第117話

 さすが鬼人さんのお店だ。どの料理も美味しそうで、お店も繁盛していた。サタ様とアール君は店に食い付き、ギルドの報酬でもらった、自分のお金で買っている。


 私も彼らの隣立って和紙のお皿に乗ったピザと、陶器のお皿に盛られたグラタンを選んだ。この陶器のグラタンの皿は食べたあとでも使えそうなので、人数分を買うことにした。


「いらっしゃいませ、エルバ様」


 店の店員さんは辺りには聞こえない小声で、私に挨拶をした。となると、この店員さんは魔法都市サングリアの鬼人さん。彼らの特徴となる頭の角を、彼らが使用する術で隠しているのか。


「どれも美味しそうですね」

「ありがとうございます。最近出来た、手作りチーズを乗せたピザがおすすめです」


 そうなのだ……私がすこし前、魔法都市近くの開拓地で作ったピザは進化して、見た目も鮮やかなピザになっていた。


 ――うわぁ私が作ったピザより、断然こっちの方がおいしそう! 


「エルバ様、ピザも人気ですが。ケチャップ、チーズ、野菜を乗せて焼いたトーストも人気です」


 と、焼きたてのパンを紹介してくれた。

 

 チーズの香ばしい香り……この店の中にカマドがあるのか。焼きたてのピザのほかに、焼きたてのパンも売っている。ケチャップ、チーズ、野菜を乗せてトースト……どう見ても。

 

「……ピザパン⁉︎」

 

「ピザパン? ……おお、とても良い名前ですね。村に帰ってみんなに伝えます」


 店員さんはメモを取り出し、書いている。

 また――私の名前が付けられたりして! 私のカンは当たっていた。後日、エルバのピザパンと名付けられていた。



「ありがとうございました」


 焼きたてのパンの香りに負けて、サタ様とアール君とで食べたいパンを選び、お店を後にして元の場所に戻る。王都の店もそうだったけど……コロッケパン、唐揚げパン、あんぱん――料理の進化が止まらないなぁ。


 でも、魔法都市に住む人達が楽し見ながら、開発しているのがわかる。王都の店もだけど……私が料理を伝えたときよりと、更においしくなってるんだもの。


(そうだ、都市に戻ったらママに相談して、たこ焼きを焼く鉄板を作ってもらおう。鍋などを作る、ドワーフの方なら作れるかも)


 味は……醤油たこ焼き、ソースたこ焼きかなぁ。出汁につける、つけたこ焼きも捨てがたいけど。ソース、出汁とかはまだない。料理博士に聞いて作るのもありだけど、やはり、ここは醤油たこ焼きからかな?


 元の場所に戻るとパワー様と、ソーロさんが旅支度を終えて待っていた。


「パワー、ソーロ!」

「パワー様、ソーロ、お待たせしました」

「お待たせしました」

 

「いや、今来たところだ」

「ボクもそうです。では行きますか」


 ソーロ君の案内で、コーサックの森に向けて出発した。

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