第58話

 アール君は体を大きくして私を口でキャッチして、背中に乗せた。サタ様に急に飛ばされた私はパニックで、心臓はバクバク。だけど、モコ鳥のサタ様が人型に戻るほど、あの花は危険なものなんだ。


「心配はいらない。カラス達もワタシの側に来るではない!」


『サタナスサマ、タスケル』『シンパイ』と、寄ってくるカラス達を止めていた。


 


 その後、ジッとその青い花を見つめ、眉をひそめている。その姿が……月明かりの下、時折り吹く風に長い黒髪が揺れ、謎の青い花を見るサタ様が幻想的に見えた。


 アール君の背中の上で、キレイな人はどこでもキレイだなぁっと……そう思っていた。


 


 しばらく険しい表情で青花を見ていた『そうであったか』とサタ様は頷き、こちらを向いた。


「エルバ、アール、この花の生態がわかった。この花は魔物だけを酔わし、近寄った魔物に茎を絡ませ毒を埋め込む。魔物にとっては危険な誘い草の一種だ」

 

「魔物には危険? 魔物を捕らえる毒花?」

「魔物を誘い、捕獲する花ですか……危険ですね」


 近寄らなければいいと分かり、馬ぐらいの大きさになった、アール君に降ろされた。


「ありがとう、アール君」

「いいえ」

 

 

 この時、博士が。

 

〈その薬草の生態が判明いたしました。誘い草の一種。人工的に魔法でつくられた魔物専用 捕獲毒花ですので、食用ではありません〉


〈効能不明。補正、人里には生えない毒花です〉


 と、説明した。


 誰かの手によって人工的に作られた毒花。

 

 この花は魔物を捕まえるため、意図的につくられた、人里には生えない毒花。

 

「アール、エルバ、ワタシの【鑑定スキル】で作った者がわかった。名前はローザン、性別は男、新魔王だな」

 


「「新魔王様⁉︎」」

 


 サタ様が魔王を辞任した後、魔王になった新魔王ローザン。彼は王都の学園に通っている魔王様がなぜ? こんなところに魔物を捕らえる花を植えたのだろう――謎だ。


「多分だが、エルバが食べても体に害はないだろうが……絶対ではない、食べるなよ。それに、あの毒花に触れるとローザン本人に伝わる」


 毒花に魔物が掛かったとローザンに伝わり、本人がくるのか。長い黒髪のサタ様とは違い、魔王ローザンはミディアムの長さの黒髪と、優しげな赤い瞳の魔王様だと、小説の説明に書かれていた。


 新魔王の毒花だけど、自分で新しい薬草がつくれるスキルは凄い。


 スキル名【薬草生成】とか?


〈薬草生成スキルはエルバ様、本人のレベルが足りておりませんので、このスキルは使えません〉


 え、私のレベルが足らない?

 レベルが上がれば、私にもこのスキル使えるの?

 

 ウハ、神様色々つけ過ぎたよ……でも自分のレベルが足りないって、どうあげるのかな?


 博士で植物を見つけても、自分のレベルは上がったことがない。だとすると魔物との戦闘であげるのかな?


 うわぁ、戦闘はしてみたい。


「エルバ、楽しそうなところ悪いが。明日は早朝、王都に向かう予定だ、寝るぞ」


「はーい」


 使用した荷物をアイテムボックスに片付け。

 今回はジャグジー付き露天風呂とサタ様、アール君特製ベットと私のベッド、カラス君達のベッド、トイレを、テントの前で想像した。


 

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