第43話

 しばらくしてお風呂からあがってきた、もこ鳥、アール君……


 なぜ、君達はベタベタのままベッドで寝ようとしといるのかな?


「ま、待って、2人とも体を拭こうよ!」

「なぬ? ダメなのか?」

「はっ、サタ様に感化されていました……」


 アール君もはじめてシャワーを浴びたとき、そうだった事を思い出した。

 仕方がないなぁ――とタオルを持つと、拭いてくれと言わんばかりに足元にやってくる。


(もう、2人にタオルを渡したのに……フフ)


「サタ様、アール君、体を拭くよ。並んでぇ」


 タオルを広げてゴシゴシ、ゴシゴシ、アール君とサタ様の体を拭いていく。

 2人とも騒がす拭かせてくれて、もこもこ、ふわふわ、モフモフに戻る。


 ――モフモフ、モコモコ可愛い。



「これでよし!」


 体を拭き終わると、彼らはつぶらな瞳を向けて。


「エルバ、喉が渇いた。シュワシュワが飲みたい」

「僕も乾きました、シュワシュワ飲みたいです」


 とうったえる。


「分かった、今から作るね」


 さっき作ったレンモンのシュワシュワは、みんなで全部飲んでしまったから。

 そうだ、さっきアール君と採ったブラックベリリーのシュワシュワを作ろう。


 マジックバッグから取り出した、水筒にシュワの実を入れてシュワシュワを作り、サタ様に氷を出してもらった。コップにブラックべリリーの実と果汁を絞り、最後にシュワシュワをそそげば。

 

「ブラックベリリーのシュワシュワ完成!」

 

 ブラックベリリーの果汁で赤紫色に染まったシュワシュワ。

 コップになかで"プカプカ"おどるブラックベリリーの果実と氷。

 サタ様とアール君はひと口飲んで、瞳をかがやかせた。


「これは、甘酸っぱいシュワシュワだ」

「甘苺のジャム、レンモンとはまた違う味わい」


「おいしい、酸味とほどい甘さ――最高!」



《ダイエットの効果あり(小)補足――シュワシュワ飲み過ぎに注意。一度にたくさん飲みますとお通じが良くなりすぎます――適度に取りましょう》



 ダイエットの効果はいいけど――あちゃ、シュワシュワの飲み過ぎか。


 博士、教えてくれてありがとう。これ以上、シュワシュワを飲みすぎると……効果以外にお腹が痛くなると注意をうけた。


 美味しすぎて飲みすぎるのはよくない。だとしたら、シュワシュワでの疲労回復は適度にして、他の飲み物を考えなくっちゃ。あと、レンモンのはちみつ漬け、レンモン入りの飴、レンモンのクッキーなど携帯できる食品で回復してもいいかな。

 

 それとも丸かじりする?


 甘い実ならありだけど、舌がパチパチするシュワの実と、酸っぱいレンモンをかじるのは無理かも……魔法都市に戻ったらママに相談しようっと。


 シュワシュワを飲みほして、ベッドに転がるアール君とサタ様。

 私は近くで使用したコップと水筒を洗い物入れ箱に入れ、マジックバッグにしまっていた。

 

 彼らが寛ぐベッドから『クークー』『グーグー』寝てしまったのか、寝息が聞こえてきた――ふわぁっ、私も寝よっと。彼らを起こさないようにベッドに転がった。

 

 近くにもこもこ、ふわふわなサタ様とアール君の寝姿……すごく可愛い、眼福、眼福だわ。スマホ、ここにスマホがあったら、写真を絶対撮ったのに!

 

 彼らをしばらく眺めてから、目を瞑った。




 ❀




 翌朝――フクロウ便はママからの手紙を届けた。

 その内容はパパ達の毒は消えて元気になったと、帰るのなら、気をつけて帰ってきなさいと書いてあった。


「サタ様、アール君、パパ達の毒が消えて元気になったって!」


 ふかふかベッドで、まったり寛ぐ2人に伝えた。


 それなら早く都市に戻ろう、となり、テントの外でポケットストーブを使い、メスティンでコメを炊き、枝豆スープを作って朝食を軽く終え、片付けを済ませて。


「よし、魔法都市サングリアに帰ろう!」

「はい、帰りましょう」

「うむ。早く、タスク達に会いたい」


 姿消しのローブを羽織り、姿消しの魔法を使ったアール君とサタ様を両肩に乗せ、私達はホウキで魔法都市サングリアに帰ったのだった。

 


 


 私達が人里を飛び去ったあと、シュノーク古城で悲痛な声があがった。

 使用人たちはなにかと離れの塔の最上階に向かうと、アマリアが床にくずれ、訳のわからないことを叫び、床をたたきながら大粒の涙を流していた。


「うわぁ~ん。あたしのサタ様が消えたぁ~、お父様に必死に頼んでサタ様がいるシュノーク古城を買ってもらったのに……」


 今は、まだ簡単な魔法しか使えないから探せない。

 あたしの聖女の力が発動するのは、王都にある学園に入ってからだし。


 アマリアはもうすぐ始まる学園に、サタナスを側近として連れて行こうと思っていたのだ。


 どうして彼女がそう思ったのか……

 彼女の思考はゆがみに歪んでいた。


「キャンプ場の帰りに死んだお姉ちゃん。絶対にお姉ちゃんもこの世界にいるはず。お姉ちゃんはサタナスが推しキャラのはずだから、悔しがらせる為に奪おうと思ったのに……お前はあたしがとことん、邪魔をして絶対幸せにさせない」


 前世――姉から、両親、初恋の人、友達すべてを奪っても気が収まらなかった妹。自分もそのあと事故で転生して、ここが小説の世界だと、ヒロインだと気付き彼女はこう思った。

 

 ――絶対、お姉ちゃんもこの世界のどこかにいるはず。

 

 私がヒロインだとすると、お姉ちゃんは私と敵対するキャラ――悪役令嬢だ。クソッ、私よりもお姉ちゃんが美人なんて嫌だ。


 前世だって――サラリとした手足、きれいな黒髪、眼鏡をとれば美人という漫画のような容姿だったお姉ちゃん。

 あんたは気付いていなかった! あたしの初恋の人、次の人、その次も、自分が好きになった人はみんなお姉ちゃんが好きだった――あたしはお姉ちゃんを恨んだ。


 前世、全て奪ったんだ。

 今世でも、お前から全部奪ってやる!


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る