第140話

「ヤツはショボイが黒魔術を使うから……人里は大事になっているかと思えば……何だ、これは?」

 

「よく分かりませんね……これが聖女?」


 聖女とは――神聖な女性。 多く宗教的な事柄に生涯をささげた女性をさすと、昔調べたスマホに書いてあった。私が知っている物語の聖女だと瘴気を払ったり、結界を張ったり、ヒール(回復魔法)を使いどんな大怪我をも治していた。


 アマリアさんは黒魔術を使っていたし。

 キバナの木に毒を撒いていた……今回は悪魔召喚をした。もしかすると黒いことばかりして、神様の逆鱗に触れて聖女の力を失ったんじゃ? だからってアイドルは――ないと思う。


「おい! この笑顔、不気味だ」

「この人……笑っているようで、目がちっとも笑っていません」

 

 姿を消したままのサタ様とアール君は空を飛び、垂れ幕を間近くで見て引いていた。

 

「エルバも見てみろよ」

「こっから見てるから……いい」


 上手く言えないけど、アマリアさんは考え方が分かりやすくて――苦手だ。

 

 



 ❀


 



「あたしのために、がんばりなさい」


 縫い物、刺繍の得意な令嬢達には法被を作らせ、手先の器用な男性にはウチワというものを作らせている。魅了魔法をこんな事に使い、周りにチヤホヤされて、ウキウキするアマリアをみて――悪魔のリリスは呆れていた。


(歴代の、悪女の様に魅了魔法を使用して戦争でも起こし、己の聖女の力を示して更に上にいく。のかと思ったが――やる事全てみみっちい、つまらない。あなた、こんな事がしたかったの? こんな事のためにリリスを呼んだの? バッカみたい!)


「ウフフ、あたしはみんなに注目される聖女なの! ジャンジャン、あたしのグッズを作りなさい!」


「「はい!」」

 

(アホらし……希少な、魅了魔法をこんな事をするために使うなんて……こんな、浅はかな魅了魔法に引っかかる人間も愚かだ)


 召喚された悪魔リリスは、アマリアが何をするのか気になり一部始終を見ていたが……余りにもつまらなくて、ビックリしている。


(コイツの頭の中はどうなっているの? まあ、令嬢達がする刺繍は素晴らしい出来だが、あんなダサいもの着せられて喜んで……アマリアを聖女だと呼ぶの? 奇跡の一つも起こしていない、アマリアをどうして崇めれるの?)


 悪魔は魅了にかからないし、力でゴリ押しするから使わない。


「アマリア、散歩に行ってくる」

「はーい、いってらっしゃい!」


(もう対価もいらないし、アイツの召喚印も消してバックれちゃおう)


 



 エルバの考えは当たっていた。

 アマリアは度重なる悪の行動により、学園に入ったすぐ聖女の資格を失っていた。今ではちっぽけな魅了魔法しか使えない。


(これで終わるわけがない! 最後の賭けで悪魔召喚してリリスがきたの)


 その召喚により、彼女の魔力はほとんど枯渇している。聖女として結界も張れず、キズを治すこともできない――ただの女性。それが彼女にとって苦痛だった。


(魅了魔法って思ったほど使えない。よし、こうなったらみんなにローザンが魔王だって教えて、手っ取り早く株をあげる? ダメダメ、推しのローザンに嫌われるのは避けたい)

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