎり、おいしい! 何個でも食べれる」
「ほんと美味しいわ……初めて食べる味ね」
エルバの畑でコメ草を一ページ分に増やせば。
いつでも炊き立てが食べられる、あ~幸せ!
《コメ草について内容が更新されました》
内容の更新?
博士、それは何?
《コメ草の実は腹持ちがよく、美白効果あり》
腹持ちが良いのはいいとして、美白効果?
そういえばお米で作られた化粧水とか乳液、クリーム、パックなどがドラッグストアで売っていて、前世の私も愛用していた。
――コメ草にも同じ効果があるんだ。
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