第149話

 魔女に会いに行く前、ヌルスケ君から頼みごとをされた。彼の頼みごととは。その魔女が栽培する"甘いナッシシをもらってきてぬら"と言ったのだ。


 ――ナッシシって、梨じゃない?


 梨は私も好き。さわやかな甘みと、みずみずしくてシャリシャリ食感がたまらない。梨のコンポート、梨のケーキ、梨のシュワシュワ。


 いいなぁ。


 私はウキウキしながら、ヌルスケ君が言っていた洞窟を探したが、いくらの探しても彼が言っていた西側の洞窟は見つからない。そんな私達の前に大きな穴が空いた巨木が現れた。私の頭に乗っていた、サタ様はその巨木の周りを飛び頷いた。


「ヌルスケは洞窟と言っていたが。この巨木から魔法を感じる。魔女の家はこの木の穴だな……うむ。エルバ、ここに入らない方がいい。すぐ、ママさんをここに呼んでくれ」


「え? ママを呼ぶの?」


「ああ呼んでくれ。ここに住む魔女はすでに事切れている。ここに住んでいた者がヌルスケが言っていた魔女ならば……魔女が残した「魔女の遺産」を守らなくてはならない」


「そうですね」


 サタ様の言葉にアール君頷く。事切れているということは、魔女はすでにこの世にいないという事かな。私はフクロウを呼び、簡単な地図を描き、この場所に来て欲しいとママに手紙で伝えた。


 数分後に戻ったママからの手紙には。少し準備するものがあるから"明日の早朝に向こう"と書いてあった。


「ママは準備して、明日の早朝に来るって。今日はこの辺でテントを張ってご飯にする?」


「そうだな。ワタシはお好み焼きが食べたい!」

「お好み焼きいいですね」


 彼ら2人は領地で食べて以来……お好み焼きばっかり、要求されているような気がする。材料もあるし、私も好きで焼くのは自分でやってくれるから、だからいいんだけど。


 彼らが焼く、お好み焼きは面白い。


「サタ様とアール君はお好み焼き何枚食べる?」


「ワタシは肉玉2枚と、ウメメのおにぎり」

「ボクも、それでお願いします」


「じゃ作るから、鉄板がおけるくらいのカマドの準備お願いね」


「まかせろ! アール、カマドになりそうな石を集めるぞ」

「はい!」


 私はドワーフの鋳造屋で、お酒飲み放題券と物々交換で作ってもらった。お好み焼きが2枚一度に焼ける鉄板と、調理器具をアイテムボックスから取り出した。


 次にエルバの畑を開き。お好み焼きに使うキャベンツ、ショウガロンとコメ草を収穫して、袋にコメをとり。テーブルの上にポケットストーブを開き、3合炊きメスティンでほったらかし炊飯をセット。


 その横でキャベンツのみじん切りと粗みじん切り、ショウガロンのみじん切りを作りボールに移して、卵、ピコキノコから取ったダシ、魔法水、コロ鳥の卵、小麦粉を入れてザックリ混ぜた。


(生地に空気が入るように手短にサクッと混ぜると、フワフワなお好み焼きになるのよね)


 お肉は物々交換して持ってきた、フダに似た魔物ブーサン肉の薄切り。サタ様とアール君のお気に入りのお肉だ。


「お好み焼きの生地ができたわ! さあ焼くわよ」

「こっちも準備が終わった」

「終わりました。さあ、焼きましょう」


 作ってもらったカマドで鉄板を加熱して、サタ様とアール君の記事を流す。2人はマイヘラを持ち、お好み焼きをひっくり返すじゅんびをする。


「ワタシは肉多めがよい!」

「ボクもサタ様と同じ、肉は多ければ多いほどいいです!」


 生地の横の空いたスペースに、ドンと山盛りのブーサンのお肉を乗せて焼き。最後、真ん中にコロ鳥の卵を落とし塩コショウを振る。毎回思うけど……それ肉玉じゃなくてお好み焼きと大盛り焼肉だよ。まあ2人が嬉しそうだから言わないけど。


「コメが炊けたから、ウメメのおにぎり握るね」


「頼む!」

「お願いします!」


 ウメメ干しを細かく切ってコメに混ぜて握る。2人の好きなおにぎりだ。彼らはお好み焼きに「これが美味い」と手作りのソースと、マヨネーズをたっぷりかけている。


 普通なら、ふっくらになると言いたいが。

 サタ様とアール君の体型は変わっていない。


 むしろ少し太った私とは違い……痩せているのだ!

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