第44話 魔法都市サングリアに帰還

 コムギン畑を通り越し、ローリスの森を越えて、シシリア大森林が見えてきた……もうすぐ、もうすぐ家に帰れると思うだけで、魔力のバランスが崩れて乗っているホウキがかたむく。


 そのたび肩の上で2人は騒ぐ。


「エルバ」

「エルバ様!」


「ご、ごめん……もうすぐ魔法都市サングリアだと思うだけで、気持ちがはやっちゃう!」


 言葉にあらわすと『グリン、グリン』ホウキが低空飛行したり、高空している。みんなは必死に私にしがみ付いて、あふれる魔力をおさえてくれている。


 ――もう一度『ごめんね』と2人に謝ろうとしたとき。


「フフ、ハハハッ――! エルバのその気持ちわかるぞ。ワタシも久しぶりに友に会えると思うだけで……喜びで気分が舞い上がる」


 今度はサタ様のよろこびの魔力が溢れ、ホウキがクルクル回りながら高空した。『ウヒョオ――!』と叫びにならない叫びをあげながら、私とアール君は落とされないようホウキにしがみついた。


「お、おお――! サタ様……わ、わわぁー! 魔力だしすぎでホウキが操れない……このままだと落下するよ!」


「エルバ様、大丈夫です。僕が受け止めて操作いたしおります」


「そうなの? ……ア、アール君たすかる」


 その後も『グルングルン』『グリングリン』……とりあえず今言えるのは、家についてた私達はバテバテで、明日は魔力不足と筋肉痛かも。


 


 ❀


 


 サタ様、アール君、私の3人はヒッチャカメッチャカ、魔法都市サングリアの家を目指している。ようやくシシリア大森林を抜けて、しばらく飛ぶと魔法都市の城壁が見えてきた。


 城壁を超えるとすぐに私の家が見えてくる。

 私達は無事に帰ってこれた……今朝、原っぱを出る前に、フクロウ便をパパとママに『今から帰るよ』と飛ばしておいた。


「エルバ様、帰ってきましたね。サタ様、ここが魔法都市サングリアです」


「うん、うん、帰ってきたね……あ、庭にママとパパ達の姿がみえる」


 ホウキで上空を飛ぶ、私達を見つけたパパは空に向けて両手を振った。そのとなりにはママがいて、初めて見る男性が2人パパとママの側で手を振っていた。


「エルバ、アール、おかえり!」

「おかえりなさい!」


「おお、タクスか? ちっとも変わっていないなぁ……懐かしい。隣にいるのはエバァ、ドロシアか……おや? 魔犬ヌヌの姿がみえないな……」


 魔犬ヌヌ? エバァさんとドロシアさんも初めて聞く名前だ。アール君は魔犬ヌヌについて何か知っているのか……口をつぐむ。もしかして魔犬ヌヌは300年の間に、何かあったのか知っているのかも。


「今、ここにいないのか……まあ、アヤツのことだ何処かで、元気にやっているだろうな」


「……ええ、そうですね」

「きっと、そうだよ」


 魔力を徐々に弱め庭に降り立ち、私はアール君、サタ様が肩から降りたのを見て、一目散にパパに駆け寄り飛びついた。


「パパ、パパ……よかったぁ、体は? もう平気なの?」


「ああ、平気だ。エルバ、アール、俺たちのためにありがとう。それで、魔王サタナス様はどこにいる?」


 パパは私を抱きしめながらサタ様を探す。『タクス、ワタシはここにいる』と、小さな羽をパタパタ動かして、サタ様は私の頭の上に降り立った。


 

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