第8話 雑炊
夕方。仕事から帰ってきたパパにも、塩おむすびを出したのだけど、水分が飛びおむすびは固くなっていた。
コメはお米と違い、水分が意外に早く抜けてしまうようで、炊いたすぐに食べないとダメみたい。前世のよつにラップ、密封容器があればいいのだけど。
――もうすこし、水を多く入れて炊くといいかな?
コメを炊く実験はアイテムボックに入ってる、メスティンを使って。"エルバの畑"で採れたコメ草でやってみよう。
ママはテーブルの塩おむすびをみて。
「残念だわ、炊いたすぐは柔らかくて美味しかったのに」
「そうなのか、残念だな」
うーん。どうにかしてパパにも美味しいコメを食べてもらいたい。ああ、そうだ! キャンプで固くなったコンビニのおにぎりをクッカーにだしと一緒に入れて、お茶漬けにして食べることが流行っていなかった。
――それを応用すればいいのでは?
「パパ、少し待っていて。ママは手伝って」
ママにコンロに火をつけてもらい、お鍋に乾燥ピコキノコと塩少々、水を入れて煮込み。固くなったおむすびを潰しながら全部入れ暫く煮込んだ。
コメがピコキノコのダシを吸い柔らかくなったら、ニワトリに似たコロ鳥の卵をとき回し入れる。
――いい香り。
「ママ、味どう?」
「ピコキノコのダシがきいていて、おいしいわ」
このピコキノコは高級品だけど、見た目と味は椎茸に似ている。椎茸好きの私はピコキノコがほしくて、畑に植えようとしたが――キノコは菌類なので、植物特化型の博士に"無理だと"言われた。
卵が程よく固まり"雑炊"のできあがり。
おむすびにあうかもと。作っておいた細切りダイダイコンの塩揉みもお皿にだした。
「パパ、出来たよ。熱いうちに食べてみて!」
出来立ての"雑炊"を、食卓の真ん中にドーンと置いた。
パパとママ、私はおたまで雑炊をお茶碗によそい、一口食べて口をニンマリさせ。
「おいしい!」
「うまい!」
「おいしいわ」
言葉がかぶる。
(この雑炊……ピコキノコのダシがきいていてうまい。これなら、いくらでも食べれる)
ダイダイコンの塩揉みも、いい塩梅。
「エルバ、ピコキノコのダシがコメとコロ鳥の卵に染みてうまい。サラサラと何杯でも食べられる」
「ほんと、炊きたての塩おむすびも美味しかったけど。これも、おいしいわ」
パパとママは雑炊が気にいったみたい。
このピコキノコの絶品ダシにうどんを打って、入れても美味しいだろう。
❀
この日、ママにキッチンの使用許可をもらい。エルブ原っぱで新しく見つけた木と実を使い、実験していた。
その私の足元をクネクネ、スリスリする黒いもふもふがいる。
「……ちょっとアール君! 尻尾を絡ませて邪魔をしないで、あやまって踏んじゃうって」
「エルバ様、これは邪魔をしているのではありません。危険な実験をするエルバ様を止めているんです」
自分を"監視役"だと言い。私がする事に目を光らせて色々注意してくる……もふもふ黒猫さんである。
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