第57話

 王都近くの原っぱに降りたつ。原っぱの開けたところにテントを張り、夕飯にしようと話していた。サタ様はカラスたちを休め、自分は近くの森に魔物を狩りにでて行った。


「サタ様って、狩り好きだね」

 

「好きというか、サタ様は優しいのです。僕たちに新鮮な肉を食べさせたいのですよ」


 ――新鮮な肉?


「サタ様、優しすぎ」


 疲れているのに……疲労回復するウメメのおにぎりを握った。

 エダマメマメ、トーモロコシは茹でてあるので、今日は焚き火はやてめて。

 ポケットストーブでコロ鳥の卵と、エダマメマメのスープを作っていた。 


(スープの味もよし、後はサタ様が戻れば)


 パタパタ羽音がして夜空を見上げた。

 モコ鳥のサタ様が羽を広げ戻ってきたのだけど、何故か落ち込んでいる様に見えた。


「おかえりなさい」

「お疲れ様です、サタ様」


「うむ、エルバ、アール……すまない。魔物が獲れなかったというより、この辺の森の入り口にはすべて、冒険者しか入れないよう規制魔法が施されていた」


「冒険者? 規制魔法?」


「そうでしたか……最初の村はかなり王都から離れていたので、規制魔法が施されていなかったのですね。ここは王都の近くですから仕方がありません」


(規制魔法……魔物が森から出ない様になっているのかな?)


「僕に考えがあります。ヌヌを助けた後、どこかの冒険者ギルドで冒険者になられてはどうですか? サタ様は狩り、エルバ様は採取。僕はどちらも楽しめます」


「おお、その手があったな……しかし、ワタシは冒険者になれるのか?」


 首を傾げるサタ様に、アール君は。


「サタ様はお忘れですか? 昔の様に人に化けて、力を隠せばいいのですよ」


「ん? おお、そうてあったな……毎日が楽しくて忘れていた。ハハハッ、ヌヌを助けたら、みんなで冒険者になろう」


「冒険者、いいですね。なりたいです!」

 

 そうと決まり、夕飯を食べて英気を養い。ゆっくり休んで、明日になったらヌヌを助けだす。カラス達もそうだと鳴きだした。


「そうだ、サタ様。カラス達は何を食べるんですか? エダマメマメ、トーモロコシとか?」


 サタ様は違うと、首を振った。


「カラス達の飯は魔力だ。今はワタシ達の魔力をたらふく食べて腹が膨れている。ワタシ達の夕飯が終わってから水浴びをさせよう」


「水浴び? お風呂でもいいですか?」

 

「お風呂? そうか風呂があったな。夕飯が終わったら皆で入ろるかな」


 原っぱ近くの木に止まるカラス達にそう伝えると『ハイル』『ハイル』と翼を広げ喜んだ。



 カラスのお風呂は夕飯の後で準備するとして、いまは私たちの夕飯。アウトドアチェアーを取り出して、テーブルにウメメのおにぎり、スープ、エダマメマメ、トーモロコシ、ウメメのシュワシュワを並べた。



「「いただきまーす!!」」

 


 お腹すいていた私達はアッという間に、作った料理を全てたいらげていく。


「ウメメのおにぎり最高です」

「ウメメは美味いな」


 食事の途中、私達の体が光り。

 

〈疲労回復(大)タンパク質、腸内環境を整えました〉


 と、博士が伝えた。



 

 ウメメのシュワシュワを飲み終えた、サタ様とアール君はまだ足らなかったみたいで。


「エルバもう少し食べたい、他に何かないか?」

「エルバ様、僕は先ほどのブブベリーのパンと、クッキーが食べたいです」


 と言ったので、ママに貰ったパンとクッキーをマジックバッグから取り渡した。この時、原っぱにサァッと頬をなでる風が吹き……甘い香りをとどけた。


 ――甘い香り?


 その香りが、どこから香るのかと探すと。

 すぐ側の草むらで初めてみる青い花が一輪、風に揺れていた。この香りはあの花からするのか……凄く気になる。


 私はパン、クッキーを食べるみんなから離れて、その草花に近付き博士に聞いた。


 博士、あの草花は何?


〈…………すみません、エルバ様。この薬草、草花は詳細不明……ので、効能も不明です〉

 

 ――え、博士が名前、効能を知らない薬草、草花?


 その花が無性に気になり、私は青い花の草に近付き手を伸ばそうとした。

 


「「触るなぁ!! エルバ、その花には触れてはならぬぅ!!」」

 


 アール君とパンを食べていた、サタ様がいつのまにか私の後ろにいて、首根っこを掴みアール君の方へと投げ飛ばした。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る