第141話
サタ様とアール君と一緒に、キバナの精霊キキさんに解毒薬を渡して、学園の事を聞いた。
〈あの子、やりたい放題しているわ。2人とも魅了魔法は平気なのだけど……魔法が効くと思っている中、グイグイくるらしくて精神的に参っちゃってね〉
「うわっ、エグいね」
2人がいまどこにいるのか聞くと、学園にいたくないらしく、単位取りの冒険に出ているらしい。
「冒険? うむ、そうか――エルバ、2人を夏季休暇の間、領地に呼ぶか?」
「2人が領地に来るって言ったらね。そうだ、キキも来る?」
博士にタネをもらって、領地のど真ん中にキバナの木を植えれば精霊のキキも移動できるだろう。呼んでもらったキキは嬉しそうに笑い。
〈行きたい、連れて行って〉
――よし、キタァ!
彼らが2日後に戻ったら、話をするとキキさんが言ったので。私達は一旦原っぱに戻り、キキさんからの連絡を待つことにした。
「エルバ様、お腹空きましたね」
「うん、お腹すいた。王都で少し買い物してから原っぱに戻ろう!」
「よいな。ワタシは甘辛い鳥肉を挟んだ、パンが食べたい」
「いいですね、ボクも食べたいです!」
甘辛いお肉? 照り焼きチキンのことかな? だったら、いまから王都のパン屋とお肉屋に寄って。コロ鳥ともち鳥を買って照り焼きチキンを作って、キャベンツの千切りと一緒に挟んで食べよう!
「サタ様、アール君! 早く、パン屋とお肉屋に行こう!」
「ああ、行こう」
「行きましょう」
キキさんにまたねと、みんなで目的の店に寄って、いつもの原っぱに戻ろうとした。そこに、体にピッタリな黒いドレスを着た、大人な女性が近寄って来る。
どうやら、その女性に姿を消しているサタ様とアール君が見えているらしく――サタ様を見てキレイな瞳を大きく開いた。
「え? うそ、サタナス様……だ」
そして、そのキレイな瞳に涙を浮かべた。
王都の商店街でここは買い物客が多いから、原っぱに移動した。私は「料理を始めるね」と、3人の話を聞きながら、アイテムボックスを開き昼食の準備をはじめた。
「そうか、リリスが……あの子に召喚されたのだな」
「……そうよ。呼ばれた日、魔王城の仲魔とジャンケンして勝って召喚されたけど……全然、楽しくないから召喚印消して逃げてきたわ」
へへっと、涙を拭きながら笑った。
その姿に頷き。
「そうか、楽しくないのは退屈で嫌だな。ワタシは今楽しいぞ!」
「ボクもアールという名前をもらって、楽しくやっています」
「いいなぁ、うらやましい! で、この子は誰なの?」
フライパンでコロ鳥を焼く、私をキッと睨んだ。
「リリス、睨むな! エルバはワタシの主人で、仲間だ」
「エルバ様はボクの主人です」
「ハァ、この子供が? サタナス様とアールの主人なの? 信じられない!」
彼女の驚きの声を聞きながら、余分な油を取り除き、照り焼きチキンのタレを作り回し入れた。ジュージューとフライパンの中でタレが煮詰まる、いい匂い……
その香りに釣られたのか彼女の視線は私から外れ、フライパンの中の鶏肉を凝視して、ゴクッと喉を鳴らした。
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