第56話
私達は魔法都市サングリアから旅立ち、暗闇の中を王都に向けて進む。
サタ様が操る大カラスの移動スピードは、私のホウキよりも数段速く。快適な乗り心地で、はじめ私とアール君はもの珍しくて下を見たり、お行儀よく乗っていたのだけと……段々と小腹がすいてきた。
グゥウウウッ……。
「お腹すいたね、アール君コメを炊こう」
「はい、エルバ様。コメを炊きましょう!」
エルバの畑からコメを採取して、袋にコメをとり出した。次にマジックバッグから取り出したメスティンに、2合のコメと魔法水を入れた。
次にテーブルとポケットストーブを取り出して火の魔石を中央に置き、アール君に火をつけてもらい、メスティンを置いてほったらかし炊飯の開始。
コメが炊き上がったら、ウメメおにぎりにする予定。
使うのは鬼人産の美味しいウメメ干しではなく、私が試行錯誤を繰り返して漬けた物を使う。
なんというか……漬けた割にあまり酸っぱくない、ウメメ干しが完成したのだ。
だけど、このウメメ干しはサタ様とアール君の大好物らしくて、一度冷やし庫に入れておいたウメメを彼らに全部食べられた。
いま腹ペコな、彼らにみつかると全部食べられるかもと、見つからないようにしている。
「コメはこのままでよし。アール君、サタ様、何味のシュワシュワにする?」
「ワタシはウメメがいい」
「僕もウメメがいいです。鬼人産のではなく、エルバ様が漬けたウメメでよろしくお願いします」
「うむ、それで頼む」
おう……持ってきているのがバレている。『わかった』と、水筒を出してシュワシュワの実と魔法水、ウメメでウメメシュワシュワを作った。
「エルモ様、他にもエダマメマメ、トーモロコシを塩茹でしましょう。あと、ブブベリーも食べたいです!」
いつにもなく食欲旺盛なアール君。
わかる、私もかなりお腹が空いている、ということは、魔力が減っているのだろう。
「エダマメマメとトーモロコシ、ブブベリー採取。そうだ、家を出る前にママに貰った、ブブベリーのパンとクッキー食べる?」
「ププベリーのパンとクッキーですか?」
「うん、ママが魔女会のメンバーと作った、試作品のパンとクッキーを袋いっぱいに貰ったの」
ドンと、袋にいっぱいのクッキーとパンを取り出した。
「食べます」
「食べる!」
サタ様もお腹が空いているみたいで、コメが炊けるまでの間、みんなでブブベリーのパンとクッキーを食べた。
コメが炊けおにぎりを作り、エダマメマメ、トーモロコシをもう一度ポケットストーブに火をつけてお鍋で塩茹でにして、ブブベリーはお皿にだした。
「サタ様、すこし休憩しない?」
と、誘ったが。
サタ様は首を横に振り。
「もうすぐ、アルクスの王都の近くに着く……到着してから食べる」
「え、もうアルクスの王都近くなの?」
サタ様の言葉に私とアール君はカラスから下を覗くと、暗闇の中に篝火(かがりび)がいくつか馬車道を照らしていた。サタ様が言う通りなら、この道の先に王都があるのだろう。
「でも魔法都市を出てから、そんなに経っていないよ」
(家を出てから三時間? ううん、二時間くらいかな?)
「フフッ、そうだな。カラス達に無理なお願いして飛ばしてもらった……だから、エルバとアールの魔力の減りが早いだろう? ふうっ、腹が減った」
「はい、僕もお腹ぺこぺこです」
「私もお腹ぺこぺこ」
みんなで『グゥウウッ』とお腹を鳴らした。
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