第55話

 私達は旅の準備を始めた。


 至急、王都に向かって魔犬ヌヌを助け出さないと。

 もし、ヌヌが元魔王サタ様の部下だと知ったら? 学園に通う新魔王ローザンは容赦なく、ヌヌを抹殺してしまうかもしれない。


「サタ様、アール、娘をよろしくたのむ」


「エルバ、神様仕様になっていない衣類、道具は全て、ママが魔法をかけます!」


「ありがとう、ママ」


 私達が持っていく服、道具に防御魔法、危険察知。

 サタ様とアール君の首に防御魔法がかかった、赤と青のリボンをつけた。

 手紙を送ってくれるフクロウ便を呼ぶ笛、一回だけ転移魔法が使える、魔法陣が描かれた紙を貰った。


 後、ママが作った傷薬などの薬、包帯を入れた救急箱、ハンカチ、ハナカミ。


「エルバ、これは王都までの地図よ」

「ありがとう、ママ」


 食べ物はエルバの畑がある。お肉はサタ様とアール君が魔物を狩ってくれる。テントがあればどこでも泊まれる。それら、神様仕様のキャンプ道具が入るアイテムボックスと、併用して使えるマジックバッグを肩からかけた。

 

 バッグの中に改良リリンゴ、コムギン、塩コショウ、ムラサキなどの調味料、ママと作ったレンモン飴、アンズン飴の瓶、リラックス用のハッカ飴もしまった。


「準備はバッチリ! サタ様、アール君行こう、王都へ!」


 ホウキを取り出すと、サタ様に止められた。


「王都までホウキ移動だと時間がかかる。いまからワタシが行うやり方で行きたい。魔力はかなりかけるが王都まで一晩で移動できる。エルバ、いいか?」


「サタ様、僕は構いません」

 

「私もいいよ。魔力回復のシュワシュワ、飴も持ったから、遠慮なく使って」


「ありがとう。では呼ぶとしよう、ワタシの元に来い鴉ども」


 庭先でサタ様が呼んだのは複数のカラス。

 

(これはもしや、カラスブランコ? 呼んだカラス達に紐を持たせて、座って空を飛んで王都まで行くの? 私はカラスブランコに乗れると、ワクワク胸を膨らませていた)


「鴉、頼んだぞ」


 サタ様は呼び寄せたカラスに魔法をかけて、一羽の巨大カラスにした。


「さあ、エルバ、アール、これで飛んでいく乗ってくれ」


 ――あ、ブランコじゃないんだ。


「エルバ様、お気をつけてお乗りください」

 

「うん、ありがとうアール君」


 カラス達の少し硬い、もふもふ毛の背中に乗った。


「2人とも乗ったな。ワタシは王都に着くまで先頭から動かず、ここで鴉達に命令をだす。自分の魔力が減ればエルバとアールから魔力をもらい続ける。2人は気分が悪くなったり、魔力が枯渇しそうな時はワタシに遠慮せず食事、睡眠をとってくれ」


「わかりました」

「サタ様、かしこまりました」


「エルバ、ママさんから貰った王都までの地図をくれ」

 

「はい。パパ、ママ行ってきます!!」


「エルバ、サタナス様、アール無理をするなよ!」

 

「気を付けて行ってらっしゃい。危ない事には首を突っ込まないで、逃げることも大丈夫!」


「わかってる!」


 私達はパパとママに見送られて、アルクスの王都に向けて飛び上がった。


 

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